(共同通信 2021/01/01)

【上海共同】中国政府は1日、中国最長の河川、長江(約6380キロ)で10年間の全面禁漁措置を始めた。深刻な水質汚染で漁獲量が激減しており、資源保護が目的だ。ただ、失業する漁師は30万人規模に上るとされ、生活保障が課題となる。

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▲使われなくなった漁具を処分する作業員=2020年12月27日、中国江西省九江市(共同)

 禁漁の対象は長江主流のほか、主な支流や流域の湖にも及ぶ長江は淡水魚の一大産地として名をはせてきた。固有種も多く、地元の料理店などで人気だった。一方、乱獲のほか、工場や住宅の排水による生態系の悪化も指摘されてきた。

 農業農村省によると、1954年に年間約43万トンだった漁獲量が、近年は10万トン未満に激減した。


(読売新聞 2020/12/28)

 中国政府は来年1月1日、中国最長の河川である長江(全長約6300キロ・メートル)で10年間の禁漁措置を始める。急減している漁業資源の保護を理由とし、流域で働く漁師計約30万人に失職を迫ることになる。漁獲減の根本的な原因とみられているダム建設は続いており、禁漁の実効性に疑問も出ている。(湖北省荊州 南部さやか)

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 中国の農業農村省の当局者は今月15日、記者会見で禁漁について、長江の魚種が「枯渇に近付いているため」と説明した。中国政府が2013年に公表した報告書によると、長江上流で生息する魚種はかつての143から17に減った。国営新華社通信は、年間漁獲量が1954年の約43万トンから10万トン未満に落ち込んだと伝えている

 長江の魚の繁殖周期は3年前後とされる。禁漁期間の妥当性について中国政府は「10年間に3回の周期を経れば資源は倍増する」と主張する。

 中国政府は漁獲減の背景として、流域生態系の破壊が進んだことを認める。その上で生態系破壊の主な原因として、乱獲、水質汚染、ダム建設などを挙げる。今回の禁漁は乱獲に対応した措置と言える

 専門家の間では、流域で多数建設されてきたダムが最大の原因との見方が有力だ。09年には水力発電などを目的とする世界最大級の三峡ダムが完成した。現在も、長江上流で三峡ダムに次ぐ規模の大型ダムが建設されている

 三峡ダムから約150キロ・メートル下流の湖北省荊州の漁村では、50歳代の元漁師男性が本紙に「ダム建設後、魚が取れなくなった」と明かした。中国政府にとってダム建設は、再生可能エネルギー拡大の国家戦略に基づく重要政策で、長江の生態系回復の妨げになるとみられる。ドイツに在住する中国出身の水利専門家、王維洛氏はダム建設について「環境を破壊する時代遅れの方法だ」と批判する。

 禁漁に伴う漁師の失業も大きな問題だ。農業農村省によると、流域では禁漁措置の実施を控え、漁師約23万人が既に廃業し、漁船11万隻が廃船となった。中国政府は廃業者らに計約200億元(約3170億円)の補償金を支給し、転職を支援していると訴える

 実際は転職は簡単ではない。江蘇省揚州の漁村では、漁船数隻が草むらに放置されていた。ある漁師は「漁師の多くはこの仕事しか知らない。字も読めないんだ」と話した


(CNS(China News Service)/AFPBB News 2020/07/21

 中国政府は2021年1月1日から、環境保護のため長江(Yangtze River)流域の重点水域で10年間の禁漁を実施する。実質、全面的な禁漁措置で、30万人の漁師が転職する「前代未聞」の措置となる。今年1月から先行して始まった水生生物保護区332か所での禁漁は全体的に順調だが、一部では違法漁業が続いているという

 農業農村部の于康震(Yu Kangzhen)副部長は15日の定例会見で、「禁漁と漁師の転職は、悪化する長江の生態環境を改善する重要な措置だ」と強調した。この政策で10万隻以上の漁船が操業停止となり、30万人の漁師の職種転換と生活保障が必要なため、于氏は「前代未聞の規模となる」と話した。

 于氏によると、今年1月以降ですでに8万隻の漁船が停止し、10万人の漁師への転職支援や生活保障を段階的に行っている。上海市、江西省(Jiangxi)、雲南省(Yunnan)などは計画を繰り上げて実行している。

