(峨山政策研究院 韓国語 2019/09/10)

Issue/Region:外交関係/東北アジア、日本、韓半島
Expert:J. James Kim /ワシントン事務所,アメリカ研究センター、カン・チュング/研究部門

はじめに

最近の韓日関係は、1965年の国交正常化以来最悪に至っている。2012年以降悪化し始めた韓日関係は、2015年に韓日慰安婦交渉妥結で一時的に改善されるようだった。しかし、2018年の政府の『和解・癒やし財団』の解散決定、日本哨戒機論議と韓国大法院[最高裁]の強制徴用判決、2019年7月の日本の対韓国輸出規制と8月のホワイトリスト(安保友好国)排除措置、韓国の韓日軍事情報保護協定(GSOMIA、以下『ジーソミア』)終了宣言などで両国間の葛藤は深くなっている。

峨山政策研究院は、日本の経済報復措置で韓日関係に対する憂慮が深刻化した2019年8月(19~21日)に世論調査を実施し、韓国人の対日認識の変化を分析した

2019年8月、韓国人の日本好感度(0=全く好感がない、10=非常に好感がある)は周辺国のうち最も低かった。日本好感度は2017年以来で最低値(2.30点)を記録し、安倍総理に対する好感度も1.10点で非常に低かった。特に韓日葛藤が本格化した7~8月の間、日本と安倍総理に対する好感度はそれぞれ3.06→2.30点、1.56→1.10点と大幅に下落した。

7月以降の政府の韓日葛藤への対応については、肯定評価が56.1%で否定評価(37.2%)より高かった。政府の対応についての評価は、理念指向別で大きく交錯した(肯定評価:進歩 79.2%、保守 33.7%)。これは韓日葛藤への対応について政派間の意見の相違が大きいためと解釈される。しかし、多数の韓国人は韓日協力の必要性に共感した。

2019年8月、ジーソミアなどの韓日安保協力が必要だという意見は52.1%で、必要でないとの意見(28.5%)より高かった。2013年以降、3回の調査でいずれも、半分以上が韓日安保協力が必要だと答えた(2013年 50.7%、2016年 52.3%)。

また、過去の歴史とは別として韓日協力を強化しなければならないという主張にも59.3%が同意した。2015年以来実施した3回の調査で『ツートラック』政策を支持する意見は半分を上回った(2015~16年 65.2%)。日本に複雑な情緒を持つ韓国人の認識は歴史、経済、安保を貫いた。

上の調査の結果は、政府の韓日関係管理がどれほど重要なのかを示す。強対強の対決ではなく、韓日関係改善に向けた外交的努力、すなわち対話を通した首脳間の相互信頼回復がいつにもまして急がれる。

◇韓国人の対日認識

概して否定的だった韓国人の対日認識は最近になってさらに悪化した。2019年8月の調査によれば、日本と安倍総理に対する韓国人の好感度(0=全く好感がない、10=非常に好感がある)は、それぞれ2.30点、1.10点にとどまった。

日本の好感度はアメリカ(5.45点)、中国(3.63点)、北韓[北朝鮮](3.44点)より低く、安倍総理の好感度はトランプ[Donald John Trump]大統領(3.95点)、習近平[シー・ジンピン]主席(3.01点)、キム・ジョンウン[金正恩]委員長(2.40点)より低かった

これには2つの要因が作用したと見られる。第一は、2018年、北朝鮮およびキム・ジョンウン委員長に対する韓国人の好感度が2017年に比べて大幅に上昇したためである。昨年、韓半島[朝鮮半島]に平和ムードが醸成されて改善された北朝鮮とキム・ジョンウン委員長に対する好感度は、日本および安倍総理の好感度を追い抜き、この傾向(『米-中-北-日』の順)は2019年8月も続いた。

第二は、悪化の一途にある韓日関係が改善される可能性が見えないためである。日本の7月の対韓国輸出規制強化措置、8月のホワイトリスト排除措置、8月の国内の日本不買運動拡散、ジーソミア論議などで韓日葛藤が増幅し、韓国人の対日認識はさらに悪化した。

