(毎日新聞 2020/08/07)

 小池百合子東京都知事は7日の定例記者会見で、9月1日に都立横網町公園(墨田区)で市民団体が開く関東大震災時に虐殺された朝鮮人犠牲者の追悼式典に、今年も追悼文を送らない考えを示した。歴代知事は毎年送付していたが、小池氏は2017年以降、送るのをやめている

 小池氏は送付しない理由について、以前から「全ての犠牲者に哀悼の意を示しており、個別の追悼文は控える」としている。7日の会見では「毎年送っていない」と述べるにとどめた。

 小池氏はこれまでの記者会見でも送付をやめた詳細な理由や虐殺への認識について、「さまざまな見方がある」などとして明言していない。こうした小池氏の姿勢に、批判の声を上げる市民もいる

 今月6日には、小池氏に追悼文を送るよう求めるデモが新宿駅前で開かれた。参加した在日コリアンの男性は「歴史を直視するのは恥ずかしいことではない。向き合わないことの方が恥ずかしい。テレビでも本でも(在日コリアンらへの)ヘイトがあふれている今だからこそ、知事が送る追悼文には意味がある」と訴えた。

 ヘイト問題に詳しいジャーナリストの安田浩一さんは「知事は『全ての人に哀悼の意を表したい』と言うが、震災の犠牲者と、震災を生き延びたのに人の手で殺された被害者は全く違う。天災の中に人災を閉じ込めてはいけない」と小池氏の対応を批判した。

 1923年の関東大震災時には、混乱に乗じて「朝鮮人が井戸に毒を入れた」などのデマが拡散。信じた住民らが朝鮮人らを多数殺害した。【南茂芽育】


(東京都 2020/08/07)一部抜粋

【記者】毎日新聞の南茂です。来月の1日(火曜日)に毎年行われております関東大震災で殺害された朝鮮人の追悼式典が今年もありますが、知事は2017年から追悼文の送付を取りやめていらっしゃいますけれども、今年はどうされる予定か、教えてください。

【知事】昨年というか、毎年9月1日(火曜日)にはこの追悼式典が行われているわけでございます。これは関東大震災ということで行われているわけであります。公園の占用許可というのは都が出すことになるわけでございますけれども、これのベースになるのが都市公園法、そして、この都立の公園の条例は同じように都市公園法と東京都立公園の条例などの法令がございます。これに基づいて適切な許可を出しているということであります。

今回、人権尊重条例がありまして、今申し上げた都市公園法、それから都立の公園条例、そして人権尊重条例もそのリーガルな中での1つに柱として考えられることになっております。

今年の9月1日(火曜日)についてどうするのかというご質問だったと思いますけれども、公園管理上の支障となる行為については注意を促す、そしてまた、当日も適切に対策を講じるとの報告を受けているところでございます。これによって、今年の対応とさせていただきたいと考えております。

【記者】それは追悼文は送らないということですか。

【知事】それは毎年送っておりません。

【記者】今年も送らないと。

【知事】はい。


毎年追悼式が行われている都立横網町公園内の追悼碑↓

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【追悼碑】
追悼
関東大震災朝鮮人犠牲者
【追悼碑の下の石版】
この歴史/永遠に忘れず/在日朝鮮人と固く/手を握り/日朝親善/アジア平和を打ち/たてん
藤森成吉
【向かって左の石版】
一九二三年九月発生した関東大震災の混乱のなかで、あやまった策動と流言蜚語のため六千余名にのぼる朝鮮人が尊い生命を奪われました。

私たちは、震災五十周年をむかえ、朝鮮人犠牲者を心から追悼します。

この事件の真実を識ることは不幸な歴史をくりかえさず、民族差別を無くし、人権を尊重し、善隣友好と平和の大道を拓く礎となると信じます。

思想、信条の相違を越えて、この碑の建設に寄せられた日本人の誠意と献身が、日本と朝鮮両民族の永遠の親善の力となることを期待します。

一九七三年九月

 関東大震災朝鮮人犠牲者
    追悼行事実行委員会