尖閣30カイリへ「進入禁止」 中国、休漁明け漁船に 日本との摩擦回避か
(八重山日報 2020/08/16)

【石獅、象山共同】石垣市の尖閣諸島周辺海域で中国が設けた休漁期間が16日に明けるのを前に、東シナ海沿岸の福建、浙江両省の地元当局が漁民に対し「釣魚島(尖閣の中国名)周辺30カイリ(約56キロ)への進入禁止」など、尖閣への接近を禁じる指示をしていたことが15日分かった。漁民らが証言した。中国は尖閣の領有権の主張を強めているが、日本との過度な摩擦を避ける意向とみられる。

 ただ15日には日本の閣僚らが靖国神社に参拝しており、中国の反発は必至。指示が行き渡らない、可能性もあり、予断を許さない状況だ。

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 漁船が多い福建省石獅(せきし)市の船長(52)によると、地元当局は最近、漁民を集めた会議で「釣魚島周辺の30カイリ内に入ることは許さない」と強調した。船長は1~4月に尖閣周辺で操業したが「政治問題は分からない。当局には従う」と話した。

 石獅市の漁港では15日「漁船が敏感な海域に行って漁をするのは厳禁」との横断幕が掲げられていた。同省の他地域でも「敏感な海域で漁をしてはならない」と通知があった

 浙江省象山(ぞうざん)県の石浦港でも、複数の漁師が地元当局から「釣魚島周辺に近づくな」と指導されたと証言。30カイリが目安になっているという。

 漁師(40)は「政府が釣魚島は中国に属すると言っているだけ。実際は日本が支配し、日本のものだ。あまり行きたくない」と話した。衛星利用測位システム(GPS)を使って当局が各漁船を監視するという。

 石浦港の30代の漁師は、以前は軍事訓練を受けた海上民兵が漁船に乗り込み、尖閣周辺で漁もせず中国公船と連携し活動していたと明かした。「1隻当たり1カ月約15万元(約230万円)が支払われた。最近は聞かないが、全ては当局が決めることだ」と話した。

 尖閣周辺では2016年8月、200~300隻の中国漁船が押し寄せ、一部の漁船と公船が領海侵入を繰り返し、日中関係が緊張した。

 中国が尖閣諸島を含む東シナ海で設定した休漁期間は、16日正午(日本時間同日午後1時)に明ける

 日本政府は中国政府に対し尖閣周辺の日本領海に中国漁船が侵入する事態を防ぐよう外交ルートを通じ申し入れていた。


(東京新聞 2020/08/16)

 沖縄県・尖閣諸島や台湾周辺の東シナ海を対象に、中国が設定した約3カ月半の休漁期間が16日に解禁される。中国は台湾海峡周辺で軍事演習を実施するほか、尖閣沖では中国公船が領海侵入を繰り返し、国外に強硬姿勢を示している。ただ今年は、地元漁業関係者には台湾や尖閣に近づかないよう、政府当局から厳しい罰則付きの指示が出ていた。 (中国福建省泉州市で、白山泉)

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 台湾海峡に面した福建省泉州市石獅(せきし)地域の漁港では13日、漁業関係者が出港に向けた準備を進めていた。この漁港から東に約200キロ行くと台湾、そのさらに先には尖閣諸島がある。父がベテラン漁師で、漁船に積み込む氷を販売する男性(36)は、「2015年ごろをピークに魚が減っているが、台湾に近づけば近づくほど魚は多い」と話す。

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▲13日、中国福建省泉州市で、16日の休漁明けに向けて出港の準備をする漁師ら=白山泉撮影

◆周辺国との衝突警戒か

 それだけ魅力的な漁場だが、休漁明けを前に「政府から敏感な海域のラインを越えないよう指示が出ている」という。「敏感な海域」は台湾や尖閣諸島周辺を指しているとみられる。米国との緊張が高まる中、台湾海峡での意図しない衝突の回避や日中関係に配慮する思惑があるようだ

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▲15日、中国福建省泉州市で、漁港に掲げられた「漁船が敏感な海域に行って漁をするのは厳禁」と書かれた横断幕=共同

 男性によると、指示を無視して操業した場合、政府は衛星利用測位システム(GPS)で船舶の位置が特定できるため、港に戻ってから罰金を科される可能性があるという。ただ「台湾は中国だろう。何で行ってはいけない。統一すれば漁もできる」と挑発的に話すベテラン漁師もいた。

 2016年に数百隻の中国漁船が押し寄せ外交問題になった尖閣諸島沖では、今年に入ってから中国公船の領海侵入が相次ぎ、日中関係に暗雲が立ち込めている。

 父の後を継いで5年前に漁師になった20代の男性も今年は「敏感な海域」に行かないよう政府からの指示されていると話した。尖閣に行くかどうか「状況次第」と言うが「今行けば操業免許を剝奪(はくだつ)される可能性もあり、失う対価が大きい」。ただ「政府が行くなと指示しても行く人はいるんだ」という。

 これまでに2回、尖閣沖に出たことがあるという50代の漁師は「釣魚島(尖閣)まで片道で2日かかるが魚もたくさんいる」と話す。尖閣沖では日本のヘリコプターが頭上でホバリングし、甲板に立てず漁ができなかったが、「2カ月間の操業で100万元(約1600万円)をもらった」という。この漁師は報酬の出所を明かさなかったが、政府の国策による出漁だったことをうかがわせた