(時事通信 2022/08/15)

 日本と韓国の間で最大の懸案となっている元徴用工問題がヤマ場を迎えそうだ。早ければ週内にも韓国最高裁で日本企業の資産売却命令が確定するとの見方が出ており、日本側が回避を求めてきた「現金化」が現実味を帯びている。韓国の朴振外相は現金化前に「望ましい解決策」を探る考えを示すが、今のところ具体案は出ておらず、日本側は韓国国内の動向を注視している。

 林芳正外相は10日の記者会見で、「国と国の約束を守ることは国家間の基本だ」と強調した。1965年の日韓請求権協定で戦時中の請求権問題は解決済みとの立場を改めて示したものだ。

 徴用工をめぐっては、日本企業に賠償を命じる韓国最高裁判決が2018年に確定。昨年9月以降、日本企業の韓国内資産の売却命令が次々と出され、抗告手続きで対抗している。早ければ今月19日までに最高裁が再抗告を棄却し、三菱重工業の資産売却命令が確定する可能性があると韓国外務省が指摘している

 同省は問題解決のための「官民協議会」を設置し打開策を検討するが、最終決定の「先送り」を求めるかのような意見書を最高裁に提出したことに原告側が反発。協議会への出席を拒否され、原告側との話し合いはこう着状態に陥っている。

 資産売却命令が出されると、三菱側の資産は鑑定、競売といった手続きを経て現金化され、原告への支払いに充てられる見通し。日本外務省は7月の自民党会合で「現金化されれば具体的措置を考える」と対抗措置に言及している。日韓の応酬に発展すれば尹錫悦大統領就任で芽生えた関係改善の空気が急速に冷え込む可能性がある。

 日本政府関係者は「韓国政府が苦戦しているのは事実」と指摘した上で、「日本側は見守るしかない」と漏らす。別の関係者も「祈るしかない」と語った。