(世界日報 韓国語 2020/01/26)


マレーシア、インドネシア、タイ、フィリピンまで…。世界航空宇宙産業市場で基盤が微弱な韓国が開発した軍用機が、それでもよく使われている地域が東南アジアだ

だが、最近になってアメリカ、ヨーロッパの防衛産業企業が東南アジア市場に飛び込む兆しを見せており、韓国の立地を揺らがしかねないという懸念が提起されている。韓国型戦闘機(KF-X)をはじめとする国産軍用機が、東南アジアから押し出される懸念が提起される部分だ。

◆インドネシア市場争奪戦、本格化するか

インドネシアはKF-X開発に参加する国で、全体の開発費8兆5000億ウォンのうち20%に該当する1兆7000億ウォンを負担することになっているが、2018年と2019年の分担金を出していない

防衛事業庁は「ジョコ・ウィドド[Joko Widodo]インドネシア大統領が持続的な事業参加の意志を表明している」とし「分担金の納付が早く履行されるように協議中」という立場だ。

だが、インドネシアは“プランB”を念頭に置いてるようだ。フランス経済専門メディア『ラ・トリビューン』は最近、「プラボウォ・スビアント[Prabowo Subianto]インドネシア国防部長官[国防相]の去る11日のパリ訪問は、フランス製兵器購入の交渉を仕上げるために計画された」と報道した。

このメディアは、最終契約はまだ締結されていないとしながらも、インドネシアがダッソー『ラファール』戦闘機48機、DCNSのスコルペヌ型潜水艦4隻、ゴーウインド型(2500t)哨戒艦2隻の購入を希望していると伝えた。

これについてプラボウォ長官は現地メディアに「(兵器を売ろうとする)フランスの希望事項」と述べたが、ラファール48機の購入に対するインドネシアの関心を尋ねた質問には答えなかった。

これと関連して、ウィドド大統領は23日、国防部とインドネシア軍、警察首脳部が集まった2020年リーダーシップ会議直後、「フランスの兵器購入はまだ決定していない」としつつも「プラボウォ長官がフランスと韓国、東ヨーロッパ国の兵器購入について評価した。間もなく決めるだろう」と述べ、その背景に関心が集まった。

防衛産業業界では「水面下での話が水面上に浮び上がった」という反応だ。インドネシアが財政問題でKF-X開発分担金支払いを先送りしている状況で、アメリカとヨーロッパの防衛産業企業の水面下の動きが尋常でなかったということだ

2002年から実践配備に入ったラファールは、世界的航空電子企業であるタレスが開発した電子装備と多機能地位配列(AESA)レーダーを装着している。フランスとアメリカ、ヨーロッパで使う多くの航空武装の運用が可能だ。スカルプ長距離空対地ミサイルなどを装着でき、戦略的打撃能力も備えている。

だが、ラファールの海外販売実績は良くない。フランスが2024年までに180機を購入するほかに、エジプトとインド、カタールが約100機を導入し、リビアとシリアなどで実戦経験を積んだ。だが、ベルギー、ブラジル、シンガポール、カナダなどで苦杯をなめた状態だ。

既に戦闘機を開発した会社が新たに作った戦闘機の損益分岐点は300機前後である。ラファールは開発されて20年余りが経った状況でも、損益分岐点を越えることができていないわけだ。

これはフランス航空宇宙産業に悪影響を及ぼす。未来の仕事と利益が保障されなければ、ラファールの部品と装備の生産に参加した協力企業の離脱を防ぐことはできない。協力企業の離脱は、フランス航空宇宙産業の生態系を崩壊させる危険がある。フランスがラファールのインドネシア販売に積極的な理由だ。

防衛産業業界関係者は「フランスは数年前からインドネシアにラファール販売を推進してきた」として「KF-Xよりも良い、破格的な条件を提示したという観測が現地で茂盛だ」と伝えた

アメリカとロシアもインドネシア市場の攻略に出る態勢だ。インドネシアは昨年、アメリカ,ロッキードマーティンの『F-16V』32機を購入する予定だと明らかにしたことがある。ロッキードマーティンはこれに力づけられて追加受注のために今年、現地マーケティングを強化するなど積極的な動きを展開する計画であることが分かった。

ロシアは、2018年2月に『SU-35S』11機を販売することにしたが、アメリカの対ロシア制裁で契約が実現しなかった。だが、政治的にインドネシアと緊密な関係を結んだという点で、販売の試みを続けるものと予想される

