(統一日報 2020/03/04)

新型コロナ対策に有効な手だてなく

 収束の気配が見えない新型コロナウイルスの感染拡大に対し、日本政府は先月26日に全国的なイベントの開催自粛を要請した。民団中央本部は同日、「3・1節第101周年記念行事」の開催延期を全国地方本部に指示。現段階では在日社会に目立った影響は見られないものの、飲食店やパチンコなどのサービス業を展開する在日企業家も多く、事態が悪化した場合の対応策を準備する必要がありそうだ

 2019年末に発症が報じられてから現在に至るまで、新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかかっていない。WHO(世界保健機関)は2月28日、世界全体での新型コロナウイルスのリスク評価を、これまでの「高い」から「非常に高い」に引き上げたと発表した。

民団中央本部は日本政府の方針を重く受け止めており、2月26日に全国地方本部に向け「3・1節第101周年記念行事」の開催を延期するよう指示。また28日には、3月1日から開催予定だった「KSJW2020(在日大学生冬季ジャンボリー)」の中止を発表した。

在日社会へも徐々に影響が出はじめている中、各民団地方本部はどのような対策を講じているのか。新型コロナウイルスの罹患者が多い地域を中心に話を聞いてみたが、やはりアルコール製剤を用いた消毒やマスクの着用、手洗いなどの基本的な予防策を行うほかないようだ。

民団自体の勤務体制については中央本部から通達された公式的な方針はなく、各地方本部・支部ごとに自主的に判断しているようだ。民団愛知などは、民団内に勤務している職員については時差出勤などを実施しているとのことだった。北海道・東京・愛知・神奈川の民団地方本部に問い合わせたところ、民団員の中に新型コロナウイルスの罹患者が発生した事実は今のところ確認されていないようだ

在日企業への影響の広がりも懸念されている。焼き肉やパチンコなどの飲食・サービス業には在日企業も数多く参入している。社会の基盤となるインフラ産業などと異なり、「不要不急」である余暇産業やサービス業は今回の新型コロナウイルスによるダメージを受けやすい。

特にサービス業は非正規労働者の割合が高く、景気によって雇用が増減するため、調整弁の一つとして機能している業種だ。今回、仮に臨時かつ長期にわたって店舗が休業した場合、手当などがない非正規雇用者にとっては生活に直結する問題だろう。

パチンコ業をはじめ、飲食サービスなども手掛けるマルハン(韓裕代表取締役社長)は、現況をどのように把握しているかという質問に対し、「日々状況が変転しており、基本的には日本政府の方針に従っている」と回答した。マルハンではマスクを着用しての接客も推奨しており、事務所なども可能な限り消毒しているという。また、具体的な線引きなどはまだ行っていないが、事態が悪化した際は、「(店舗の休業など)最悪のケースも想定している」とのことだ。

「カラオケ歌広場」などを展開するクリアックス(木下泰一代表取締役社長)や、高級焼き肉店として知られる叙々苑(新井昌平代表取締役社長)も概ね同じ対応をとっている。クリアックスでは客側にもアルコール製剤の使用による消毒を積極的に呼びかけており、叙々苑ではこれから社内で統一的な施策を行っていく動きがあるようだ。

有事の際には真っ先に切り捨てられがちなサービス・娯楽業ではあるが、「不要不急」は苦しい時こそ人々の心の拠り所となり、萎縮した経済を動かす原動力となる。在日社会の陰りは、そのまま日本社会への直接的な影響となり得るだろう。



クリアックス(くりあっくす、Criax.Co.,Ltd.)は、東京を拠点としてアミューズメント事業を行なっている企業である。関東地方を中心に、カラオケボックスチェーン「歌広場」、カラオケネットカフェ複合型施設「カラNET24」、漫画・インターネットカフェチェーン「まんが広場」、リゾート施設 「伊東園ホテルズ」を経営している。

概要
それまでパチンコ店、サウナ、キャバレーなどが入居する複合施設を経営するなどしていた在日韓国人の実業家、李支宗が、1994年にカラオケ店事業に進出したのが始まりである。



李 支宗(り ししゅう、1939年 - )は、在日韓国人の実業家である。通名: 木下 支宗(きのした ししゅう)クリアックス、スタディー(いずれも東京都豊島区)会長

人物・来歴
済州島出身の父親の元、大阪府に生まれた。東京の高校を卒業した後、父親の営むゴム工場の手伝いを経て、20歳代で独立、テレビ拡大フィルターの製造・販売事業を成功させた。その後は東京でパチンコ店、サウナ、キャバレーなどが入居するレジャー施設を建設するなどした。

概要
神奈川県横須賀市出身の在日朝鮮人である朴泰道(通名・新井泰道、1942年10月18日 - )が1976年4月に六本木で創業した。社名は肉を焼く音からきている。


(東洋経済日報 2008/12/12)一部抜粋

あらい・たいどう 本名=朴泰道(パク・テド)。1942年神奈川県横須賀市生まれ。中学3年で新宿の「明月館」、神田の「大同苑」で修業。独立後76年に六本木に叙々苑1号店開店。84年に株式会社叙々苑設立。