(中央日報 2020/06/04)

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の妹である金与正(キム・ヨジョン)労働党第1副部長が4日、脱北者団体のビラ散布に関連して「南北軍事合意の破棄の覚悟をしておけ」と警告した。この日、労働新聞(2面)を通じて発表された「南朝鮮当局の黙認のもと、脱北者ゴミたちが反共和国敵対行為を敢行」という題名の金与正氏個人名義の談話でだ。

金与正氏は「私はもともと、悪いことをする奴よりもそれを見なかったふりをしたりそそのかしたりする奴のほうが嫌いだ」とし「あちら側の地域(南側)でこのように低劣で汚い敵対行為が容認されるということが理解できない」と主張した。先月31日、一部の脱北者団体が休戦ライン付近でビラを散布したことに対する反発だ

金与正氏の対南非難は3月3日に青瓦台(チョンワデ、大統領府)に対して「低能だ」と主張してから93日ぶりのことだ。金与正氏は北朝鮮の超大型放射砲発射に対して韓国政府が遺憾を表明すると、これに反発する談話を出した。当時は朝鮮中央通信を通じて談話を発表したが、今回公式官営メディア「労働新聞」を通じて立場を出したのは異例ともいえる。それだけ北朝鮮がビラ散布を重大なこととして受け止めているという傍証という評価だ

建国(コングク)大学統一人文学研究団のチョン・ヨンソン教授は「北朝鮮が対南宣伝メディアではなく労働新聞に掲載したという点は、今回のビラ散布を金正恩国務委員長が署名した南北共同宣言に関連して、休戦ライン地域での軍事的緊張緩和違反と見なして正面対抗するという意図があると考えられる」と分析した。

実際、金与正氏はこの談話の中で、北朝鮮の今後の措置に対して具体的に言及した。「もし~(なら…)になるか(もしれない)」という条件節を使ってはいるが、昨年明らかにした金剛山(クムガンサン)観光施設の撤去に続き、開城(ケソン)工業団地の撤去、南北共同連絡事務所の閉鎖、南北軍事合意破棄などがそれだ

前職高位級当局者は「ビラ散布は以前の政府でもあった事案」としながら「国防委員会ではなく金与正個人名義で発表したのは、今後、軍事的行動に対する名分を立てるとともに南北関係で自身の地位を示そうとする意図があるかもしれない」と評価した。

談話で「私は」という表現を使ったことも同じ脈絡だ。北朝鮮大学院大学の梁茂進(ヤン・ムジン)教授は「今回の事案は軍部からメッセージが出てくるべきものだが、金与正が直接出てきたのは一種のメッセンジャー役を果たしたと考えられる」とし「一層地位が強化された金与正の声を通じて、断固たるトーンで対南圧迫に出た」と分析した。

今年、韓半島(朝鮮半島)平和体制の構築に心血を注いでいる韓国政府は北朝鮮の「軍事合意破棄」カードに注目している。文在寅(ムン・ジェイン)政権発足後、一つひとつ積み上げてきた努力が一気に崩れかねないためだ。

政府当局者は「韓国政府は平和体制の構築と非核化を通した恒久的な韓半島の平和を追求している」とし「2018年9・19平壌(ピョンヤン)共同宣言の下位概念として採択した軍事合意書の履行が優先されなければならない」と強調した。

加えて北朝鮮が開城工業団地の閉鎖を公式に言及したという点も注目される。金委員長は昨年10月、金剛山を訪れて「南側が作った建物をすべて撤去しろ」と指示したことに続き、南北協力事業で重要な役割を担ってきた開城工業団地閉鎖に言及することによって北朝鮮が対南不満程度を高めているという評価だ。

米朝対話の進展とは別に、今年南北関係改善を推進中の政府は直ちに反応した。統一部は金与正氏の談話発表から約4時間後、予定になかった記者会見を通じて、南側団体の行動自制を要求する立場を発表した

