(朝日新聞 2020/08/05)

 川崎市の「人権尊重のまちづくり条例(差別禁止条例)」が7月1日に全面施行されてから1カ月。特定の民族への差別や排除をあおるヘイトスピーチに刑事罰を科す全国初の条例は、実際にヘイトスピーチをなくすことができるのか。施行後の動きを追った。

 条例施行から11日後の7月12日午後。日曜日とあって買い物客がひっきりなしに行き交うJR川崎駅東口で、その街頭演説会は行われた。

 「私の発言が本当にヘイトスピーチなのかどうか。川崎市の職員は録音して、審査会にかけて頂きたい」

 最初に演説した日本第一党の瀬戸弘幸最高顧問は、こう挑発した

 日本第一党は「国防を国民の義務に追加」「外国人参政権付与に反対」「外国人への生活保護廃止」などを掲げている政治団体だ。党首の桜井誠氏は7月の東京都知事選に立候補して、約18万票を獲得した。

 この日の演説会は党が開いたものではないが、瀬戸氏はこれまでも、市内の演説会などで持論を発信してきた

 会場には混乱を避けるための柵が設けられ、多数の警察官が並んだ。柵の外側では数十人が、「ヘイトスピーチを許さない」「ヘイトは犯罪」などのメッセージが記されたカードを掲げて抗議の声をあげた。周辺では、川崎市に条例制定を求める活動をしてきた市民団体が、施行された差別禁止条例を説明し、ヘイトスピーチを批判するチラシを配っていた。

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▲条例施行後、JR川崎駅前で行われた街頭演説に対し、「ヘイトスピーチを監視中」などと記されたプラカードを掲げて抗議する人たち=2020年7月12日午後2時16分、川崎市川崎区、大平要撮影

 約1時間半に及んだ演説会では、瀬戸氏を皮切りに十数人が発言。「条例は日本人差別だ」「生活保護でも日本人が後回しになっている」などと訴えた。抗議の声に憤慨し、「うるせー、お前ら帰れ」と声をあげた演説者の肩を、主催者の男性が軽くたたいて落ち着かせる場面もあった。

 川崎駅前ではこの数年、こうした演説会がたびたび開かれてきた。ただ、演説の声をかき消すために抗議側が鳴らしていたサイレンの音が、この日はなかった。参加者の一人に聞くと「川崎市職員が演説を録音するのを邪魔しないため」だという

 この日、川崎市は職員数人を投入し、差別禁止条例に抵触する発言があった場合に備えて演説を録音した。1週間前、「同じ主催者が開いた街頭演説会で、外国人差別の可能性がある発言を確認したため」(市の担当者)だ。

 7月17日、福田紀彦市長は定例記者会見で12日の街頭演説について質問を受け、こう答えた。「私が報告を受けている範囲では、12条に違反する発言はなかった」

◇「なかった」発言、市民ら警戒

 川崎市の差別禁止条例の12条は、処罰の対象となる行為について定めている。日本以外の国や地域を特定し、その出身者であることを理由にした差別的言動を、拡声機などいくつかの手段で発信した場合が対象となる=「条例のしくみ」参照。また、市が3月に公表した解釈指針では「○○人を川崎からたたき出せ」「○○人を殺す」など、具体的な言動の例も示した。

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 処罰対象を明示したのは、権力の乱用を防ぐためだ。福田市長は、7月17日の会見で「条例に規定している(処罰までの)プロセスをしっかり運用していくことが何よりも、この条例の正当性を伝えていくことになる」と、刑事罰に向けた手続きはあくまで慎重に進める考えを繰り返した

 この会見から3日後、川崎市内にある施設の会議室に、日本第一党最高顧問の瀬戸氏がいた。集まった支持者らに、関係者が提起した裁判について報告した後、話題は12日の演説会に移る。

 「ヘイトはなかったと、福田市長は言った」

 そしてこう続けた。「これからみなさん、不法滞在者は出ていけ、不法占拠者は立ち退けと言っても(条例違反で)やられることはない。次はもう少しエスカレートさせる」

 市の「条例違反の演説はなかった」との発信に、市民団体「ヘイトスピーチを許さないかわさき市民ネットワーク」のメンバーは危機感を募らせる。事務局の山田貴夫さんは「記者会見の発言が独り歩きすると誤解を与え、ヘイトをやってきた側に勢いを与えてしまう」

 12日の演説でも「生活保護で外国人が優先されている」など、差別をあおる「デマ」にあたる発言があったのではないかと山田さんは指摘する。市民ネットワークは30日、市と市議会の各会派に、12日の演説がヘイト行為にあたるかどうか、市の「差別防止対策等審査会」メンバーの意見を聴くことなどを求める申し入れを行った。