[図1] 8月の周辺国および周辺国指導者の好感度(単位:0~10点)
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2019年3月に3.32点だった日本好感度は、7月に3.06点、8月に2.30点と連続して大幅な下落傾向を示した。安倍総理の好感度も3月は1.77点で、韓日葛藤が本格化した7月、8月、それぞれ1.56点、1.10点と大幅に下落した。歴代最悪の韓日葛藤が1か月以上続き、韓国人の対日認識は該当期間に大幅に悪化したものと見られる。政府が韓日外交長官会談[外相会談]など外交当局間の対話チャネルを通じて日本との協議を試みたが、日本の対話拒否で明確な成果を上げることができなかったことも好感度の改善に役立たなかった。

韓日両国が関係改善の糸口を見つけることができず、首脳間の緊張が続き、安倍総理の好感度は日本の好感度よりも低かった。これは国内の反日情緒が安倍総理に向かっているということを示し、現在の葛藤局面で安倍総理の役割が重要だという意味と読まれる。また、韓日関係改善に向けた政府の努力が、日本と安倍総理に対する韓国人の反感を減らす側面にも焦点を合わせなければならないということを示唆する。両国の外交的な関係改善努力と共に韓国人の対日認識の向上が重要な理由だ。

[図2] 時期別の日本および安倍総理好感度(単位:0~10点)
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◇政府の韓日葛藤対応

安倍総理の就任以降、日本の右傾化に対する韓国人の憂慮は高まった。安倍総理の平和憲法改正の試みは、日本の戦後体制を覆すという野心で、東北アジア情勢の変化とあいまって、領域内の緊張を高めている。過去、韓国と日本は過去の歴史による葛藤が深刻化しても、経済協力を基に相互互恵的な関係を保ってきた。しかし、現在の韓日関係危機は、日本軍慰安婦問題、日帝強占期の強制動員被害者に対する大法院[最高裁]の賠償判決、日本自衛隊哨戒機の威嚇飛行論議などが重なって大きくなったもので、葛藤の原因が複合・重層的だ。

去る7月以降、強弱戦術を展開してきた政府の韓日葛藤対応については、肯定評価が高かった。56.1%は政府が韓日葛藤によく対応していると見た。反対に政府の対応を否定的に評価した回答者は37.2%であった。この調査が政府のジーソミア終了宣言前に行われたため、その後、韓国人の評価が多少変わった可能性を排除することはできない。それでも肯定評価が否定評価を20%ほど上回ったという点は留意するに値する。

[図3] 韓日葛藤に対する政府の対応評価(単位:%)
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政府の韓日葛藤への対応を肯定的に評価した回答者(561人)は、対日経済依存度を減らすことができる機会という点(36.5%)、日本に断固として対応しているという点(30.1%)を主な理由に選んだ。『外交的解決策も十分に模索していて』(15.5%)、『国内世論および国民感情に合致していて』(11.1%)なども政府の対応を支持した理由であった。

反面、政府の対応を否定的に評価した回答者(372人)は、『外交的代案を十分に探さないため』(33.9%)、『韓国経済に大きな打撃を与えそうで』(27.7%)を理由に上げ、他の理由では『韓国も葛藤に対する責任があって』(13.7%)、『韓米日安保共助を難しくしそうで』(10.5%)などがあった。

政府の韓日葛藤への対応についての評価は、ムン・ジェイン[文在寅]大統領の好感度によって異なった。ムン大統領への好感度が高いほど政府の対応を肯定的に評価し、好感度が低いほど政府の対応を否定的に見た。ムン大統領への好感度で区分した集団(0~4点=非好感、5点=中立、6~10点=好感)別の政府の韓日葛藤への対応についての評価は、肯定意見が非好感層で19.3%、中立層で54.2%、好感層で89.8%であった。否定的評価は反対に非好感層で80.7%で最も高かった(中立層45.8%、好感層10.2%)

