ソウルの風 特別版 第143回 反日の本音
(SAPIO2012年8月22・29日号 2012/08/08)



違法「記念像」を警官が守り、憲法裁判所もトンデモ判決
慰安婦を「性奴隷」と言い換えて過熱!
韓国社会が浸る「反日無罪」の民族快感


ソウルの日本大使館前に「慰安婦記念像」が建てられても、韓国政府は撤去するどころか警官に守らせ、日本大使館にトラックが突っ込んでもメディア・世論は平然としている。最近では慰安婦を「性奴隷」と表現しようと盛り上がりをみせる韓国。「慰安婦問題」が再燃している韓国社会の動きを産経新聞ソウル駐在特別記者の黒田勝弘氏がリポートする。



昨年12月、慰安婦記念像ができたソウルの日本大使館前は最近、異様な雰囲気に包まれている。韓国警察の警備車両2台が常時、正門前を固めているが、反日団体のデモや集会はもちろん、日本人旅行者の見物人などで賑わって(?)いる。

中にはスキをついて火炎瓶を投げたり、トラックで突っ込んでくる者までいる。外国大使館の正門にトラックで突っ込んでくるなどというのは、もはやイラク、アフガニスタン並みだ。ところがマスコミをはじめ韓国世論はこれを異様と思わず平然としている。

とくに韓国マスコミは、日本の右翼団体のメンバーが大使館前慰安婦像に「竹島は日本の固有の領土」と書かれた抗議の棒(くいと報じられた)を立てかけ、そのパフォーマンスを捉えた映像をネットで流したことを一斉に「マルトゥク(くい)テロ!」などと大げさに伝え、反日を煽りまくった。

その結果がトラック突進事件だが、国際的常識ではこちらの方こそテロだろう。しかし韓国では反日となると国際的常識など通用しない。


国際法で守られた米大使館と守られない日本大使館

慰安婦記念像のお陰(?)でソウルの日本大使館前はこれまでにも増して〝反日名所〟になってしまった。今や慰安婦像の背後には常時、警官が3人立って像を守っている。日本人旅行者で記念像の写真を撮ろうとして警官に阻止された者もいる。

慰安婦像は慰安婦問題支援の反日団体(挺身隊問題対策協議会=挺対協)が、大使館デモ1000回記念と称し当局の許可を受けずに勝手に設置した無許可の不法施設だ。日本大使館は外国公館に対する侮辱、冒涜であり国際法違反だとして韓国政府に撤去を要求している。

ところが韓国当局はそうした不法施設を撤去するどころか、逆に警官が守っているのだからお笑い、いや深刻である。〝反日無罪〟――つまり反日なら何でも許されるという国際的常識無視の国家状況が今なお続いているのだ。

これを反米と比べると面白い。韓国では近年、反米も盛んなのだが、反米デモに対しては親米デモがあり、マスコミには反米批判の論調も登場する。

2002年、左派の虚武鉱(ノ・ムヒョン)政権が誕生するに際しては反米ムードが大きく作用した。この年、ソウル郊外で女子中学生2人が米軍車両に轢(ひ)かれて死亡する事件があった。韓国版の〝沖縄〟である。反米デモが高揚も、反米団体が犠牲になった女子中学生の記念碑を米大使館近くに設置しようとした

しかしソウルの米大使館は、日本大使館とは違って国際法および国際的常識でしっかり守られている。周辺100m以内の集会・デモは禁止されているし、大使館前に反米記念碑などとうてい許されない。

反米団体は仕方なく、米大使館からかなり離れた光化門交差点の歩道に設置した。もちろん無許可施設だ。取り締まる側の区役所は反米ムードが沈静化した後、6か月後に「人の通行に邪魔」として撤去してしまった。日本大使館前の慰安婦記念像はすでに半年以上経ったがそのままだ。相手が日本だと、撤去どころか逆に警官が不法施設を守っている!


