32年前の男児“誘拐” 中国当局の“当時の一人っ子政策に沿って行われた措置”で「誘拐ではない」回答に怒りの声 (日テレNEWS 2022/07/05)

中国で32年前に息子を誘拐されたと訴えた女性に対し、中国当局が当時の一人っ子政策に沿って行われた措置であり「誘拐ではない」と回答したとして怒りの声があがっています。

中国メディアによりますと、息子を誘拐されたと訴えているのは中国南部広西チワン族自治区に住む69歳の女性で、1990年、家族で旅行中に突然やってきた男女5人が、当時1歳だった息子を連れ去ったということです。

女性はその後も息子を捜し続け、警察にも誘拐事件として捜査を求めてきましたが、現在も連絡が取れていません

こうした中、女性が先月、改めて地元政府に調査を求めたところ、担当部門が訴えを受理しないと文書で回答したということです。

そして回答の中では、行方不明になった息子が女性の7人目の子どもだったことを理由に挙げ、当時、いわゆる一人っ子政策に伴い、計画外に出産した子どもに対しては「強制的な社会調達が行われていた」とした上で、「子どもを誘拐した行為も記録も残っていない」と説明したということです。

女性のケースについて、「社会調達」が何を示すのか詳細は明らかにしていませんが、誘拐や人身売買を当時の当局が容認していたともとれるため、この回答文書とされる文章がSNS上に投稿されると「政府による人身売買だ」などと怒りの声が殺到しました。

これを受けて、当局が担当者を処分するとともに調査に乗り出すなど、火消しにやっきとなっています


(朝日新聞 2022/07/06)

 中国南部の広西チワン族自治区に住む夫婦が、32年前に起きた子供の連れ去り事件の捜査を地元政府に陳情したことをめぐり、波紋が広がっている。地元政府は人口を抑制する当時の政策に基づき「社会調整」として公的に連れ去ったことを認め、陳情を受理しないと回答したためだ。事態を重く見た上部組織が直ちに関係者を停職処分にする事態に発展している。

 中国メディアによると、同自治区全州県に暮らす夫婦には7人の子供がいる。1990年夏、旅館に宿泊していたところ5人の男女が突然現れ、当時1歳の末っ子の息子を奪い去った。夫婦は今年6月、誘拐・売買事件として捜査するよう陳情した。

 これに対し、地元政府の衛生当局は今月1日、「90年代は計画出産の情勢下で人口抑制を実施しており、計画外で生まれた子供の中から1人を選んで『社会調整』を行ったのは、地元政府の決定だ」と回答。さらに、「子供の行き先についてはいかなる記録も残っておらず、陳情は受理しない」とした。

 「社会調整」がどのような行為であるかの説明はない。ただし、中国の一部の地域では1979~2015年に実施された「一人っ子政策」のもと、当時の地方政府が人口増加を抑えるよう厳しく対応していた事例が指摘されている

 政府の計画以上に子供がいる家庭から子供を奪い、少ない都市の孤児院などに送る事件は、2000年代以降もたびたび報じられている。独自の調査報道で知られる「財新」は11年、湖南省邵陽市で十数人の子供が当局によって連れ去られ、孤児院に送られた後に同じ姓に変えられた事件を報道した。

 5日、全州県政府が「陳情不受理」とする通知書がSNS上で広がると、上部組織の桂林市共産党委員会などが調査チームを派遣。陳情を軽視したとして、衛生局長らを直ちに停職処分にすると発表した。

 長年一人っ子政策を続けてきた中国政府は、少子高齢化社会の到来を受けて、16年にすべての夫婦が2人まで子どもを産めるよう変更。21年にはさらに3人まで産めるよう緩和したが、出産を制限する政策自体は維持している。

 今回の桂林市党委などによる素早い対応は、習近平(シーチンピン)国家主席が社会の安定につながる陳情制度を重視していることも背景にありそうだ。習氏は3月、党幹部候補への演説で「陳情を通じて大衆の要望をはっきりつかみ、より良く奉仕しなければならない」と訴えている。(北京=冨名腰隆)