[表1] ムン・ジェイン大統領好感度別政府の韓日葛藤対応評価(単位:%)
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また、政府の韓日葛藤への対応についての評価は、理念指向によっても交錯した。韓日葛藤への対応についての意見が政派別に違うためと解釈される。進歩は79.2%が政府の韓日葛藤への対応を肯定的に評価し、保守は62.2%が政府の対応を否定的に評価した(中道:肯定57.8%、否定34.1%)

これは、進歩層を中心に日本の経済報復措置により積極的に対応する傾向を見せたのと関係がなくはない。実際、日本製品不買運動に支持を送った回答者は、進歩、中道でそれぞれ92.0%、85.3%で多数を占めた。全般的に不買運動に対する支持(79.5%)が高かったが、保守(66.4%)に比べて進歩と中道の支持がはるかに高かった

[表2] 理念指向別日本製品不買運動に対する意見(単位:%)
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(略)
おわりに

歴史問題から始まった日本の経済報復措置で韓日間対立は激しくなっている。葛藤を収拾しなければならない両国が関係改善に積極的に取り組まないため、韓国人の対日認識はさらに悪化している。過去の問題による反目が続く場合、両国間の真の協力と和解ははるかに遠い。韓日葛藤が深刻化しているなかで、多数の韓国人は韓日関係に非常に現実的な立場を堅持していた。韓日間の安保協力が必要だという立場と『ツートラック』政策を支持する意見がいずれも半分を越えた。

韓日両国が民主主義と資本主義という価値を共有しており、去る20年余りの間、民間交流を展開して関係を発展させてきたことは、関係改善に最小限の期待を持たせる部分である。政府は激化している葛藤に感情的に対応するのではなく、国益を考えるための段階的な関係改善に出なければならない。何よりも韓日首脳間の相互信頼回復のための案を積極的に模索しなければならない。

もちろん、韓日関係悪化の原因である歴史問題を放置してはいけない。去る5月末に実施されたある世論調査によれば、慰安婦問題について日本政府が再度謝罪する必要があるという意見は、韓国では86.7%だったが、日本では11.0%に過ぎなかった。このように両国国民の過去の歴史に対する認識には大きな差があった。政府は過去の歴史についての認識の差が葛藤の根本的原因という点に注目し、歴史認識共有のための長期的な対策作りをしなければならない。

今回の8月の調査結果は、危機の韓日関係に、次の政策的含意を示唆する。第一に、歴史問題から始まった韓日葛藤と関係なく、多数の韓国人は韓日協力が必要だと見ている。ジーソミアなどの安保協力だけでなく、『ツートラック』政策に対する支持世論は続いている。このような国民世論を反映し、政府は国益の観点で両国間の経済・安保協力を再開しなければならない。

第二に、韓国人の韓日首脳に対する好感度は韓日関係の認識と関連があった。韓日葛藤が激化し、8月の安倍総理の好感度は日本好感度より低く、政府の韓日葛藤への対応についての評価はムン・ジェイン大統領の好感度によって交錯した。これは、葛藤の分岐点で韓日首脳の役割が重要だという意味と解釈される。ムン・ジェイン大統領は韓日関係復元のために対話と妥協の機会を探さなければならない。国際世論戦などを通じて、日本が政府の対話要請に応じるようにしなければならない。今後、韓日首脳は9月の国連総会、10月の日王即位式、アセアン+韓中日首脳会議、11月のAPEC首脳会議などで会えるため、これを悪化した韓日関係を反転させる契機にしなければならない。

付録
峨山政策研究院の世論調査の概要

調査対象:全国の満19歳以上の成人男女1000人
票集誤差:95%信頼区間で±3.1%ポイント
調査方法:有線/携帯電話RDD電話インタビュー(CATI)調査
調査期間:レポート下部のアメリカ参考
実施機関:リサーチ・アンド・リサーチ(機械翻訳 若干修正)