(朝鮮日報 2025/01/19)
 19日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が逮捕された。韓国で現職大統領が逮捕されたのは、憲政史上初めて

 18日午後2時、ソウル西部地裁で尹大統領に対する逮捕状審査が行われ、チャ・ウンギョン部長判事は翌19日午前「証拠隠滅の恐れがある」として逮捕状を発布した。

 高位公職者犯罪捜査処(公捜処)は17日、尹大統領の逮捕状を請求した。約150ページに及ぶ逮捕状には内乱首謀、職権乱用の容疑が記された。管轄裁判所(ソウル中央地裁)を避けて西部地裁に令状を請求して「判事ショッピング」と批判を浴びた公捜処は、今回も令状を西部地裁に請求していた

 尹大統領に逮捕状を発付した判事はソウル西部地裁で令状業務を担当しておらず、当直で逮捕状審査を処理した

 逮捕状が発付されたことで、尹大統領は拘置所入所手続きを経て、ソウル拘置所(京畿道義王市)内の未決囚収容棟に収監される。

 また、一般の収容者と同様に、氏名・住民登録番号・住所などの人的事項の確認や、簡単な身体検査を受けなければならない。未決囚用の「囚衣」を着なければならず、収容者番号を付け、いわゆる「マグショット(収容記録簿用の人物写真)」も撮らなければならない。コ・ユチャン記者、兪鍾軒(ユ・ジョンホン)記者

(朝日新聞 2025/01/17)

 韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が出した「非常戒厳」をめぐり、尹氏を内乱容疑などで拘束した捜査当局は17日にも尹氏を逮捕する方針を明らかにしました。複数の韓国メディアが報じました。韓国の刑事司法で「拘束」と「逮捕」はどう違うのか解説します

 日本の刑事訴訟法では、現行犯逮捕などを除き、捜査機関が裁判所に逮捕状を請求し、裁判所が発付するかどうか決める。発付を受けた後に執行されると、容疑者の身柄は原則として警察署などの留置施設に置かれ、移動の自由が制限される。

 容疑者の身柄は48時間以内に送検される。勾留請求が認められれば、最長20日間、拘束され、取り調べを受けることになる。その後、起訴するかどうか検察が判断する。

 一方、韓国の制度は日本と異なり、容疑者の身柄を拘束し、そのうえで逮捕するという2段階に分かれている。容疑者に逃走や証拠隠滅の恐れがあると判断した場合、警察などの捜査機関が拘束令状を請求し、裁判所が認めれば、発付される。

 尹氏については昨年12月、3度にわたる任意での事情聴取の要請を拒否。捜査当局は拘束令状を請求し、裁判所から発付を受けた。

 だが、尹氏の警護を担う大統領警護庁の抵抗を受け、捜査当局はいったん拘束を断念。1度目の拘束令状は1月6日に失効した。捜査当局は再請求して認められた拘束令状をもとに、15日、尹氏の身柄を拘束した

 拘束令状を執行後、捜査機関は容疑者の取り調べを行った上で48時間以内に逮捕状を請求するかどうか検討する。逮捕の必要がないと判断した場合は釈放する

 裁判所は逮捕状の請求を受け、容疑者から話を聞く令状審査を行い、発付の可否を決める。逮捕状に基づく拘束期間は原則として最長20日。裁判所から逮捕状が出されれば、捜査当局は身柄の拘束を続けながら、本格的な取り調べを行い、検察が起訴するかどうかを判断することになる

 韓国の大統領経験者はこれまで、全斗煥(チョンドゥファン)(在任期間1980~88年)、盧泰愚(ノテウ)(88~93年)、李明博(イミョンバク)(2008~13年)、朴槿恵(パククネ)(13~17年)の計4氏が退任後に逮捕されている。全員が有罪判決を受けたが、いずれも赦免された。

 尹氏は歴代大統領としては初めて在任中に拘束された。逮捕されれば、大統領経験者では5人目となる。(ソウル=河野光汰)