(日本経済新聞 2019/08/20)

北朝鮮産の石炭の不正輸入に関わったとして2018年8月に韓国が入港禁止措置をとった貨物船3隻が、その後1年間で日本に少なくとも計8回寄港したことが分かった。国連が北朝鮮の石炭輸出を禁じるなか、制裁違反に使われた船が日本を訪れ、前後にはロシアや中国の港に入っていた。北朝鮮が制裁逃れの迂回輸出に日本の港を利用している恐れがある。

船舶への検査をモニタリングする国際組織「東京MOU」のデータベースから明らかになった。

韓国が入港禁止した4隻中3隻が日本を訪れていた。1隻は18年10月に苫小牧港など、12月に新潟港、19年6月に秋田県の船川港に寄港。前後にはロシアや中国の港に入っていた。別の2隻も18年秋~冬に鹿児島港や新潟港を訪れ、その後ロシアの港に入った。

寄港を許したのは、日本の法整備の遅れも背景にある。国土交通省は今回の8回の寄港で立ち入り検査を実施したが、現行法で出航を差し止められる違反は見つからなかった。日本は特定船舶入港禁止特別措置法で北朝鮮船籍の船の入港を禁じるが、第三国の船籍で、北朝鮮に寄港した記録がなければ対象外であるためだ。寄港した船は中米ベリーズなどいずれも北朝鮮以外の船籍だった。

韓国は18年8月、北朝鮮産の石炭をロシア産と偽って輸入したとして関係者を摘発した。問題の4隻はこうした第三国経由の不正貿易に使われていた。北朝鮮の密輸の全体像は不明だが、日本も利用されている可能性がある。

これとは別に、米国が制裁対象とした船舶が18年に日本に2回寄港していたことも分かった。


(日本経済新聞 2019/08/20)

北朝鮮産の石炭の密輸に関わった疑いのある貨物船の頻繁な日本寄港は、国連制裁に違反する輸出入の取引に日本が知らずに利用される懸念を浮き彫りにした。産地をごまかす迂回貿易や、積み荷を洋上で船から別の船に移す「瀬取り」の手口は巧妙化しているが、それに国際的な取り締まり体制が追いついていないのが実情だ。

北朝鮮にとって外貨獲得の手段となる石炭の輸出は2017年に禁止されたが、その後も違反の例が後を絶たない。例えば韓国が18年8月に摘発した密輸では、石炭は北朝鮮東部の元山港などを出港した後、ロシア極東サハリンのホルムスク港などで別の船に積み替えられ、韓国の港に入っていた。

こうした船舶による制裁破りは現在も続いている可能性が高い。「北朝鮮は石炭の洋上での違法積み替えで制裁を回避し続けている」。米政府は3月、北朝鮮が石炭輸送船を少なくとも33隻運航していると指摘した

国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会の専門家パネルが9月にも公表する中間報告書の案によると、北朝鮮は1~4月に少なくとも127回、93万トンの石炭を密輸出し9300万ドル(約99億円)を得た

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制裁対象になったことを隠す工作と疑われる事例もある。韓国が入港を禁止した後に日本に何度も寄港しているベリーズ船籍の「シャイニングリッチ」は18年秋に西アフリカのトーゴの船籍になり、船名も「ガホン」に変えられていた。

制裁網の緩みには、北朝鮮への圧力の強化に消極的とされる中国やロシアの影も見え隠れする。ガホンは過去1年の日本寄港の前後にロシア極東のナホトカ港や中国江蘇省の南通港に寄港した。

韓国の制裁対象となった「ジンロン」は昨年11月に中国遼寧省の営口港、12月に新潟港、その後にロシアのウラジオストク港に寄ったことが確認されている。ともに船会社は中国の企業だ。18年に日本に寄港した米国の制裁対象の船舶2隻はロシア船籍だった。

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が北朝鮮に融和的な政策をとるなかで、韓国の企業関係者による瀬取りへの関与も指摘される。4月には瀬取りで北朝鮮船に石油製品を提供した疑いがあるとして、韓国当局が韓国籍のタンカーを摘発し捜査を進めていることが判明した。

国連安保理北朝鮮制裁委員会の専門家パネルで16年まで委員を務めた古川勝久氏は「各国で制裁違反の疑いのある企業・個人の経済活動を封じ込める立法が遅れている」と指摘。関係各国の捜査協力を強化する必要があると語る。