(産経新聞 2023/1/30)
沖縄県石垣市は29、30の両日、同市の尖閣諸島周辺で環境調査を行い、ドローンを使った上空からの調査を初めて実施した。尖閣諸島の魚釣島ではヤギの食害などによる自然破壊が懸念されており、市は今後、上空からの映像をもとに実態解明を急ぐ。調査船には東海大の海洋研究チームのほか中山義隆市長や市議らも乗船し、産経新聞記者も初めて同行取材した

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▲尖閣諸島の魚釣島の上空調査ため、ドローンを操縦する東海大の調査チーム=30日午前、沖縄県石垣市の尖閣諸島・魚釣島沖合(川瀬弘至撮影)

同市による調査は約1年ぶり2回目。平成24年には東京都も現地調査を実施したが、上陸はせず、船上から島の様子を視認するにとどまっていた。

今回は尖閣諸島の魚釣島に調査船が接近し、ドローンを飛ばして上空約150メートルから計4回、あわせて30分以上にわたり同島を撮影することに成功した。

市の委託で研究チームを率いた東海大の山田吉彦教授(海洋政策)は「ドローンからの映像を見ると、東側斜面の崩落が前回調査よりも深刻化しているようだ。魚釣島では繁殖したヤギが草木を食い荒らし、赤土が露出して海に流出する自然破壊が懸念されており、今回の映像をもとに詳しく調べたい」と話した。

このほか周辺海域の水質などを調べるため、複数の地点で塩分濃度などのデータを収集した。市は31日に記者会見し、調査概要を説明するとともに上空からの映像を公開する方針。

調査後、中山市長は産経新聞の取材に「尖閣諸島は石垣市の行政区域。今回の調査で得られる基礎的データをもとに、漁業を含め有効活用していく方策を検討したい」と話した。

一方、30日午前の調査の際、中国海警局の船4隻が日本の領海に侵入し、調査船に接近する動きをみせた。しかし、海上保安庁の巡視船10隻が調査船の前後左右をガードし、調査妨害を阻止するとともに、中国公船に領海外に出るよう警告した。

中国公船は、調査船が尖閣周辺から離れるのに合わせ、午後、相次いで領海外に出た。


(産経新聞 2023/1/30)

「(中国公船の)海警1304(ひと・さん・まる・よん)、日本の領海から直ちに退去せよ」-。沖縄県石垣市が29、30の両日に実施した尖閣諸島(同市)の現地調査は、懸念された中国側の妨害もなく、無事終了した。だが、領海侵入した中国公船と海上保安庁の巡視船が激しくせめぎ合う様子は調査船からも見てとれ、現場は一時緊迫した空気に包まれた。同行取材した産経新聞記者が、調査の舞台裏を追った。

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▲中国海警局の船(中央)を挟み込むように航行し、調査船への接近を防ぐ海上保安庁の巡視船=30日午前、沖縄県石垣市の尖閣諸島沖

◇「尖閣は日本領」

調査船の操舵(だ)室に設置してある無線から緊迫した声が流れてきたのは、30日午前3時5分だ。

「海警1304、こちらは日本国海上保安庁巡視船である。貴船は日本の領海に侵入している。貴船の航行は無害通行とは認められない。日本の領海から直ちに退去せよ」

前日午後5時に石垣港を出港して10時間余り、石垣市がチャーターした調査船は尖閣諸島の魚釣島沖合約35マイル(約56キロ)を航行し、領海には達していなかったが、すでに中国公船が侵入して待ち構えていたのだ。

海保からの日本語と中国語での警告に、中国公船は直ちに反発した。

「こちらは中国海警船隊である。貴船の主張は受け入れられない。釣魚島(魚釣島の中国名)などは中国の領土である。周辺12カイリは中国の領海である」

すぐに海保が抗議する。

「尖閣諸島は日本の領土である。貴船の主張は受け入れられない」

こうしたやり取りが頻繁に繰り返された

◇レーダーの船影

30日午前6時、調査船は魚釣島周辺の日本の領海内に入った。日の出前で外は真っ暗だが、中国公船が接近し、それを海保巡視船が阻んでいる様子は、調査船のレーダーにも鮮明に映し出されていた

レーダーの中央に位置する調査船の左右と後方に、船影が3つ浮かんでいる。海保巡視船だ。少し離れた右側にも船影が2つある。これは中国公船だ。しかし別の船影2つがぴったりと張りついている。海保巡視船がスクラムを組み、中国公船を調査船に寄せ付けないでいるのだ

海保巡視船の徹底的なガードは、夜明けとともにさらに明らかになった。

調査船の左右に2隻ずつ、後方に1隻の計5隻が一定間隔で航走し、魚釣島近くにも1~2隻が待機している。早朝から中国公船が姿をみせると、2隻で挟み込むように並走し、接近を防いだ。

◇毅然と対応を

今回の調査で最も懸念されたのは、ドローンを使った初の上空調査で、中国側が電波妨害などを発し、ドローンが落とされることだった。

だが、海保巡視船が中国公船を近くに寄せつけなかったこともあり、調査は無事成功した

市から委託を受けた東海大研究チームのメンバーは「上空調査が成功した意義は大きい。映像を詳しく分析することで、新たな発見があるかもしれない」と期待を膨らませる。

ただ、尖閣諸島周辺で中国側が挑発行為をエスカレートさせているのも事実だ。

中国公船が尖閣周辺の接続水域で確認された日数は昨年、過去最多の336日に上った。

調査に同行した友寄永三石垣市議は「日本が毅然とした対応を示すことこそ、この問題にピリオドを打つ近道になるのではないか」と話している。(川瀬弘至)


中国側発表↓

(ロイター 2023/01/30)

中国海警局が30日、尖閣諸島(中国名:釣魚島)周辺の海域から日本の船舶5隻を追い払ったと、中国国営中央テレビ(CCTV)が報じた

報道によると、海警局の報道官は5隻が「釣魚島周辺の領海に違法に侵入」し、海警局の船によって追い払われたと指摘。「日本側に対し、この海域でのあらゆる違法行為を直ちに停止し、このような事態が二度と起こらないようにすることを求める」とした。