(朝鮮日報 2020/08/01)

アン・ヨンヒョン論説委員

 1979年、初めて米国を訪問した鄧小平がテキサス州ヒューストンのある牧場を訪問したときのことだ。馬に乗って走ってきた米国人女性が、彼に白いカウボーイの帽子をプレゼントした。観衆が口笛を吹いて歓迎すると、まるでお礼するかのようにその帽子をかぶってみせた。地元メディアは「テキサス人になった」と書いた。怪物のような共産党指導者ではなく、普通の米国人と似ているという印象を与えたのだ。同年末、中国はヒューストンに最初の総領事館を開いた

 米中友好の象徴とも言えるこの総領事館を米国が閉鎖した。米中関係に根本からてこ入れするというわけだ。米国は「中国共産党」そのものに手を加えようとしている。国務・法務長官やホワイトハウスの安保補佐官、FBI(連邦捜査局)局長らが、まるで口裏を合わせたかのように習近平国家主席を「主席」(President)ではなく「共産党総書記」(General secretary)と呼んでいる。中国全体の代表ではなく、共産党の首長にすぎないといった意味だ。中国を非難する場合は、その対象を「中国共産党」と特定している。14億人の中国国民と9000万人の共産党員を分離するというのだ。「米政府が中国共産党員および家族の入国を禁止することを検討中」としたニューヨーク・タイムズの報道は尋常でない。

 中国共産党は1921年、毛沢東ら13人が集まって結成された。党員は53人にすぎなかったが、当時の中国国民の90%が「自分の土地」を望んでいるという民衆の心を正確につかむことで、国民党との内戦で逆転勝利を収めた。独裁と暴政をほしいままにしながらも、「水(民心)が船(権力)を転覆させる」という歴代王朝の教訓は忘れなかった。人民を水、党員を魚に例えながら、民衆の心を重視するのが中国共産党の伝統となった。

 マイク・ポンペオ国務長官が「中国共産党の行動を変えるのは中国人だけの任務ではない」と宣言した。「韓国が中国の変化を誘導しなければならない」とし、習近平国家主席を「破産した全体主義信奉者」と規定した。まるで中国共産党との決別でも宣言するかのようなレベルだ。共産党が支配する中国を正常な国家と認めないという意味にも捉えられる。「私たちが中国を開放し、フランケンシュタイン(怪物)を生み出してしまったのではないか」と演説したニクソン元大統領の約40年前の語録まで引っ張り出している。4カ月後に迫った大統領選挙用といったニュアンスも与えるが、大統領選挙で終わらない可能性もある

 来年には中国共産党創党100周年を迎える。共産党指導部は、国民に対し「平穏で豊かな社会」という約束を守らなければならない。しかし、コロナ禍で経済は最悪の状況を迎えている。洪水により「三峡ダムの崩壊説」もうわさされている。さらに米国は、共産党と国民を引き離すために攻撃を加えている。中国共産党が四面楚歌のようなこの危機をどのように克服するのか見守りたい。


(デジタルタイムズ 韓国語 2020/08/05)

パク・ヨンソ論説委員

『総書記』は中国共産党中央委員会総書記の略称だ。中国は政府ではなく共産党が政府行政組織である国務院を指導する党優位の指導体制を採択している。したがって、憲法上の国家元首である国家主席ではなく、共産党の総書記が事実上、中国の最高指導者だ。(略)

最近、マイク・ポンペオ,アメリカ国務長官の演説が波紋を起こしている。彼は『中国共産党と自由世界の未来』という主題の演説で「習近平[シー・ジンピン]総書記が破綻した全体主義思想の信奉者という点を私たちは留意しなければならない」と非難した。彼は演説で、中国政府の代わりに『中国共産党』という表現を使い、習近平を国家主席でなく『総書記』と呼んだ。習近平が中国の国家指導者ではなく、中国共産党の領袖という点を強調したのだ

これまでアメリカと中国の間には一つの暗黙的了解があった。それは中国をいくら非難しても習近平個人は非難しないということだ。毒舌家トランプ大統領も中国を過激に批判をしても「プレジデント(国家主席)習とは友人」と付け加えるのを忘れなかった。何が違うのかと思うかも知れないがこれは大きい違いだ。日本を批判することと日王個人を批判すること、北韓[北朝鮮]を批判することとキム・ジョンウン[金正恩]委員長個人を批判することとは大きな違いだ。ところが今回、その『線』を越えた。

ついにトランプ政権が総書記に代表される中国共産党体制それ自体を標的とした。8年にわたる習近平総書記の政治成果をすべて否定したわけだ。米中対立は新たな局面に入った。米中新冷戦が正式に公表されたのだ。(機械翻訳 若干修正)