(朝鮮日報 2022/08/21)

 先日、「韓国がどうして西側国なのか」という読者の質問を受け、この国のアイデンティティーについてあらためて考えることになった。過去9カ月間、欧州の国際政治アナリストと直接、間接に会って「韓国は本当に自らを西側国と考えているのか」というような質問を受けてきたところだった。

 現在、西側とは地理的な概念ではない。西欧の価値観や利益を共有し、その体制に属するということを意味する。かつては共産主義諸国が、現在では権威主義の独裁諸国が、その正反対に位置する。こうした点で、韓国は確実に西側の国だ。20世紀以降、政治・経済・文化の全ての面で西側世界の枠組みの中で成長した。国体は市場資本主義・自由民主主義・三権分立など西欧的価値に基づいている。米国と西側諸国がおよそ70年前に自国民15万人を犠牲にして守った国で、彼らとの交流・協力を通して世界10大経済強国へと成長した。今では西側を代表する先進8カ国(G8)候補にまで挙げられている

 だが、韓国の国民はもちろん政治家たちも「韓国は西側の国」だという命題の前に首をかしげている。果ては、こうしたアイデンティティーをあいまいにすることが「国益」にかなうと考える人々もいる。「安米経中」のように、グレーゾーンで実利を得ようという浅薄な論理が賢明な知恵であるかのように受け入れられている。こうした思考方式がひそかに広まったことで、同盟国の議会代表を門前払いしておいて「国益のための選択」という詭弁(きべん)が登場する。定見なく信頼をそぐばかりの行いを「国益」と装うことに慣れている

 韓国の対外政策が他の西側諸国や同盟国に追従すべきだと言っているのではない。自分が立っている場所が明確であればこそ、自主的な外交が可能だということだ自主を口実に右往左往する行いを繰り返したら、国際社会の信頼を失うばかりだ。そういう国の国益判断は、国家権力を握った特定勢力の利益にすぎないという認識を与える。欧州の対外政策当局者の多くが、韓国の対北・対中・対日政策を巡ってそうした疑いを持っている。「韓国の本当の考えは何か」とストレートに尋ねる人もいた。

 残念ながら、中国はこれをよく分かっており、利用している。アイデンティティーが弱く、植えても固められない国だから、なだめすかして操練すればいくらでも「中華世界」に従属させることができる-と見ているようだ。THAAD(高高度防衛ミサイル)問題を巡り、内政干渉にほかならない動きで韓国を追い詰め続けているのも、そうした「ガスライティング(誤情報を与えるなどして追い詰める心理的虐待)」の過程といえる。

 アイデンティティー不足は、未成熟な人間の特徴だ。韓国も、今こそそうした段階から抜け出すべきではないだろうか。世界が新冷戦へと向かう中でどのような戦略を立てるにせよ、「西側の一員」だという自己認識は確実であるべきだ。イソップ童話の「ひきょうなコウモリ」の話のように、あいまいなアイデンティティーに溺れて右往左往しては、どちらからも捨てられることになる。国際社会でも例外ではない。 パリ=チョン・チョルファン特派員