 川崎市にヘイトスピーチ対策を求めてきた在日コリアン3世で、自身もインターネット上での誹謗(ひぼう)中傷などを受けてきた崔江以子(チェカンイヂャ)さんは「演説する人たちが言葉を選んでいたのは、条例の抑止効果だとは思う。条例は始まったばかり。市には毅然(きぜん)としたメッセージを出して欲しい」。

 条例の目的は、あらゆる「不当な差別」のないまちづくりを目指すことで、刑事罰は、差別解消のための手段の一つだ。福田市長は17日の会見で「条例でもって差別が全てなくなるという、そんな世の中ではないと思っている。しかし、それをめざし、教育や啓発に努めていく」とも述べた。

 12日に演説会を開いた団体はすでに、9月後半に次回の演説会を開くと告知している。(大平要)

     ◇

 〈川崎市のヘイトスピーチ問題〉 市内では、在日コリアンらを標的とするデモが、2013年ごろから繰り返されていた。15~16年にかけて行われたデモは、国がヘイトスピーチ対策(解消)法をつくるきっかけになった。福田紀彦市長は、17年の市長選で差別を禁じる条例の制定を掲げて再選を果たし、市議会は19年12月に刑事罰を盛り込んだ条例案を可決した。条例の全面施行後の7月12日にあった川崎駅前の街頭演説会では、15~16年のデモの参加者もマイクを握った。


17日の記者会見↓。『幹事社』がどこかは書いてありませんが、神奈川新聞と思われます(かなり長いです)。

 川崎市長記者会見記録 一部抜粋
日時:2020年7月17日(金)14時00分~14時51分
場所:第3庁舎18階 講堂
議題:市政一般 

≪川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例関連について≫

【幹事社】 引き続き、幹事社です。よろしくお願いします。12日の川崎駅前での街宣ですけれども、当日現場にいらした人権団体の人たちは取材に応えていただいて、発言に気をつけているようだった、また、市民の協力もあって、それには感謝しているということをおっしゃっていただきましたけれども、抑止を含めて、差別をなくしていくという条例の効果というものが見て取れたなと思っておるわけですけれども、その一方で、朝鮮学校に対するのぼり旗が立てられて、それについては、韓国の領事館もあれはデマなんだということを明言しているわけなんですけれども、学校の関係者が被害を訴えて、条例に基づいて子どもたちを守ってほしいと言っているように、あの場で差別があったことは明らかだと思うんですけれども、12日の街宣において、条例の効果があった部分と課題についてお感じになられているところがあったら教えてください

【市長】 条例の効果がどの程度あったのかというのは非常に難しい判断かなとは思います。それぞれに発言される方、集会を持たれた方というのは発言に気をつけられたのかなとは思いますけれど、それが抑止効果だったのかどうなのかというのはなかなか判断は難しいかなとは思いますけれど。

【幹事社】 一方で、明らかに差別を煽動するメッセージがのぼり旗として掲げられていたと思うんですね。それについては……。

【市長】 私も御紙の写真を見て、これ、何の法律という、韓国の法律だという話で、ですから、韓国の法律に違反しているか、してないかというのは、はっきり言って私たちにとっては何の関係もないということなので、それについて特にコメントはないですね

※参考 のぼりには「朝鮮学校は国家保安法違反」(クリックで拡大)。
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【幹事社】 そうですね。やっぱりなかなか一般に、あののぼり旗を見て、あれがどういうメッセージを発信しているかというのは、とりわけ僕らマジョリティーの側は分かりにくいと思うんです。しかし、やはり朝鮮学校の子どもを預かっている先生たちからすると、あれが差別の言葉で、あれに大変傷つき、恐怖しているということを……。

【市長】 どこがですか。のぼり旗がですか。

【幹事社】 のぼり旗の文言ですね。それは記事にも書きましたけれども、あれは、つまり、差別を煽動するもの、子どもたちに差別の目を向けさせるものだと受け取るわけですよね。マジョリティーである我々はなかなかそれに気づかないけれども、やはり被害の当事者、差別の当事者というのは、ああいうメッセージに傷つくわけですね。なるほど、その判断はなかなか難しいわけですよね。ですので、審査会という、専門的な知識を持った人たちの会も設けられていると思うんですけれど。

【市長】 まず、私が報告を受けている範囲では、12条に規定しているものの発言はなかったと聞いていますし、また、今言われているのぼり旗については、ある意味、意味不明なものですよね。意味不明なものに対して、あれがいいとか悪いとか、そういうことを言う立場では私はないなと思っています

