【今さら聞けない世界】東京五輪前に注目 旭日旗、日韓の新たな火種になる?
(朝日新聞 2019/09/24)

 韓国国会の文化体育観光委員会は8月下旬、東京五輪・パラリンピック開催の期間、競技場に旭日(きょくじつ)旗を持ち込んだり、それをあしらったユニホームを着たりして応援することを禁止するように、国際オリンピック委員会(IOC)と大会組織委員会に求める決議を採択しました。また、東京パラリンピックのメダルの図柄が旭日旗を想起するとして、韓国の代表団が変更を求めています。

 旭日旗とは、「朝日をかたどった旗。もと日本の軍旗・軍艦旗などの類」(広辞苑第七版)。日本の国旗、いわゆる「日の丸」のことを日章旗と呼ぶのに対し、旭日旗は丸の周りに、太陽光を表す線が放射線状に何本も描かれた図のことを指します。外務省は「日本文化としての旭日旗」という資料で「旭日旗の意匠は、日章旗同様、太陽をかたどっている(略)大漁旗や出産、節句の祝いなど、日常生活の様々な場面で使われている」と説明しています。日本では明治時代から第2次世界大戦まで旧日本軍が軍旗として採用し、大戦後は軍旗としての役割は終わりました。現在は自衛隊が艦隊などに掲げています。

 なぜ韓国側は旭日旗に反発するのでしょうか。今年7月に「旭日旗問題に見る韓国ナショナリズムの新側面」という論文を発表した神戸大の木村幹教授(朝鮮半島地域研究)に聞きました

 ――韓国の人にとって、旭日旗はどういうイメージがあるのでしょうか?

 日本軍が出てくる映画やポスターでは必ずと言っていいほど旭日旗が出てくるので、韓国の人々はもともとネガティブな印象を持っていました。もともと日本の軍国主義を象徴するものとして韓国の人の念頭にあったのは日章旗でした。90年代以前、日本では国歌としての君が代と並び、国旗として日章旗を認定するかを巡る激しい議論がありました。それを伝える形で韓国でも関心を呼んだのです。その後、日本で日章旗が公式に日本の国旗として制定されると、韓国内では日章旗をターゲットにすることを自重する動きが生まれました。その後、2010年代になるまで長らく旗は注目されてきませんでした。

 ――旭日旗に注目が集まったきっかけは何でしょうか?

 スポーツとインターネットが深く関わっています。2011年、サッカーアジアカップ準決勝でのことです。対日本戦で、韓国チームのMF、奇誠庸(キソンヨン)選手が膨らませた頰を左手でかいて猿のまねをする場面がありました。奇選手は試合後、ツイッターに「観客席にある旭日旗を見た自分の胸には涙がわき出た」とつぶやき、「私は選手である前に大韓民国の国民だ」と書き込みました。これ以降、ネット社会を中心に旭日旗に関する議論が活発になりました

 ただ、今のような「旭日旗は戦争犯罪の旗だ」という理解が始まったのは、韓国ではなくアメリカからでした

 ――なぜアメリカだったのでしょうか?

 韓国内には、それまでも「軍国主義時代の旗だからよくない」という認識はあったのですが、国際社会には共有されていなかった。韓国のインターネットで盛り上がった影響を受けて、在米韓国人社会でも運動を起こそうと思った。でも、そのままではアメリカ人にはよく分からない

 当時、アメリカでは、南北戦争で奴隷制度存続を求めた南部側が使った南軍旗やナチスドイツのハーケンクロイツに対して、奴隷制やナチズムを象徴する旗であり排除しなければならない、という運動がありました。そうしたアメリカで、在米韓国人を中心に「旭日旗は日本のハーケンクロイツのようなものだからダメなのだ」という説明をしたわけです。そうした言葉が韓国内で報道されたり、ネットで取り上げられたりして、「旭日旗=戦犯旗」という発想が在米韓国人の運動から韓国に「逆輸入」される形で広まりました。それ以来、旭日旗はハーケンクロイツに並ぶ戦犯旗だから「絶対悪」であるとされ、追放されるべき対象という認識が広がっていったのです。2012年ころのことです

 ――旭日旗は、新たな日韓関係の火種になりますか?

