(朝日新聞 2020/12/08)

 沖縄県・尖閣諸島周辺の領海に度々侵入し、活動家を上陸させたこともある香港の団体「香港保釣行動委員会」の船が、老朽化のためスクラップにされることが分かった。尖閣をめぐる対立などで日中関係が悪化した時期は大口の寄付もあったが、近年は資金不足で修繕もままならず、鉄くずを売って借金を返すという

 処分されるのは、全長約32メートルの啓豊2号(54トン)。2013年以降、香港島東部の港に留め置かれたままで、今年11月下旬、朝日新聞の現地助手が確認すると、青と赤の船体は茶色いさびで覆われ、左舷が傾いていた。そばには香港海事当局の船が停泊し、出航しないよう監視していた

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▲解体されることが決まった香港保釣行動委員会の啓豊2号。船体はさびて傾いている。近年は当局から出航の許可が出ず、港に係留されたままだった=11月19日、香港島、朱延雄撮影


 陳裕南・同委員会主席は「船底には水も浸入し、運転できない状態」と話す。委員会は数十万香港ドル(数百万円)の負債を抱え、寄付も減って修理する資金がないという。大口支援者がいなくなって財政的な基盤が揺らぐなか、船の修繕を担当してきた造船所が、スクラップにした鉄くずを売って借金を返済することを提案。委員会側も受け入れたという。

 幹部によると、委員会は05年に中古のトロール漁船を購入。尖閣諸島(中国名は釣魚島)の領有権が中国にあると主張するため、尖閣周辺を目指して再三、出航を試みてきた。

 12年8月15日には活動家を乗せた同号が尖閣周辺の日本の領海に侵入。日本の巡視船が放水などで進路を変えるよう警告したが、7人が泳いで魚釣島に上陸を強行し、船内にいた活動家を含む計14人が出入国管理法違反(不法上陸など)で逮捕された

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▲2012年8月15日に尖閣諸島周辺の日本領海に侵入した翌日、石垣島に向け巡視船に引航される啓豊2号=沖縄県・尖閣諸島沖


 当時は石原慎太郎・東京都知事が尖閣諸島の購入計画を表明し、日中関係が緊張していた時期。中国政府に政策提言をする全国政治協商会議の元委員で、同委員会を財政的に支援してきた劉夢熊氏は「12年当時も100万香港ドル(約1300万円)を寄付した」といい、香港政府も出航を実質的に黙認した。

 しかし13年以降、香港海事当局は安全検査が不十分などとして出港許可を出さず、委員会は尖閣への上陸計画の中止を繰り返してきた。外交筋などでは、不測の事態が生じるなどして日中関係が深刻な状態になるのを懸念し、中国政府と香港政府が委員会の動きを抑えたとの観測も出た。13年に委員会と尖閣を目指そうとした中国本土出身の運動家も、中国海警当局から「多くの問題があり、厄介かつ危険だから行かないようにと言われた」と、朝日新聞に語っている。

 同委員会は1996年と98年にも、台湾や香港の活動家を尖閣諸島に上陸させようとしたことがある。これまで計3隻の船を保有してきたが、啓豊2号が解体されれば、委員会が所有する船はなくなる。 同委員会は19日に香港で記者会見を開き、啓豊2号の解体を正式に発表する予定。別の船を購入するため寄付を募る方針という

 委員会の顧問も務めた劉氏は「委員会は今後、写真展や講演活動などを続ける」と話す。委員会は17年、香港の日本総領事館が入るビルの前に慰安婦を象徴する少女像を設置したこともある。(広州=奥寺淳)


これ↓“募金活動”だったんですね。

2018年12月12日
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