(日本経済新聞 2020/04/16)

新型コロナウイルスに対する治療効果が期待される富士フイルムホールディングスの抗インフルエンザ薬「アビガン」。政府は備蓄を3倍の200万人分へ増やす計画を掲げるが、通常であれば中国に依存していた原料の国内生産切り替えには時間がかかる。緊急事態の対応で規制緩和など官民を挙げた取り組みを加速する必要がある。

アビガンはウイルスが体内で増殖するのを防ぐ仕組みで、コロナ治療に効果があったという報告がある。政府はパンデミック(世界的な大流行)に備えてアビガンを備蓄していたが、1人の治療にインフルの3倍量が必要ということが分かり、現在の200万人分は70万人分にしかならず、富士フイルムに増産を指示した

アビガンは海外で基本特許が切れており、原料を製造する中国では同じ成分の後発薬の生産も始まった。国内への原料輸入が難しい状況となり、富士フイルムは国内で原料を製造する能力があるデンカに委託し、国内生産にシフト。7月から本格的な増産を始める計画を公表した

本来、医薬品の原材料を変更するには時間がかかる。原料の調達先変更を申請する場合「通常なら品質の確認や登録手続きに1年程度かかる」(国内の中堅製薬)という。今回は特例的な措置で、こうした手続きが1~2カ月程度に短縮されたようだただ本格的な増産は7月以降とみられ、3カ月程度を要する。

コストもかさむ。製薬会社が海外から原料を調達するのは製造原価を下げるためだ。錠剤など一般的な医薬品は化学合成でつくられ、化学物質に溶媒や材料を加えて化学反応を起こす。有毒なガスや排水が発生するため処理コストもかかる。種類や濃度にもよるが日本の医薬品の排水処理費用は1キログラムあたり数十円から数百円とされ、中国やインドなど海外の10倍ともいわれる。国内で原料から製造すると薬価50円の薬に、100円以上のコストが発生することも考えられる。

原料生産を内製化できれば、200万人分の目標は達成できる。ただ国内製造だと製造原価も高くなる。製造コストに見合う薬価を設定し、その価格を維持していく支援も必要だ。

インフルエンザの代表的な治療薬タミフルは1日2回、5日間の服用で2700円程度かかる。仮にアビガンがタミフルと同価格で3倍量が必要とすると、1人分の薬剤費は8100円。200万人分なら162億円となる計算だ。

原薬の海外依存は日本の構造的な問題だ。厚生労働省が2013年に実施した後発薬の調達状況に関する調査によると、原薬をすべて国内で調達しているものは金額ベースで3割にとどまっている。残る7割は原薬の全部もしくは一部を海外から輸入。調達先を金額で比較するとインド(30%)、韓国(26%)、中国(24%)となっていた。薬価の引き下げ圧力は強まっており、現在は海外調達の比率はさらに高まっているとみられる

アビガンについては実用化の時期も注目される。政府は短期間でアビガンを承認したい考えだが、厚労省は慎重な姿勢を崩さない。一般的に医薬品は申請から承認まで半年以上。アビガンの臨床試験(治験)は6月末に終了する見通しだ。「副作用などデータの評価、専門家の意見といったプロセスは必須。条件付きの承認でも審査に数カ月がかかるだろう」(元厚労省の薬事担当者)

今回は日本の製薬会社が開発した薬であっても、原料の多くを中国に依存していたため、機動的に増産することができない現実が露呈した。デンカは原料となるマロン酸の製造から17年に撤退していたが、製造設備を残しており、人員の手当てで再生産できることが分かった。デンカが生産できるのは幸運にすぎず、原料を海外に頼る日本の医薬品製造に対する構造的な問題は依然として残ったままだ

新型コロナで浮かび上がった日本の医薬品の供給体制の危うさを解消するためにも、国内生産に対する価格評価や緊急時の審査の仕組みなど柔軟な制度を今こそ再構築する必要があるだろう。(先端医療エディター 高田倫志)


ロシアも生産するようですね。

(グローバルエコノミックニュース 韓国語 2020/04/14)

ロシアがコロナ19治療剤として浮上している日本の富士フイルムの『アビガン』医薬品を生産、供給すると宣言した。

ロシアメディアは、昨年にfavipiravirの特許が切れたことにより、KhimRarが国内一般favipiravirを市場に発売する計画だと13日(現地時間)発表した。(機械翻訳 若干修正)