 一方で于氏は「地域によって廃船措置や漁師の転職支援の進み具合にばらつきがある上、違法漁業が顕著な地域もある。違法行為の組織化、分業化の傾向もみられ、計画通りに禁漁を実現するのは難しい面もある」と明らかにした。

 農業農村部は今後、関連部門や長江沿岸の自治体と連携し、廃船措置や漁師の転職、補償を積極的に進めると同時に、違法漁業や漁獲物の違法販売の取り締まりを強化していく。
(東方新報/AFPBB News 2020/07/25

 中国の母なる河・長江(Yangtze River)の魚が年々減少するなか、昨年から農業農村省と財政部は「長江流域重点水域禁漁・保障制度実施方案」を打ち出し、今年から本格的な長江禁漁がスタートしている。だが、密漁根絶までの道は遠く、レストランでは今なお、長江の希少な魚が提供されている。

 農業農村部などが出した「方案」によれば、長江の本流と重要支流で2020年末までに全面的に10年にわたる禁漁を実施する。沿岸の漁村ではこの方案に従って、禁漁規則が導入され始めている。

 この禁漁令施行に当たって、当初重視されたのは漁民の保障問題だ。だが漁民は高齢化が進んでおり、船などの資産売却費なども合わせれば、おおむね引退漁民の生活の保障工作は順調なようだ。工人日報(Workers' Daily)によればこのほど長江沿岸の漁村、重慶市(Chongqing)永楽鎮(Yongle)陳家村(Chenjiacun)のある漁民が14.5万元(約222万円)の禁漁保障を受け取った。この漁師は「長江にも休息が必要だ。禁漁令が出たことは、私の人生の転機になった」と禁漁への理解を示した。

 だが、鮮魚の販売を行う農貿市場などでは、その後も「長江鮮魚」の販売が続いている。禁漁令が施行されても、市場で需要があるため、一部漁民以外の人間も含めて、珍しい長江の魚や水生生物を密漁して販売しているのだ。中には違法な電気漁を行うケースもある。しかも一部密漁者は地元の法執役人と結託しているという。

 長江航運公安局重慶分局によれば今年6月末までに、すでに40以上の違法漁事件を摘発し、80人以上の容疑者を逮捕しているという。漁政部当局はすでに省レベルで長江漁業に対する集中取り締まりを展開し、違法な漁具など1000件近くを押収し、100件以上の違法漁業事件の取り調べを行った。だが、長江における密漁現象はまだ根絶できていない

 密漁は、漁業資源を実際に漁獲する者、運搬輸送する者、そして販売する者などがかかわり、すでに違法利益ネットワークが形成されている。多くの鮮魚販売業者と監督管理当局がそのネットワークに入っている

 ある漁政執法専門員は「個人から個人への販売がこっそり行われており、一部のレストランで今も長江水産品が売られている」と打ち明けた。

 問題の一つは、長江保護の重責を担う漁政部の人材不足だ。江蘇省(Jiangsu)を流れる長江400キロ余りにおいて、密漁取り締まりの資格がある専門員はわずか217人。うちベテランの専門員は100人だ。

 長江魚政の力不足を補うために、江蘇省は引退漁民を漁業資源保護員として雇用し、漁業保護チームをすでに試験的に立ち上げて運用している。重慶では、ハイテク情報機器の活用を強化、監視カメラやドローンによる監視パトロールを重点水域で展開するなど、各地当局が取り締まりへの工夫を凝らしている。

 公安部と農業農村部の合同取り締まりキャンペーンもこのほど展開された。市場監督管理総局のテレビ電話会議では最近、市場で売られる長江水産物の取り締まりについての具体的な対応が議題となった。会議では、日常的に五つの禁止項目について監視管理強化が要請された。長江水産物の加工品生産・購入、各市場での卸売り、飲食店での提供、ネットショップでの販売、メディアでの広告の五項目について、一切を禁止するという。

 絶滅危機種の中華チョウザメやジギョ、スナメリ、ヤマノカミといった珍しい魚や水生生物が生息する長江だが、乱獲と開発の両方で、すでに長江生態系は崩壊の危機に直面している。漁民から市場、広告、末端のレストラン、そして消費者に至るまで長江禁漁の意義と生態保護への理解が浸透しないことには、いずれ長江から魚はいなくなってしまうだろう。