【幹事社】 しかし、それを見た朝鮮学校の関係者、当事者の人たちが、あれはもう二度と出してほしくないんだと、あんなもの子どもたちに見せられるわけがないと言っているわけですよね。それは、差別による被害がそこに生じているということだと思うんです。それは、例えば、はっきり12条の違反の文言ではなかったとしても、12条で規定されているものというのは、対象になっているものは大変限られているものですよね。だからといって、それはあくまでも刑事罰の対象にしていくものであって、それに当たらないからといってヘイトスピーチがなかったことにはならないし、条例に違反しているということにもならないし、すみません、1つだけ。そもそもこの条例が、市長もこれまでもおっしゃっていましたけれど、あくまでヘイトスピーチの条例じゃなくて、差別をなくしていくための条例だというものが最大の精神なわけですよね、目的なわけで。そういう意味では、あそこの12条に違反する違反しないだけではなくて、やはりそこに差別があったのかということをきちんと見て、それは禁止していくんだ、なくしていくんだという、そういうメッセージを条例にのっとって発信していくことが大切なんじゃないかと思うわけですけれども、いかがでしょうか

【市長】 今回の条例で恣意的な判断、あるいは過剰に表現の自由を抑制しないためにも、やはり構成要件だとか具体的な文言だとかを規定してやってきたということでありますから、そこは極めて慎重に扱わなくちゃいけないことだと思っています。ですから、ある意味、朝鮮学校と何とか法という韓国の法律を抱き合わせて違反だと言って、はっきり言って、これは意味のない言葉ですよね。全く意味が分からないと

【幹事社】 そう。それはマジョリティーの我々にとっては意味がないけれども、当事者のマイノリティーにとっては大変な恐怖であり、大変に傷ついていることです。

【市長】 意味のない言葉というか、何ていうんですかね、繰り返しになって恐縮ですけれども、朝鮮学校という言葉と韓国の法律を組み合わせて違反だということを言っていて、誰を対象にしているかも分からず、韓国に言っているのか、何のことを言っているのか分からないものを、あれは差別だということを言われると、その範囲は、あらゆる広範にわたってということになりかねないというのは、それは明らかに表現の自由のところに抵触してしまう。ゆえに、今回の条例の範囲を幅広く無制限に拡大させる可能性もあると思います。

【幹事社】 審査会が設置された意味というのは、恣意的な判断を防ぐということがあるわけですけれども、一方で、表現の自由を過度に規制してはいけないということがあるわけで、設置されているのは理解していますけれども、やっぱり一方で、行政だけの判断が逆に対象をより狭めていくということも、それも恣意的な判断だと思うんですね。そういう意味では、これはインターネットの、この間の初めての審査会の場でも委員から指摘がありましたけれども、職員だけで判断することがやっぱり難しさというものがあそこで示されたと思うわけですよね。それは、なかなか専門的な知識もないし、トレーニングも受けてなければ、何がヘイトスピーチに当たるかということの判断というのは……。

【市長】 そもそもそれを言ってしまうと、条例の構成そのものを根底から覆すような話になってしまいますね。要するに、恣意的な判断を、まず要件というものをしっかりと規定した上で、それで12条に抵触するものについて、私、市長が判断して審査会にかけるという、このプロセスをしっかり大切に運用していくことが何よりも大事であって、むしろ審査会の人たちが、あれはどうだ、これはどうだということをやり始めると、そんなことは条例がそもそも規定していないものです。

【幹事社】 そういうことではなくて、僕は12条のことだけを今言っているわけではなくて、審査会については、差別をなくしていくという条例の目的に必要な場合は意見を言うことができるという18条にも書いてありますから、今僕が言っているのは、12条の細かい部分ではなくて、もっと広く差別とは何なのかということを判断がなかなか難しいものだと思いますから、それは審査会のメンバーの意見などを聞いたりしながら、その判断の仕方だとか、どういう考え方をしたらいいんだろうかということを議論していくことは、差別をなくしていく上で、この条例にかなったものだと思うんですけれども、そうすることが市長のおっしゃっていたように、差別をなくしていくまちづくりというのは、行政だけがやるものでもないし、誰かがやるだけのものでもなくて、市民がみんなで取り組んでいくものなんだということを説明されていたと思うんですけれども、審査会のそういう意見なども、あの場で議論しながらオープンに議論していくということは条例にかなっていることではないかなと思うわけです

【市長】 御意見として承ります。 

【記者】 そうすると、12日の街宣に関しては報告をお受けになっている範囲では、13条の勧告の手続に移るものではないというふうに御判断なさっているということでしょうか

【市長】 そうです

【記者】 もうそれは決定という、市長の判断として決定ですか

【市長】 そうです、はい 

・この記録は、重複した言葉づかい、明らかな言い直しや質問項目などを整理した上で掲載しています。
(お問合せ)川崎市役所総務企画局シティプロモーション推進室報道担当
 電話番号:044(200)2355


さすが神奈川新聞(?)・・・

ヘイトかどうかは在日韓国・朝鮮人にジャッジさせろということですね。