 旗というのはシンボルであり、シンボルはその使い方で社会での受け止められ方が変わってきます。だから、どこかの団体が軍国主義的な主張をする際に旭日旗を掲げ続けるようなことがあれば、社会のなかで旭日旗を軍国主義的な意味を持つものだと見なすようになります

 旭日旗問題は、これまで起きていた日韓間の紛争とは大きく違います。慰安婦問題や徴用工問題には、元慰安婦や元徴用工、さらにその遺族たちという具体的な「当事者」がいます。でも旭日旗問題には当事者がいません。なので、「当事者の救済」という目的のために日本政府や日本企業に訴える政治家や弁護士といった「プロ」が介在しません。だからこそ、この問題はそうしたプロによる「上から」の主導ではなく、インターネットを中心とする「下から」の世論によって動いていて、ある意味、つかまえどころがない。そういう意味ではこれまでの韓国の民族主義的な運動とは明らかな違いを持っています。

 ――私たちはこの問題にどう向き合えばよいのでしょうか?

 大事なのは、そもそも今の日本でどういう時に大々的に旭日旗が使われているか、を考えることでしょう。大変残念なことに、旭日旗は過去、ヘイトスピーチや反韓デモの場で振られることの多い旗でした。こうした事実は今では海外でもよく知られているので、たとえ、その意思がなくても、旭日旗を振ることで間違ったメッセージを送ってしまう可能性は常にあります。そもそもスポーツイベントで日本を応援したければ、国旗である日の丸を振ればいいのですから、そこにあえて旭日旗を持ち込む意味はどこにあるのかを考えてみてもいいでしょう。例えば、競技に自衛隊員が出場していて、「自衛隊旗」でもある旭日旗を振るなら、社会人選手の会社の同僚が「社旗」をふるのと同じようなものですから、理解できなくもありません。スポーツのイベントで重要なのは、出場する選手を応援することであり、そこに全く異なる関心をひくものが持ち込まれ、競技そっちのけで議論されることになれば、選手たちにとっても迷惑になるでしょう。

 ――韓国側からの旭日旗の扱いに関する申し出を受けて、橋本聖子五輪相は、旭日旗が政治的な意味での宣伝にはならないとの認識を示しています。

 持ち込んではいけない、とはなかなか言えないと思いますが、旭日旗を明らかに嫌がっている韓国や中国との試合でことさらに旭日旗を振るという行為は、挑発的な行為だと見なされても仕方ないでしょうね。

 旭日旗だけに注目するから話が難しく見えますが、旗に限らず、「選手が嫌がるものを持ち込まない」というどんなスポーツの応援にも当てはまりますよね。オリンピックはスポーツイベントであり、民族主義をぶつけ合う政治的対立の場ではありません。そういう意味で組織委は「平和の祭典であるオリンピックで、政治的意図をもった行為は厳に慎んでほしい」くらいは言ってもよいと思います。だってそれによって東京五輪の国際社会でのイメージが悪くなってしまう可能性は確かにありますからね。

 繰り返しますが、旗はシンボルであり、使う人の意図によって意味が変わります。だから日本国内で、民族主義を鼓舞したり、韓国や中国を挑発したりするシーンでこの旗を使わなければ、「旭日旗は戦犯旗だ」という韓国の議論も批判のとっかかりを失って、ある程度は沈静化していくでしょう。「旭日旗に政治的な意図はない」というなら、自らの行動で示していくことが重要になります。「やっぱり旭日旗は軍国主義の象徴だったじゃないか」と五輪後に言われないためにも「平和の祭典」では日本社会の成熟した姿を世界に発信したいものです。(今さら聞けない世界)(今村優莉)


以前、朝鮮日報も2012年ごろから使われ始めた新造語と言ってましたね。

さらに言えば、『旭日旗』だけではなく『旭日模様』まで対象にするのがあたりまえになったのは、ロンドンオリンピックで『独島プラカード』を掲げパク・チョンウ(朴鍾佑)が処分を受けた際、「なら日本体操は旭日旗ユニフォームだから処分せよ」と言い出したことが大きいと思います。

2018年10月06日
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多様な旭日模様を用いた絵柄の応援グッズができると良いですね。


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