(朝日新聞 2019/07/13)

 台湾の蔡英文(ツァイインウェン)総統は11日、中米カリブ海諸国訪問の途上、米ニューヨークを訪れた。米国と外交関係のない台湾の総統は訪米時の活動が制約されてきたが、米政府は今回、蔡氏が台湾と外交関係のある国々の国連大使と面会する「外交活動」を許した。蔡氏への厚遇に中国は反発している。

 「同盟国は台湾が世界と結びつくために不可欠な道を提供してきた」

 蔡氏は到着直後の11日夕、台湾の代表事務所で開かれた国連大使との会合に臨み、謝意を示した。

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▲ホテルに到着し、在米台湾人らから歓迎を受ける台湾の蔡英文総統(右)=11日、ニューヨーク、鵜飼啓撮影

 台湾総統が国連本部のあるニューヨークで国連大使と会うのは初めて。台湾を中国の一部と見なす「一つの中国」原則を主張する中国の圧力で台湾と断交する国が相次ぐが、外交関係を維持する17カ国すべての代表が出席したという

 台湾総統は米国への公式訪問が認められないため、蔡氏は今回、外交関係のあるカリブ海4カ国を訪問する前後に米国を「経由」する形をとった。ニューヨークには2泊3日で滞在。12日は米台の産業界幹部らとの会合やコロンビア大学を会場にした学者らとの非公開の対談に出席。帰路にはコロラド州デンバーに立ち寄る。米国滞在中に米政界関係者とも会うという

 台湾メディアは、こうした厚遇を「外交的な突破」と報道している。米政府が8日に公表した、台湾への戦車108両など22億ドル(約2400億円)相当の武器売却などと併せ、来年1月の総統選を前に、米側が蔡氏を後押ししているという見方を伝えている。

 一方、中国外務省の耿爽副報道局長は12日の会見で「中国は米台間の公的な交流には断固反対」と強調し、米側に抗議したことを明らかにした。ニューヨークでは、蔡氏の到着に合わせ、中国系の団体がホテル前で抗議活動を繰り広げ、「蔡英文は出て行け」などと気勢を上げた

 米国を訪問した台湾総統にどの程度の活動が認められるかはこれまでも米中台の間で焦点となってきた。

 李登輝(リートンホイ)元総統は1995年、「私人」として非公式に訪米し、母校のコーネル大学で講演。陳水扁(チェンショイピエン)元総統は03年、国際人権連盟の人権賞を受賞したのに合わせ、ニューヨークでの式典参加と演説が認められた。馬英九(マーインチウ)前総統は15年に母校のハーバード大学を訪問したが、講演は非公開で行った。(ニューヨーク=鵜飼啓、台北=西本秀、北京=延与光貞)

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▲米国入りした台湾総統の活動例(一部)

 ■中国、米企業に制裁へ 台湾への武器売却巡り

 米政府が台湾に武器売却を決めたことに対し、中国外務省の耿爽副報道局長は12日、売却する米企業に制裁を科す方針を示した。「『一つの中国』原則などに著しく違反し、中国の主権と国家安全に損害を与えた」とコメントした。(北京=延与光貞)