(日本経済新聞 2019/12/09)

海上保安庁は中国製ドローン(小型無人機)の調達や活用を2020年度から見送る方針だ。救難現場の撮影や警戒監視に活用している数十機のドローンを他の機種に切り替える。機密情報の漏洩のおそれを取り除く狙いだ。政府調達で華為技術(ファーウェイ)製に続き、中国製品を実質的に排除することになる。

海上保安庁は海の救難事故に対応するほか、沖縄県の尖閣諸島の周辺海域、北朝鮮漁船の監視などを手掛けている。取り扱う情報は安全保障や捜査関係を含む。

現在、同庁が保有している数十機のドローンは大半が中国製だ。安価で性能も優れているとみて調達してきた。20年度予算案に他社製に変更するための取得費用を盛り込む予定だ

中国製ドローンを巡っては、米国防総省が世界最大手のDJIを念頭に既製品の購入・利用を原則禁止している。ロード国防次官(調達・維持担当)は「(ドローンから)多くの情報が中国に送られており、使用することはできない」と説明している。

ただ「緊急の必要性」を認められて特例として購入を続けているケースがあるもようだ。禁止後も空軍や海軍で購入した例もあるという。

米国土安全保障省は今年、中国製ドローンの使用に関し、情報漏洩のおそれがあると警告するメモをまとめた。安全保障上の問題があるとの理由で「米国のデータを権威主義的な国家に移すあらゆる製品を米政府は強く懸念している」などの見解を示した。この際、DJIは「創業以来、データの安全性に関する問題を特に重視しており、技術の安全性は米政府や米大手企業から何度も検証を受けている」との声明を発表した。

日本政府は米政府を意識し、経済安全保障の規制や体制を強化している。ドローンの調達を巡る動きもその一環だ。18年に政府調達からファーウェイ製の事実上の排除に踏み切り、19年11月22日に外資による悪意ある買収を防ぐため日本企業への出資規制を強化する改正外為法を成立させた

20年4月には外交安全保障政策の司令塔を担う国家安全保障会議(NSS)に経済分野を専門とする経済班を正式発足させる。米国は「軍民融合」を掲げ民間の先端技術を軍事力に活用する中国を警戒しており、米の経済安全保障政策と歩調を合わせる狙いがある。

国内の民間企業では、深刻化する人手不足の対策として農業や宅配などでドローンを活用する動きが広がっている。インプレス総合研究所によると、ドローンの国内市場は19年度に前年度比56%増の1450億円に拡大する見通しだ。24年度には5073億円に達するとみている。