[日韓の現場]宣伝戦<4> 自粛・不買 あおる政治 長期化影響 韓国企業にも
(読売新聞 2019/12/06)

〇定期船運休

 韓国で反日感情が高まるにつれ、訪日旅行の自粛や、日本製品の不買運動が広がっている。

 11月中旬、長崎県対馬市の厳原(いづはら)港ターミナル。韓国・釜山(プサン)と結ぶ定期船の受付窓口は閉鎖され、待合室の人影もまばらだった。

 ターミナル内のカフェはかつて韓国人客が8割以上を占め、メニューも英語とハングルで表記していた。しかし、日本政府が7月に韓国への輸出手続きを厳格化すると、様相が一変。韓国人旅行客は激減し、対馬-釜山間の定期船は8月中旬、運休に追い込まれた。女性従業員(48)は「韓国人の客足はばったり途絶え、売り上げが4割減った」と語った。運休後は、メニューも全て日本語に書き換えた

 対馬公共職業安定所によると、人口約3万人の対馬では7~9月に56人が職を失い、11月末時点で再就職が決まったのは11人だけだ。熊田重人所長は「貴重な労働力が対馬から流出するかもしれない」と危ぶむ。

 佐賀県の佐賀空港でもソウル、釜山、大邱(テグ)の3路線が8月中旬までに全て運休。ソウル便の7月の搭乗者数は、ピーク時の6割の7280人にとどまった。

 10月の来日韓国人は19万7300人。前年同月比65%減と、過去最悪の水準に落ち込んでいる。全体の訪日客数も5.5%減り、ラグビー・ワールドカップの押し上げ効果を打ち消した

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 韓国での不買運動では、ビールや菓子など様々な商品が対象にされている。財務省の10月の貿易統計によると、ビールの韓国向け輸出量は20年4か月ぶりのゼロに。対韓国輸出額の全体も、前年同月比で23%減少した。

〇自治体が排除

 こうした訪日自粛や不買運動は、韓国の行政や政治家があおった側面も強い

 与党・共に民主党の朴洸瑥(パククァンオン)議員は10月31日、韓国内のクレジットカード会社8社による衣料大手「ユニクロ」店舗での決済額を独自に調べ、売り上げが前年同期比で約6割減ったとの推計を発表した。朴氏は「一部でユニクロは生き返ったと言われるが、不買は続いている」と強調した

 ソウルや釜山などの大都市や各地方都市の5自治体の議会は9月以降、「戦犯企業」条例案を可決した。韓国政府が徴用に加わったと主張する日本企業の製品を対象に、自治体の発注備品などから排除するものだ

 韓国政府は、条例は世界貿易機関(WTO)規則に違反する可能性があるとして自治体に再考を促し、いずれも施行されていない

 それでも、忠清北道(チュンチョンプクド)の李始鍾(イシジョン)知事は施行見送りを決定後、記者会見で「不買運動を積極的に応援する」と述べ、住民をけしかけた

 韓国の世論調査会社「リアルメーター」の調査で「不買運動に参加している」と答えた人は、7月10日の調査の48%から増加傾向が続き、11月27日は72.2%に達している

 だが、不買運動が長期化するにつれ、韓国企業からも悲鳴が上がり始めた。

 韓国航空協会幹部は11月11日、国会での討論会で、訪日客減少による国際線の売り上げ減が年7800億ウォン(約720億円)に及ぶとの推計を発表し、政府に支援策を求めた。

 韓国の保守派の間では、日本製品を扱う韓国人小売業者などへの影響を懸念する声も出ている。

 保守系紙・中央日報は今年8月の社説で、既にこう警鐘を鳴らしていた。

 「不買運動で少なくない中小の商人、企業が打撃を受けている。政府・与党は国民に冷静さを取り戻させるどころか、露骨に反日感情を浸透させていないだろうか」

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