(中央日報 2022/08/12)

「THAAD(高高度防衛ミサイル)三不一限」がそれでなくても刺々しい状態にある韓中関係の新たな火種に浮上した。「三不」は2017年10月、韓中両国がTHAAD体系問題を協議した後、当時の文在寅(ムン・ジェイン)政府が▼THAAD追加配置 ▼米国ミサイル防衛(MD)体系への参加 ▼韓日米軍事同盟--などの3つをしないと明らかにした立場をいう。これに加えて韓国政府が「一限」、すなわち「すでに配備されたTHAADを制限的に運用する」という約束をしたと中国政府が主張し、波紋が広がっている

中国外交部の汪文斌報道官は韓中外相会談の翌日である10日、定例会見で「韓国政府は対外的に『三不一限』政策を公式に表明した」と主張した。

これに対する韓国政府の立場は一貫して明確だ。2017年の三不表明は韓国政府が持っていた立場をただ「説明」したものにすぎず、中国と「合意」あるいは「約束」したものではないということだ。2017年当時の韓国政府の公式発表文には「韓国側はこれまで韓国政府が公開的に明らかにしてきた関連の立場を(中国側に)再び説明した」と触れているのみで、「約束」または「合意」という単語は登場しない。「三不」の内容一つ一つが安保主権に関連した事項という点でも、国家間の合意の対象になりえない事実は常識としても明白だ。

それでも中国はこれをずっと「約束」として扱い、不当な圧迫を加えてきた。これに加えて「一限」という用語をちらつかせながらTHAAD運用制限に対する主張も持ち出した。これは文在寅政府のとき環境影響評価未終結などの理由で臨時配備状態に留まっていたTHAADを尹錫悦(ユン・ソクヨル)政府が正式配備に転換することを阻止しようとする魂胆から発している。韓国国内でTHAAD撤退を主張する一部勢力をあおり、内部葛藤を増幅させる行為でもある。

中国の三不一限主張こそ、中国が口さえ開けば言及している「内政干渉」であり、韓国の「安保主権侵害」に該当する。政府は正面から反論し、堂々と対応しなければならない。中国が内政干渉的な主張を繰り返し展開する背景には、文在寅政府時期にTHAAD運用に対する不十分な対処にも原因がある以上、尹錫悦政府がその前轍を踏むようなことがあってはいけない。大統領室が明らかにした通り、5年前に韓国領土に入ってきたTHAAD運用の正常化をこれ以上遅らせる理由はない。

あわせて三不の立場表明が過去の文在寅政府で起きたものである以上、野党「共に民主党」もこの事態に対して責任意識を持って中国の主張に堂々と対応するよう求めたい。問題の発端となった2017年政府間協議に臨んだ文在寅政府関係者たちも、一点の曇りもないなら、この際明確に立場を明らかにして中国側が再びごり押し主張ができないようにしなければならない。


(朝鮮日報 2022/08/12)

 中国外交部(省に相当)は韓国のTHAAD(在韓米軍の高高度ミサイル防衛システム)配備について「韓国政府は対外的に『三不一限』政策を宣示(広く宣布して伝える)した」と主張している。三不とは「THAADを追加配備しない」「米国のミサイル防衛システム(MD)に参加しない」「韓米日軍事同盟に参加しない」とする約束で、一限は「THAADレーダーに中国方向に遮断幕を設置するなど運用を制限する」という意味だ。一限についてはこれまで中国国営メディアが何度か報じたことはあるが、中国政府が公式に言及したのは今回がはじめてだ

 三不は今後追加の措置はしないという意味だが、一限はすでに配備したTHAADの運用にまで中国の意向に従うもので、韓国が思い通りできないことを意味する。そのため一限は三不以上に深刻な安保主権の放棄と言えよう。これが事実であれば、世界で自国の軍事装備使用に他国からの干渉を認めた前代未聞の事態だ。

 当時の康京和(カン・ギョンファ)韓国外交部(省に相当)長官は「中国は一限を追加で要求した事実はなく、THAADの運用を制限する考えはない」と説明した。しかし今回中国政府が公の席で一限に言及したことで、文在寅(ムン・ジェイン)政権は中国との裏合意に応じ、国民にうそをついてきた疑惑が間違いなく浮上するだろう。2017年に当時の文大統領はTHAADに対する中国の反発をかわして訪中しようと頭を痛めていた。

 実際に文在寅政権は5年の任期中、一貫してTHAADの正式配備を先送りした

慶尚北道星州郡のTHAAD基地に対する環境影響評価は時間がかかる一般の環境影響評価に変更し、通常1-2年で終わるはずの手続きは一切行わなかった

左翼団体による抗議活動や妨害で長期にわたり必要な物資を搬入できず、兵士らはコンテナでの生活を強いられ基地の運用にも問題が生じていた。そのため米国のオースティン国防長官が韓国政府に直接不満をぶつけることもあった。

文在寅政権が中国からの一限の要求を実質的に受け入れていたのだ。しかし当時外交長官だった康京和氏や鄭義溶氏ら文在寅政権の関係者らはこの疑惑について何も説明せず沈黙を続けている。

 現在の韓国大統領室は「THAADは決して協議の対象ではない」「今月中に基地の運用が完全に正常化するだろう」とコメントした。米国も「中国の要求は不適切」として一蹴している。THAADは北朝鮮の核やミサイルの脅威に対抗し、国民の生命と安全を守る最後の防衛手段だ。中国の不当な圧力に屈し、これを放棄するようでは主権国家とは言えない。文在寅政権当時、韓国の安保主権を放棄する裏合意や約束があったのか今からでも明らかにすべきだ。