(スポニチアネックス 2024/12/13)
 奈良の山下真県知事(56)が13日、公式X(旧ツイッター)を更新。奈良公園での開催が企画されている無料K-POPイベントに抗議の声が上がっていることについて、自身の見解を述べた

 奈良県は、韓国との友好を深める狙いで来年10月に「日韓国交正常化60周年及び奈良県と忠清南道の友好提携15周年を記念する音楽交流イベント」の開催を企画。朝日新聞の報道によると、約2億7000万円の事業費が示されたが、事業の妥当性に疑問の声が上がっているという。

 この報道はネット上でも大きな反響が上がり、疑問視する声が相次いだ。

 山下知事は「奈良県が来年10月に開催を予定している日韓国交正常化60周年及び奈良県と忠清南道の友好提携15周年を記念する音楽交流イベントに対し、様々なご意見を頂戴しておりますので、その背景事情を説明させていただきます」と書き出し、イベントへの見解を発表。

 まず「奈良県は西暦6~7世紀の飛鳥時代から、現在の韓国・忠清南道に存在した百済という国と交流がありました。唐と新羅の連合軍が百済を滅ぼそうとしたとき、百済が敗北することで日本が唐や新羅に侵略されるのではないかと恐れた当時の大和朝廷は、西暦663年百済に兵を送り、百済と共に唐・新羅連合軍と戦いましたが、敗れました(白村江の戦い)。その後、敗れた百済から多くの渡来人が日本に来て、漢字や儒教、機織り、造船などの文化や技術を日本に伝えました」と歴史的背景を説明。

 「こうした歴史的な経緯から2011年、奈良県と忠清南道は友好提携をし、これまで交流を続けてきました。そうした中で来年の音楽交流イベントの話が持ち上がりました」と、経緯を明かした。

 また「当初は、有料での開催を計画しましたが、国際的な友好親善という趣旨から無料の方が適切であり、その方がかえって多くの支援も得られるだろうということになりました」と、無料での実施を企画した意図も告白。「そして、忠清南道側がアーティストの派遣費用を負担し、奈良県側が会場設営や警備の費用を負担することになりました」とした。

 費用について「億単位の費用はかかるものの、お金のない日本の若者も大好きなK-POPアーティストに生で接することができ、これから両国の親善を担っていく世代同士の交流を深められる。そうしたお金に代え難い価値が生み出されると判断しました」と主張。

 さらに「日本がロシアや北朝鮮と対峙していくうえで日米韓3国の協力は欠かせません。日韓両国の首相や大統領が誰になろうとも、日韓関係を良好に保つには、地方間や民間の交流は重要であり、両国政府もこれを後押ししています」と現在の国際問題にも言及し「663年の白村江の戦いから続く、奈良県と忠清南道の絆をさらに深めることはこの一環であり、高い安いという次元だけで考えるべきではありません。本県の本イベント開催の趣旨をご理解ただければ幸いです」と理解を求めた。

 また費用対策については「なお、今後、企業等の協賛を確保したり、ボランティアを募ったりして、奈良県の負担する費用を少なくする努力はしていきます」とした。


(略)開催予定地である奈良公園といえば、県の象徴で国の天然記念物でもある「奈良のシカ」が多く生息している。鹿を目当てに多くの観光客が訪れるスポットだが、2023年10月には、予算不足等による問題が発覚していた。

「奈良公園内にある県所有の施設『鹿苑』では、農作物を荒らすなどの被害を与えた約240匹の鹿が“特別柵”という一般公開されていない敷地に収容されていました。そこでおこなわれていたのは杜撰な管理。十分なエサが与えられなかったため、7割もの鹿が“飢餓状態”に陥っており、年間50頭以上が死亡していたことが同施設で鹿の保護に当たる『奈良の鹿愛護会』医師の内部通報により明らかになったのです。

 山下真知事は、問題の根幹のひとつとして補助金の額が十分ではなかったことを認めた上で、増額を奈良市と相談していくことや、県民以外にも支援を呼びかけたいと11月の知事臨時記者会見で語っています。そんななかで、多額の税金が“コンサート”に投入されることに疑問を持つ県民が多いのも頷けます」(同前)(略)