(八重山日報 2020/06/23)

 石垣市議会(平良秀之議長)は22日の8月定例会最終本会議で、尖閣諸島の字名を「登野城」から「登野城尖閣」に変更する議案を賛成多数で可決した。字名変更は10月1日から効力を生じる。野党は「台湾との友好関係がおかしくなる」(長浜信夫氏)などと周辺諸国への配慮を理由に反対した。与党は尖閣諸島周辺海域で中国公船が領海侵入を繰り返している現状を挙げ「現実を直視してほしい。周辺諸国から、とやかく言われる筋合いではない」(仲間均氏)と指摘した。中山義隆市長は可決後、報道陣の取材に「政治的な意図はない。行政手続きの範疇(はんちゅう)だ」と述べた。

○市長「政治的意図ない」

 採決では、野党が次々と反対討論。「日本は、クロマグロの漁獲枠を台湾から譲ってもらっている。漁業関係者は『これ以上波風を立てないで』と言っている」(宮良操氏)、「市民がないがしろにされている。政府与党関係者の希望に沿う字名変更だ」(内原英聡氏)、「台湾の皆さんが遺憾の意を表している。デメリットが大き過ぎる」(大濱明彦氏)などと訴えた「行政事務の問題というのはこちらの考え方。先方はそう受け止めていない」(新垣重雄氏)という声もあった。

 与党は賛成討論で「国の主権に関わることは、一切他国に配慮する必要はない。漁業者も心配ないと言っている」(長山家康氏)、「日本は遠慮せせず意見を言えるようにしてほしい」(友寄永三氏)と主張。公明の石垣達也氏は、字名変更に賛成した上で「トラブルの火種にしたり、国境問題に絡めてはいけない」と注文をつけた。

 採決では与党全員と野党の砂川利勝氏の13人が賛成、他の野党8人が反対した

 石垣市の動きを受け、台湾ではこれまでに、北東部の宜蘭県の議会が尖閣諸島の台湾名「釣魚台」を「頭城釣魚台」と変更することを県政府に求める議案を可決した。

 字名変更について菅義偉官房長官は8日、「市町村が議会の議決を得て行うべき事項」、玉城デニー知事は12日、「市町村の自治事務なので、石垣市において決定される」とそれぞれ述べ、市の決定を尊重する意向を示している。

◇菅氏「地方自治法の事項」

 石垣市の尖閣字名変更

 菅義偉官房長官は22日の記者会見で、石垣市議会が市の行政区域に含まれる尖閣諸島の住所地の字名を変更して「尖閣」を加える議案を可決したことについて「変更は地方自治法において、当該市町村の長が議会の議決を経て行う事項だ。政府としてコメントすべきではない」と述べた。国内法の規定が適用されると表明することで、領有権を主張する中国、台湾をけん制した形。同時に、中国と台湾に対し、新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた連携が重要だとして「協力に影響を与えないためにも、懸案に対する前向きな対応を求めていきたい」と協調した。


尖閣字名変更 中国「違法で無効」と反発 台湾は平和的解決訴え
(八重山日報 2020/06/23)

 石垣市議会が22日、尖閣諸島の住所地の字名を変更する議案を可決したことに対し、尖閣諸島の主権を主張する中国政府は強く反発し、対抗措置も辞さない構えを示した。一方、同様に主権を持つと主張する台湾は、中国当局による尖閣諸島周辺での活動が石垣市による字名変更を引き起こしたとの見方を示した。

 中国外務省の趙立堅(ちょう・りつけん)副報道局長は22日の定例記者会見で「断固とした反対」を表明。議案可決は「中国の領土主権への重大な挑発で、違法かつ無効だ」と述べ、主権があると改めて強調した。

 外交ルートを通じて日本へ厳正に申し入れたとし「さらなる対応を取る権利を保留している」とも述べた。

 台湾総統府の報道官は22日「中国の公船が長期にわたって関係海域で漁民の活動を妨害していることが、今回の事態を引き起こした」との認識を示した

 報道官は「釣魚台(尖閣諸島の台湾名)は中華民国(台湾)の領土だ。一方的な行動で、この事実は変えられない」との立場を表明した上で「争いを棚上げして共同開発」するとの原則に基づき、平和的な解決を目指すべきだとした。

 台湾の外交部(外務省)は日本側に「遺憾と厳正な抗議」を申し入れたと発表。「東シナ海の平和と台日友好への悪影響を避けるため」日本側に理性的な対応を取るよう呼び掛けた。