◆根本的な対策作り急がなければ

ラファールなどの攻勢に直面したKF-Xの状況は良くない。航空武装とAESAレーダーの弱点のためだ。

現在、KF-Xは2021年上半期に試作機1号機を出庫し、2022年上半期から試験飛行に突入、2026年に開発を完了する予定だ。

だが、KF-Xの航空武装はラファールやF-16と比較すると優位でないのが実情だ。武装のうち目立つのはミーティア中距離空対空ミサイル程度だ。開発中の国産長距離空対地ミサイルは2029年に戦力化される予定だが、耐空証明などを考慮すると、2030年以降に実践配備される可能性もある。

AESAレーダーが開発されているが、ラファールのRBE2-AAレーダーより優秀な性能を確保できるかは未知数だ。

KF-Xの開発が完了すれば、インドネシアは60機を生産して配置する。ステルスを除けば、ラファールやSU-35SよりましなところがあまりないKF-Xを2020年代後半に得るわけだ

一方、ラファールは北大西洋条約機構(NATO)規格を適用した西側製武装の大半は使用が可能だ。SU-35Sもロシア製の航空武装をいつでも搭載できる。F-16VはインドネシアがF-16を30機余り運用しているため後続軍需支援などで有利だ。

この3機種は、インドネシアが注文すれば数年内に引き渡しが可能だ。KF-Xより早くて容易に戦力の空白を埋めることができるわけだ

ダッソーとロッキードマーティンなどがインドネシアに有利な代金支支払い条件を提示する場合、KF-X開発への参加をめぐり内部論議が絶えないインドネシアの態度に影響を及ぼしかねないという懸念も出ている。韓国よりも多くの技術移転を約束する場合、より一層不利になる。

他の東南アジア諸国も事情は似ている。軽戦闘機(LCA)導入を推進しているマレーシアは、韓国航空宇宙産業(KAI)の『FA-50』の購入を考慮しているが、中国-パキスタンが合作した『JF-17』の攻勢が侮れない。最新型であるJF-17ブロック3はAESAレーダーとヘルメット装着照準装置などを備えて戦闘能力も高まった。価格や折衝交易などで破格的な条件を提示する中国の特性を考慮すると、FA-50の受注を楽観することは難しいという評価だ。

FA-50を12機運用中のフィリピンは、FA-50の追加購入の代わりに新型戦闘機の導入を考えているが、スウェーデン,サーブ『グリペン』が候補として議論されている。フィリピンは昨年1月、国産『スリオン』ヘリコプターの代わりにロッキードマーティンの『ブラックホーク』ヘリコプターを購入した。ロッキードマーティンはスリオン10機を購入できる価格でブラックホーク16機の提供を約束したという。

韓国も活発な動きを展開している。昨年、韓-東南アジア連合(アセアン)特別首脳会議当時、KAIはマハティール・ビン・モハマド,マレーシア総理、ハサナル・ボルキア,ブルネイ国王など主な首脳たちにFA-50を紹介した。KAIは来月に開かれるシンガポールエアショーを通じて、東南アジアに国産航空機の優秀性を知らせる計画だ。

だが、アメリカ、ヨーロッパの防衛産業企業の攻勢が強化される兆しを見せる状況で、根本的な対策を模索しなければならないという指摘が出ている。ロッキードマーティンやダッソーなどは、検証された戦闘機の性能と多様な代金支払い条件、技術移転、所属国の国際政治的影響力などで韓国より優位にある

アメリカ高等訓練機(APT)事業で敗れて以降、活路を見いだせていない状況で、東南アジア市場まで揺るがされる場合、国内航空宇宙産業は海外市場で未来の糧を見つけることは難しい。

戦闘機を初めて開発した会社が該当機種で利益を得るには400機以上を販売しなければならない。だが、KF-Xの確定物量は韓国空軍120機とインドネシア60機だけだ。損益分岐点の半分にも満たない。実戦経験があるラファールも海外受注に困難を経験する状況で、KF-Xが当初の計画の通り作られても輸出は容易ではない。

そのような状況でインドネシアが離脱する場合、KF-Xの機当たりの単価はより一層上昇し、KF-X輸出もそれだけ難しくなる。T-50を通じて確保した航空宇宙産業の生態系維持も不可能だ。国内航空宇宙産業の最後の“トッパッ”[家庭菜園、敷地に付いている畑]である東南アジア市場を守るための政府次元の対策準備が緊急な理由だ。(機械翻訳 若干修正)