(産経新聞 2024/03/23)
国境が消える①

中国系資本による不動産買収に歯止めがかからない。「点」で始まった買収が「線」でつながり、いずれは「面」になり、列島の地主は中国系資本で日本人が店子(たなこ)という時代が遠くなさそうな勢いだ。中国系資本による「合法的経済侵攻」の現状を報告する。(編集委員 宮本雅史)

東京都心と青森県を結ぶ国道4号の中間にある仙台市。東北自動車道が南北に貫き、首都圏と東北各県をつなぐ要衝であると同時に、周囲に仙台空港や仙台塩釜港仙台港区(仙台港)を抱える物流の急所でもある。

そんな東北経済の要の仙台市で、親会社が中国の保険会社というA社(本社・東京)が物流センターの建設を進めている。敷地面積4千平方メートル余り。仙台市役所-陸上自衛隊仙台駐屯地-仙台港のほぼ一直線上にあり、仙台駅まで約7キロ、仙台駐屯地まで約3キロ、仙台港までは約4キロだ

◇あらゆるネットワーク使い事業拡張

担当責任者は「仙台は都心と東北を結ぶ玄関口。物流をつくるというのが至上命令」と話す。同市では、A社以外にも中国系資本と関係が深いとされるB社(本社・北海道)が仙台港近くに巨大な物流センターの建設を進め、物流ビジネスを全国展開する中国系資本のC社(本社・東京)が2カ所で大規模な物流事業を展開している

B社は「取材に応じられない」と回答したが、C社の責任者は「中国系とみられ、入札に参加できなかったり警戒されたりすることはあったが、日本法人だとアピールして託児所やカフェなどを設置し、地域住民と一体化した街づくりを目指してきたので評価が変わってきた」とし、あらゆるネットワークを使って拡張する方針だと話す。

◇空自基地周辺でビジネス

中国系資本の進出は物流面だけではない。仙台空港周辺では中国系資本が関係しているとみられる企業が複数看板を掲げているほか、航空自衛隊松島基地を擁する東松島市でも中国系企業がビジネスを展開している。

太陽光発電事業でも中国系企業の進出が著しい。経済産業省が公表している今年1月31日現在の再生可能エネルギーの事業計画認定表を基に、登記簿や業界関係者の証言から中国人や同国系資本が関係しているとみられる事業の認定数を拾っていくと少なくとも93件あった。仙台市や石巻市、涌谷町など10市8町1村にまたがり(地図参照)、国道4号と東北自動車道を取り囲むように広がっている

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その中には、D社(本社・東京)のように仙台市内の地元業者2社を買収し、所有する14カ所の発電所を取得したケースもある。D社の株主には上海電力日本(本社・東京)が山口県岩国市などで展開する事業に資金面でたびたび登場する日本の金融業者が名を連ねており、仙台市内の不動産業者は「中国系資本が関係するとみられる太陽光発電所の建設計画をみると、根っこでつながっているようにも思える」と語る

◇有事に北海道からの増援分断

宮城県は経済面だけではなく、陸自の仙台駐屯地や多賀城駐屯地、霞目駐屯地を抱える安全保障上の要衝なだけに積極的な中国系資本の進出に不安を訴える声が少なくない。

「東北地方は北海道に次ぐ食料と人的戦闘力の供給地で、なかでも仙台市は国の行政機関が集中する東北の政治、経済の中心地だ。地理的にも津軽海峡から東京までの主要な経路の中間点にあり、北米に近い国際拠点港湾の仙台塩釜港を擁する。同市を押さえることで平時には物流・経済を握り、有事には東北のみならず、北海道からの増援を困難にして戦力を分断できる」

陸上自衛官出身の菊地崇良仙台市議はこう指摘する

◇友好掲げ「非軍事的侵攻」

中国系資本の仙台進出の取材を進めると、過去には、中国人の移住を狙った大型チャイナタウン構想や中国総領事館建設構想、ジャイアントパンダの誘致計画…など、同市が長年にわたり、中国と友好的な関係を続けてきたことが浮かび上がってくる。令和4年4月23日付本紙は、中国共産党機関紙「人民日報」の名を冠した月刊誌「人民日報海外版日本月刊」の理事長が郡和子市長の補佐官に就任していることを挙げ、「『仙台市政が中国寄りに誘導されかねない』と危惧する声が強まっている」と伝えている

中国には国防動員法と国家情報法がある。前者は有事の際、海外を含め中国人所有の土地や施設を中国政府が徴用できるという法律、後者は平時であっても情報工作活動への協力を義務付ける法律だ。つまりその気になれば中国は、中国人が購入した日本の土地を侵略の足掛かりにできるのである。

「仙台市の現状を考えると、中国系資本の不動産買収などの『非軍事的な侵攻』は全県を覆いかねず、わが国の安全保障面に大きな影響を与えかねない」。菊地市議はこう警鐘を鳴らす。


(産経新聞 2024/03/24)