日本大使館前のパフォーマンスで最近、きわめて特異なデモがあった。日本の和服と韓国のチマ・チョゴリ姿の女性たち約40人が慰安婦問題の解決を訴えてデモをしたのだ。

彼女らは韓国人と結婚している統一教会の日本女性たちで、日韓の友好・信頼のために早く問題を解決してほしいという。そして自ら謝罪運動に立ち上がったといい、日韓双方の首脳への嘆願書を発表した。

彼女らは典型的な贖罪派集団だが、李明博(イ・ミヨンバク)大統領への嘆願書には興味深い部分がある。韓国で慰安婦問題を支援し内外で反日運動を主導してきた中心組織の「挺対協」に対し、次のような批判を展開しているのだ。

この団体は慰安婦問題を看板にしていますが、その方向は、1つは日韓の分断であり、2つ目は韓国における政府と国民の分断です。90歳近くになる元慰安婦のおばあさんたちを前に立たせていますが、彼女らも自らの過去を考えれば、人の前に立つことより静かに平穏な余生を送りたいのではないでしょうか。そうしてあげることが彼女たちへの愛情ではないでしょうか……」

「挺対協」は元慰安婦の老女たちを囲い込み、今や韓国で最強の反日団体になっている。海外でも老女たちを引きつれ反日の先頭に立っている。慰安婦問題を聖域化し、批判はタブー視されてきたのだが、その「挺対協」に対し「元慰安婦の老女たちを利用した反日政治活動」――と辛らつに批判しているのだ。

日韓両国政府も「挺対協」が問題解決の最大のガンとみている。1995年から約10年間、日本の官民による「アジア女性基金」と首相の謝罪書簡による解決案を拒否し続け、問題を現在まで長引かせてきたのはこの団体だ。

「挺対協」は昨年12月、金正日(キム・ジョンイル)死去に際して北朝鮮に公式の弔意文を送っている。これはすごい。組織の内部や周辺には〝親・北朝鮮の影〟がうかがわれる。統一教会系の「挺対協」批判には、そのあたりのこともありそうだ。


虎の威を借りた日本攻撃

それにしてもこのところの慰安婦問題の盛り上がり(?)は異様である。これにはいくつかの背景がある。

1つは昨年8月、韓国の憲法裁判所が「韓国政府が元慰安婦の日本に対する賠償請求問題で日本と外交交渉しないのは憲法違反」との判決を出し、これを受けて韓国政府が日本に交渉を要求していることだ。「過去補償は国家的には解決済み」なため日本政府は当然、応じていない。

ところが李明博大統領は昨年末、京都での日韓首脳会談の席上、この問題を長々と取り上げ、今年3月の「三・一独立運動記念日」の演説でもわざわざ慰安婦問題に触れ日本に解決を要求。大統領が先頭に立って日韓関係の最大外交懸案に〝格上げ〟してしまった。

経済がウリで〝実用外交〟を看板にしてきた李明博大統領が今、なぜ?

歴代大統領と同じく、最後は「反日」で政権を締めくくり愛国者になって有終の美(?)を飾りたいということだろうか。敬虔(けいけん)なクリスチャンとして「対日人道問題」の慰安婦問題に突然、目覚めたとの説もある。お陰でそれまで結構高かった、日本での李明博人気はガタ落ちだ。

政権末期となると、あらゆる問題が次期大統領選挙に向けて政争のタネになる。日本批判は依然、愛国競争での格好のテーマだ。最近、「日韓秘密情報保護協定」が署名寸前で流れたのもそれだ。「過去を反省していない日本と軍事協力していいのか?」と与野党両陣営が日本批判で愛国を競っている。

NGO全盛時代の韓国では反日強硬派の「挺対協」を誰も説得できない。「反日」と「女性」と「人権」を看板にした「挺対協」はやり放題である。

韓国マスコミは最近、米政府が政府文書で慰安婦を「性奴隷(セックス・スレイブ)」と表現することにしたと、嬉々として伝えている。真偽のほどは不明だが、これまでも英文ではしばしばそう表現されてきた。

早速、韓国マスコミは「われわれもⅡ〝性奴隷〟に表現を変えるべき」と主張している(朝鮮日報など)。「日本の不道徳性を後世に知らしめ日本の罪状を直接的に表現する言葉」だという。金星換(キム・ソンファン)外交通商相も国会答弁で「政府も変更を検討してみる」と言っている。これはアメリカという〝虎の威〟を借りての日本攻撃だ。

韓国では今後、「性奴隷問題」とか「元性奴隷のおばあさんたち」というつもりだろうか。これも「反日なら何でもあり」の例だ。

韓国にとっては日本側がいくら謝罪し補償しようが、日本の不道徳性を糾弾し続け、対日道徳的優位性を維持するためには解決しない方がいい? 民族的快感として「慰安婦カード」は手放せないということだろうか




今日の「イ・ミョンバク大統領、竹島上陸」も、慰安婦問題について(韓国に都合の)良い返答をしてこないからファビョったという話もあるようですね。




SAPIO (サピオ) 2012年 8/29号 [雑誌]
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農心 セウカン 90g
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カルビー かっぱえびせん 90g
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