統一部の呂尚基(ヨ・サンギ)報道官はこの日の記者会見で「ビラ散布が境界地域の緊張要素につながった事例に注目し、何回もビラ散布中断に対する措置を取ってきた」とし「境界地域の国民の生命と財産に脅威を招く行為は中断されるべきだ」と明らかにした。

呂氏はまた「政府はこのような状況を総合的に考慮し、境界地域における緊張造成行為を根本的に解消できる実効性のある制度改善方案をすでに検討している」と付け加えた。


(聯合ニュース 2020/06/04)

 韓国統一部の呂尚基(ヨ・サンギ)報道官は4日の定例会見で、北朝鮮が問題視している韓国国内の北朝鮮脱出住民(脱北者)団体による北朝鮮に向けた体制非難のビラ散布について、「(南北)境界地域の国民の生命と財産に危険を招く行為は中止されるべきだ」とし、強制的にやめさせるための法案を検討中だと明らかにした。(略)


ムン政権に甘い方な聯合ニュースですら法制定は難しいと考えているようですが、ムン政権ですからねぇ。

(聯合ニュース 2020/06/04)

 韓国国内の北朝鮮脱出住民(脱北者)支援団体による北朝鮮に向けた体制非難のビラ散布が、停滞が続く南北関係に再び重大な影響を及ぼそうとしている。韓国政府は南北関係改善へ突破口を開こうと対話を呼び掛けているが北朝鮮は応じず、むしろ脱北者支援団体のビラ散布を取り上げて韓国に圧力をかける格好だ。2018年9月の南北首脳会談の際に締結した南北軍事合意の破棄までほのめかした。

 脱北者団体などが韓国から北朝鮮に飛ばすビラには北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党委員長)をあからさまに非難する内容が含まれ、北朝鮮はこれまでも「最高尊厳」を傷つけるものとして強く反発してきた。

 ところが今回、金正恩氏の妹の金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長が4日に談話を発表し、韓国当局に措置を取るよう迫った。何らかの措置が取られない場合、北朝鮮・開城にある南北共同連絡事務所の閉鎖や南北軍事合意の破棄、南北経済協力事業である開城工業団地の完全撤去などもあり得ると言及した。近ごろ存在感を増している与正氏が厳しい警告に乗り出したことで、停滞する南北関係へのさらなる悪材料を懸念する声が上がる。

 特に共同連絡事務所と軍事合意は文在寅(ムン・ジェイン)政権が誇る南北関係の最大の成果だけに、政府の今後の対応が注目される。

 18年4月に南北首脳が合意した「板門店宣言」には、「軍事境界線一帯で拡声器放送とビラ散布をはじめとする全ての敵対行為を中止し、その手段を撤廃する」と盛り込まれ、韓国政府は関係団体にビラ散布の自粛を呼び掛けてきた

 だが政府にとっては扱いが難しい問題だ。南北関係を優先するなら散布を阻止すべきだが、表現の自由であるため無理には禁止できない。その点を認識していることは与正氏の談話からもうかがえる。それでも同氏は「最悪の局面」もあると警告し、法を制定して禁じるよう要求した

 これは韓国にとって不可能に近いとされる。法の違憲性が問われるのは必至で、保守・進歩(革新)間の溝の深さも踏まえると制定は難しい。18年に発議された、ビラ散布前に統一部長官の承認を義務付ける南北交流協力法改正案も通過しなかった

 ただ、予告なしに散布する場合、韓国の住民保護を理由に警察が制止するケースはあった。14年にビラをくくり付けた大型風船に向かって北朝鮮側から機関銃が発射され、韓国軍が応射し、軍事的な緊張と境界地域の住民の不安が一気に高まるという事例があったからだ。

 韓国の今後の対応としては、警察をより積極的に動員して散布を制止することが考えらえる。韓国・北韓大学院大の梁茂進(ヤン・ムジン)教授は「警察官職務執行法など社会安全関連法などに基づき(ビラ散布を)自粛させることは可能だろう」と述べた。とはいえ、脱北者団体側が事前に計画を知らせず、散布場面も公開しない場合には制止のしようがない


韓国憲法より第1副部長の指示の方が上ニダ♪
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