(産経新聞 2024/03/10)
韓国が始めた反日運動をきっかけとして、世界中で慰安婦像の設置が相次いだことは記憶に新しい。史実に基づかない「性奴隷」という誤った歴史認識を広めてしまう恐れが指摘される中、ドイツの首都、ベルリン市ミッテ区に設置された慰安婦像を巡って、東京都新宿区議会で論戦が起きている。外交や国際問題がなぜ、地方自治体に波及したのか。開会中の区議会を尋ねた。

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問題の発端は、新宿区が区議会に提案した令和6年度予算案に、区議らをベルリン市ミッテ区に派遣する費用を盛り込んだことだった。2月28日の区議会予算特別委員会で、伊藤陽平区議(新宿未来の会)は区側を追及した

「(ミッテ区には)慰安婦の像の問題がある。会派で議論しても、とんでもないという怒りの議論になった。日本政府としても問題あると言っているので、ちゃんと伝えるべきだ。ミッテ区議会との意見交換の機会は作れるのか」

新宿区の担当者が「ミッテ区長や区議会との交流はあると思うが、内容は議員の皆さまの中でそういう話をされるのか決めていただく必要がある」と答弁すると、伊藤氏は「交流の促進も一つの成果だとは思うが、毅然(きぜん)と対応した方が良いと会派として思っている」と訴えた。

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新宿区は平成6年にミッテ区と友好提携を結んだ。以来、青少年交流事業などを重ね、今年は30周年を迎えるため区議会議長ら5人の派遣費用として700万円を予算案に計上した。担当者は「ミッテ区側から招聘(しょうへい)状をもらう予定。新型コロナウイルス禍で青少年交流事業が途絶えていたこともあり、意義深いと考えている」と語る。

ミッテ区では2020(令和2)年、韓国系の市民団体が区の公用地に慰安婦像を設置した。像の台座には「日本軍はアジア太平洋地域の無数の少女や女性を強制連行し、性奴隷にした」などと事実に反する記載もあった。吉住健一区長は懸念を表明する書簡をミッテ区長宛てに送った。

新宿区によれば、当時のミッテ区長からは返信があった。担当者は「私自身は反対なのだが区議会が積極的で…というニュアンスだった。撤去に向けて動くとも書かれていた」と打ち明ける

ただ、現在に至るまで像はそのままだ。岸田文雄首相が22年の日独首脳会談で撤去を要請するなど、外交上の問題にも発展している。

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こうした中での訪問が、新宿区議会に波紋を広げたというわけだ。慰安婦像の設置を許可し続けるミッテ区と、今後も友好関係を維持できるのかという意見もあれば、そもそも700万円という派遣費用の是非を問う声までさまざまだ

ある新宿区議は「税金を使って海外に行く以上物見遊山はダメで、まずは費用に見合う効果があるか、だ。それでも行くというなら、ミッテ区側がどういう考えで慰安婦像の設置を許可しているのか聞き、日本側の懸念について議論をしてくるべきだろう」と指摘している。

予算案を巡る区議会の議論は、3月21日まで続く。(大森貴弘)