(朝鮮日報 2019/10/14)

キム・サンユン記者

 2022年サッカーワールドカップ(W杯)カタール大会2次予選H組第3戦の対北朝鮮戦(15日、平壌・金日成〈キム・イルソン〉競技場)が中継なしとなる危機にひんしている。29年ぶりに平壌で行われる男子サッカー韓国代表の試合だが、韓国国内のサッカー関係者は13日、「今日、地上波3局の日本のエージェントを通じて、北朝鮮側と最終交渉を行った。14日に結論が出る予定だが、交渉は難航していると聞いている」と語った。現地取材や中継ができなくなり、国際放送の信号提供可否も不透明な状況だ。韓国のサッカーファンたちはリアルタイムで試合を見られなくなるかもしれない。政府はこれまで応援団派遣などの問題をめぐり、北朝鮮に数回、意向を打診した。しかし、北朝鮮はまったく返事もせず、韓国政府も何の対策も打ち出せていない。

■北朝鮮、中継権料として150万ドル要求?

 大韓サッカー協会関係者は「衛星生中継ができなくなれば、試合の進行状況を、メッセンジャーなどを通じて各報道機関に知らせる計画だ」と語った。しかし、競技場の状況によってはこれすら困難な場合もある、とこの関係者は話している。現在、国際サッカー連盟(FIFA)やアジア・サッカー連盟(AFC)のホームページの試合情報には得点した選手・スコア・選手交代・警告・退場のみ表記されるようになっている。

 北朝鮮で行われるサッカーの試合が生中継されなかったことはこれまで数回あった。先月5日、平壌で行われた北朝鮮対レバノンの2次予選第1戦も生中継がなかった。北朝鮮が2-0で勝ったこの試合は翌日、朝鮮中央テレビが録画で中継した。米国の北朝鮮専門メディアNKニュースは「レバノンもこの時、取材陣・中継陣が北朝鮮に行けなかったものと見られる」と報じた。北朝鮮が太極旗(韓国国旗)掲揚や愛国歌(韓国国歌)歌唱を許可していた2017年4月の女子アジア杯予選の平壌での試合も生中継はなかった。

 韓国のある関係者は「北朝鮮が非好意的である背景には、最近冷え込んでいる南北関係があるようだ」と話す。韓国政府は先日、「(昨年9月の)平壌共同宣言」に基づき、北朝鮮側に2020年東京五輪での南北合同チーム構成に関する実務協議を提案したが、これも遅々として進んでいない。

 W杯最終予選はAFCに中継があるが、2次予選はホームゲーム開催国のサッカー協会に中継権がある。北朝鮮側は韓国の放送局との交渉過程で、10億ウォン(約9100万円)以上を要求したと伝えられた。これは先月、トルクメニスタン側に支払った中継権料の3-4倍に相当する。放送界の一部では「北朝鮮側は当初、150万ドル(約1億6300万円)くらい要求してきた」という話もある。

■「サッカーも見られないのに五輪共催なんて」

 北朝鮮側からの反応は皆無という状況だが、韓国政府は粘り強く「南北五輪共催成功」を唱える「片思い」状態が続いている。今月4日にソウル蚕室総合運動場で行われた第100回全国体育大会[国民体育大会(国体)に相当 第1回は1920年の全朝鮮野球大会]開会式に出席した文在寅(ムン・ジェイン)大統領は「この場で2032年ソウル・平壌五輪が開かれる日を願っている」と述べた。

朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長も閉会式のあいさつで、「2032年に南と北が平壌で会えるよう望む」と言った。

閉会式に出席した選手たちは「2032五輪ソウル・平壌共催」と書かれたプラカードを持って入場した


あるスポーツ関係者は「100周年を迎えたということで、韓国国内のスポーツ界を彩ってきた過去や現在のスポーツの英雄たちがたたえられるべき全国体育大会が、スポーツを政治の道具と考える政府によって『南北五輪共催』のPRで塗り固められてしまった感じだ」と不快感を見せた。

 W杯予選の平壌アウェー戦が難航していることから、ソウル・平壌五輪共催に対する世論も悪化している。サッカーファンは「サッカーの1試合をめぐっても意思疎通ができないのに、どうやって五輪を開催すると言うんだ」と怒りと悔しさを爆発させた。竜仁大学統一大学院のチェ・チャンリョル大学院長は「サッカーの試合を通じて、韓国政府の対北朝鮮政策の現住所が明らかになった。南北関係が行き詰まっている現実を後回しにして、ひたすら『五輪共催』ばかり叫ぶのは空虚だ」と語った。


“韓国の歴史を認めない”政策(とその思想強要)で一貫していますね。