(読売新聞 2022/11/09)

 政府は、海上自衛隊と海上保安庁の連携を強化するため、日本が攻撃を受けた「武力攻撃事態」を想定した初の共同訓練を今年度内にも実施する方針を固めた。共同訓練の結果を検証したうえで、武力攻撃事態で、防衛相が海保を統制下に置く際の手順などを定めた「統制要領」の策定を進める考えだ。

 複数の政府関係者が明らかにした。沖縄県・尖閣諸島周辺海域などでの有事を念頭に、海自と海保が切れ目のない対応をとれるようにする狙いがある。政府は、防衛力の抜本的強化に向け、自衛隊に加え、海保の関連予算も大幅に増額し、双方の協力体制を整えることを目指しており、共同訓練は象徴的な取り組みとなる。

 海自と海保の共同訓練はこれまで、武力攻撃事態には至らない、自衛隊が治安維持などを担う海上警備行動の発令を想定したものにとどまっていた。国土交通省の外局で法執行機関の海保と、海自は警戒監視の情報共有などは進めているが、指揮命令系統は異なるため、有事を見据え、実戦的な訓練を行う必要性が自民党などから指摘されていた

 訓練では、海保巡視船が相手国の法執行機関の船に対処中に、相手国の軍艦がミサイルを発射するなど、軍事行動に出てきた場合、海自護衛艦と前線を円滑に交代する流れなどを確認するとみられる。海保は避難する住民を輸送したり、漁船などの民間船の安全を確保したりする後方支援を主に担う見通しだ。

 自衛隊法80条は武力攻撃事態が発生し、自衛隊に防衛出動などが命じられた際、首相が海保を防衛相の統制下に入れることができると規定している。ただ、この場合に活用される「統制要領」はまだ定まっていない。政府は共同訓練で見つかった課題などを参考に、統制要領を取りまとめることを検討している

 日本の海保に相当する中国海警局は2018年、中国軍を統括する中央軍事委員会の直轄組織である武装警察部隊(武警)の指揮下に入るなど、軍との連携を加速させている。尖閣周辺海域に展開する海警局船の後方には中国海軍艦艇が控え、「衝突に備えた万全の態勢を敷いている」(自衛隊幹部)とされる。