(日本経済新聞 2022/10/24)

【この記事のポイント】
・習氏3期目、自らに近い人物で指導部固め権力集中
・共青団・上海閥を一掃、「重し」役の年長者も不在
・後継者みえず長期政権化も。政治リスク強まる懸念

【北京=多部田俊輔】3期目となる新たな習近平(シー・ジンピン)指導部が23日に発足した。習氏に近いとされる「習派」は最高指導部を指す政治局常務委員で7人中6人を占めた。序列24位以内の政治局員でも約7割とみられ、権力集中がいっそう進んだ。習氏と距離があるとされる胡春華氏が降格したほか、年上の「重し」役も去り、政治リスクはより強まっている。

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新たな最高指導部をみると、習氏「1強」が色濃くなった。序列2位で次期首相候補となる李強(リー・チャン)氏は浙江省出身。習氏の浙江省トップ時代に秘書長として働いた。同4位の蔡奇(ツァイ・チー)氏も習氏が福建・浙江の両省にいた時代に仕え、習氏の信頼が厚いといわれる。

留任した趙楽際(ジャオ・ルォージー)氏、汚職摘発を担う規律検査委員会のトップとなった李希(リー・シー)氏は、ともに習氏や父の習仲勲・元副首相とゆかりがあり、習氏が厚い信頼を寄せるとされる。同6位の丁薛祥(ディン・シュエシアン)氏は日本の官房長官に相当する党中央弁公庁主任を務め、習氏を支えてきた側近中の側近だ。

残る同4位の王滬寧(ワン・フーニン)氏は、習氏や江沢民氏、胡錦濤氏の3代にわたる総書記に仕え「三代帝師」との異名を持つ。習派には該当しないが、習氏に忠誠は尽くしている

一方、李克強首相を輩出した共産党の青年組織「共産主義青年団(共青団)」、江氏らを柱とする「上海閥」といった習氏と距離があるとされる勢力は一掃された

最高指導部の平均年齢は5年前の63歳から65歳に上昇した。習氏は69歳と最高齢となり、習氏に耳の痛い進言をしやすい年長者もいなくなった。習氏にとってはトップダウンで物事を決めやすい環境がより整ったが、一度決めた方針を軌道修正しにくくなるとの懸念も高まっている。

最高指導部のメンバーをみると、習氏の後継者も見当たらない。中国共産党は胡氏の時代まで、指導部が新しくなるごとに、後継者と目される若手を登用してきた。習氏も胡氏の2期目である2007年に、李克強氏とともに常務委員に抜てきされている。

ただ今回、最も若い60歳の丁氏はこれまで党最高指導部への登竜門とされる地方トップの経験がなく、党全体を率いるとは考えにくい。「後継者が不透明となっており、習氏はさらなる長期政権を視野に入れている」(中国政府関係者)との見方も出ている

政治局員全体でも、「習派」が7割程度を占めるとみられる。浙江省時代に習氏のスピーチライターを担った陳敏爾・重慶市党委書記や、福建省と浙江省時代の部下だった黄坤明・党中央宣伝部長は政治局員にとどまった。陳吉寧氏は今回、最高指導部入りした蔡奇氏を支えており、習派と目される。

今回から政治局員が24人と、1人減った。政治局のメンバーは毎月1回集まり、党と国の重要政策について議論している。意見が割れた際に多数決で選ぶため、奇数が多かった。

女性の政治局員登用が25年ぶりにない特異な体制ともなった。従来は経済や防疫などで手腕を発揮した呉儀氏、社会問題を担当した劉延東氏、新型コロナウイルス対策を担った孫春蘭氏といった女性が選出され、副首相などを務めてきた。

約2300人いる党大会の代表でみると、女性は約620人で全体の3割弱に上った。ただ党序列上位約200人の中央委員では11人と前回から1人増えたのみで、約5%にとどまった

中国では、夫婦共働きが一般的だ。企業では女性経営者も目立つなど女性の社会進出は比較的進んでいるといえる。ただ、共産党の組織内に限れば、女性活用の流れは後退した格好だ。