国境が消える②

青森県は航空自衛隊三沢基地や海上自衛隊大湊地方総監部など自衛隊施設が集中する国防上、重要な地域だ。令和4年7月29日付本紙は、宗谷海峡や津軽海峡が中国軍艦艇の頻繁に通過する戦略海峡になりつつあるとして、同県の重要性を指摘する陸上自衛隊幹部の証言を紹介している

全国的に不動産の取得を続ける中国系資本のこの地域での動向はどうか。広大な土地を必要とする再生可能エネルギー事業に焦点を絞る

経済産業省の再エネ事業計画認定表によると、今年1月31日現在、同県内で認定された太陽光発電や風力発電の事業計画は6518件。その中で登記簿や業界関係者の証言から中国人や同国系資本が関係するものは少なくとも290件余りある。青森市や三沢市など6市13町4村(地図参照)にまたがり、中には1社で133件の事業を認定された企業もある

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◇海自施設そばで風力発電事業

経産省の資料などを手掛かりに調べると、上海電力日本(本社・東京)が代表社員を務める「東北町発電所合同会社」(同)が東北町塞ノ神18-2など12筆、計約37万平方メートルに地上権を設定登記し、太陽光発電事業の準備を進めている。一帯は航空自衛隊東北町分屯基地から約10キロの地域だ。

上海電力日本が代表社員を務めていた「合同会社SMW東北」(同)も海自大湊地方総監部に近いむつ市城ケ沢と海自樺山送信所に近い同市関根、竜飛崎近くの津軽海峡に面する外ケ浜町の3カ所で風力発電事業の認可を取得。上海電力日本との関係が指摘されているE社(同)も外ケ浜町など3カ所で風力発電事業の認定を受けている。


上海電力日本は平成27年に農業生産法人「水杜の郷」(茨城県つくば市)と共同出資して「SJソーラーつくば」(本社・東京)を設立しているが、関係者の証言などによると、E社の前社長は水杜の郷の設立に強く関与したとされるほか、登記簿によると、一時期、SJソーラーつくばの役員を務めていた

SMW東北とE社が事業認定された6カ所の登記簿には地役権(一定の目的を達成するために他人の土地を利用する権利)を設定登記した1カ所を除き記載がなく、土地が買収されたのか、地上権が設定されているのか、実際の権利関係は不明だ。

E社はさらに、むつ市城ケ沢下田と同市大川迎の2地区で小型風力発電事業を計画。地権者によると、20年間の地上権設定契約を締結して地代を一括で受け取ったが、下田地区の地上権設定契約はその後、E社からF社(本社・青森)に差し替えられ、大川迎地区についても昨年10月、E社からG社(本社・大阪)に契約先が変わった。地権者は「詳細な経緯は分からない」と話す。

◇地権者承諾なしに売却・譲渡可能

わが国では不動産は買収しなくても地上権設定契約を交わすことで自由に利用できる。太陽光・風力発電の場合、地権者と事業者との間で設定期間が30年前後の長期間にわたる地上権の設定契約を結ぶケースがほとんどだが、この契約を結ぶと事業者は契約期間中、地権者の承諾なしに地上権すら転売、譲渡が可能だ

地権者は発言権がないまま固定資産税を払い続けるしかない。つまり、事業者は地上権が有効な期間は広大な土地を実質所有できるのだ。しかも不動産登記の義務がないから実態は不明。ここに大きな落とし穴がある。

宮城県宅地建物取引業協会の佐々木正勝会長は地上権の持つ危険性を指摘した上で、「国土を守るためにも自分の権利を主張できる特約条項をつけるべきだ」と注意を促す

大崎光明・青森県議は「自衛隊施設の周辺が、外国資本に買収されたり、地上権を設定して実質取得されたりするのは由々しき問題だ」と危機感を口にする。

◇上海電力が書面で回答 「法にのっとり事業推進」

全国的に太陽光発電事業を展開している上海電力日本(本社・東京)にインタビューを申し込んだが、「本社の承認が必要」として書面のみでの対応となった。

そこで、筆者は2月29日、

①同社が代表社員を務めていた「合同会社SMW東北」はすでに解散しているが、青森県でのFIT(再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度)事業認定が取り下げられていないのはなぜか

②同県東北町塞ノ神や山口県岩国市などでの太陽光発電事業の進捗(しんちょく)状況は

③発電施設を開発する際、複数の特別目的会社が関与しているケースがあるが、どのような理由で事業主を何度も変えるのか

④風力発電を含む今後の具体的な事業計画や日本企業との連携は

⑤発電事業を主な業務としているが、他事業への参入予定は-といった数点について質問状を送付した。

これに対して同社からは3月4日、「個別プロジェクトの進捗状況につきましては、経済産業省資源エネルギー庁内のウェブページに公表されておりますので、ご参照ください。また、経営方針に関するご質問につきましては、弊社は他の再生可能エネルギー事業主樣と異なるところはなく、日本の法律法規にのっとり再生可能エネルギー事業を推進しております」との回答が寄せられた。(編集委員 宮本雅史)