(朝日新聞 2022/01/30)

 また朝鮮半島がきな臭くなってきた。北朝鮮がミサイル発射をやめない

 長期計画に沿った兵器開発というが、政治的思惑、とりわけ3月に迫った韓国大統領選への北朝鮮式関与でもあるだろう

 米国との対話が進まず、経済苦境に立つ北朝鮮は、韓国で次も対話重視の左派政権が誕生するのを切望しているはずだ――。こんな見立てが一般的だが、必ずしもそうとは限らない

 北朝鮮はこれまで韓国の大型選挙前後に「北風」と呼ばれる軍事挑発を繰り返してきた。現在の文在寅(ムンジェイン)氏が当選した前回大統領選の前も、主に短距離弾道ミサイルを相次ぎ発射した。

 北風だけが選挙の帰趨(きすう)を決めるわけでは当然ない。それでも、緊張が高まり、有権者が反発すれば強硬論を掲げる右派に、事態を鎮静させたいとの思いが強まれば左派に有利に働く、との指摘がなされてきた。

 北朝鮮が意図するところは何か。かつて左派政権で対北政策を担ったベテランの実務者は、こんな仮説を立てた。「北が南の政権に求めるのは結局、米国との関係改善に使い出があるかどうかだけではないか」

 韓国の左派政権は常にジレンマを抱えてきた。北朝鮮を引きだそうとするのなら米国と緊密な関係を築く必要があるが、そのためには時に厳しい圧力政策にも同調せねばならず、すると南北が停滞してしまう。

 仮説は韓国のみならず、たとえば日本にもあてはまるかもしれない

 文氏が当選した17年、日本では、身内びいきの森友・加計学園の疑惑が広がっていた。北朝鮮はミサイルに加え、核実験まで強行。当時の安倍首相は北朝鮮の脅威を「国難」だと叫んで衆院解散に踏みきり、結果として自身が難を逃れた。

 あちらの目に安倍氏は、使い出あり、と映ったか

 北朝鮮とて中国には配慮し、北京五輪前に挑発行動をやめるだろうとの期待もあったが、少なくとも現時点までは収まっていない。

 北朝鮮がいらだつバイデン米政権は支持率が低迷、背後にはトランプ氏の影がちらつく。米国との関係で有用な韓国大統領は誰か。

 ワイドショーをにぎわせる有力候補たちの泥仕合もいいが、北風の行方もまた別の観戦ポイントである。 (はこだてつや 国際社説担当)