(朝日新聞 2022/10/25)
外務省の森健良事務次官と韓国外交省の趙賢東(チョヒョンドン)第1次官が25日、東京都内のホテルで会談した。日韓両政府は関係改善では一致しており、最大の懸案になっている戦時中の徴用工問題の解決に向けて、着地点を慎重に探っている状況だ。
日本側の発表によると、会談は約90分間行われた。森氏は「日韓関係を健全な関係に戻し、更に発展させることが必要だ」と指摘。両氏は徴用工問題を含む懸案について協議を加速させ、緊密な意思疎通を続けていくことで一致した。
韓国側の発表によると、両氏は北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対する深刻な懸念を共有。徴用工問題を含む両国間の懸案について「深い意見交換」をした。
韓国側の発表によると、両氏は北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対する深刻な懸念を共有。徴用工問題を含む両国間の懸案について「深い意見交換」をした。
徴用工問題をめぐり、尹錫悦(ユンソンニョル)政権は訴訟で敗訴が確定した日本製鉄(旧新日鉄住金)と三菱重工業の資産を裁判所が売却し、元徴用工らへの賠償に充てる「現金化」を防ぐための解決策を探ってきた。
■韓国の解決案は……
複数の韓国政府関係者によると、これまでの外交当局間の協議で、韓国側は日本側に対し、元徴用工らの同意を取り付けるため、賠償の履行を拒否し続ける両社にも一定の負担が必要と伝達。その上で、両社が賠償額と同額を「寄付」などの名目で拠出する案を水面下で打診したという。
韓国政府は解決策を見いだすため、有識者や原告、支援団体などから幅広く意見を聞いた。当初は韓国政府が賠償を肩代わりする案を検討したが、世論から強い反発を受ける可能性が高いと判断。韓国の「日帝強制動員被害者支援財団」が寄付金を募り、賠償を肩代わりする方向で固まりつつある。現金化が迫る両社には、財団への拠出を求める方針だ。
同財団は、韓国の政府と企業が拠出し、元徴用工や遺族らを支援するために2014年に設立された。拠出先に、1965年の日韓請求権協定に伴う日本の経済協力金を使って成長した韓国企業が含まれており、韓国政府は、元徴用工らへの救済の趣旨に沿うと考える。
一方、日本政府は1965年の日韓請求権協定で賠償問題は「解決済み」との立場を崩していないが、外務省幹部は「韓国とは良い協議ができている」とも明かす。尹政権が低支持率にあえぎながらも、日韓関係の改善に意欲的な姿勢を評価。早く問題に道筋をつけ、11月に予定されるASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議など一連の国際会議で、初の首脳会談に期待を寄せる。
しかし、岸田政権も内閣支持率が下落している。合意内容によっては、政府が自民党保守派などから厳しい批判を受けるおそれもあり、党内基盤が盤石ではない岸田文雄首相にとっては、難しい判断を迫られる。(鈴木拓也=ソウル、野平悠一)
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