(朝鮮日報 2019/06/27)

 韓国軍が先日、有事の際に北朝鮮軍司令部を除去するため創設された特殊任務旅団(斬首部隊)の消音器、照準器、夜間暗視装置などの重要機器を、南スーダンに派遣されるハンビッ部隊の訓練用に転用していたことが26日までに分かった。これについて韓国軍のある関係者は「特殊戦司令部13旅団(斬首部隊)に配備されていた消音器、照準器、拡大鏡、夜間暗視装置など60セットをハンビッ部隊が訓練用に先日持っていった」「装備を受け取りながら訓練もできず返納させられたことで、これをきっかけに装備全体が持ち出されるとの懸念の声も出ている」と伝えた。

 ハンビッ部隊は国連平和維持軍(PKF)として現地のインフラ整備などを任務とする部隊で、2013年から南スーダンに派遣されている。そのため隊員の多くが工兵で、警戒任務に当たるのは全体の4分の1ほどだ。ところがこのハンビッ部隊に消音器や照準器など斬首部隊が持つ特殊機器が与えられたのだ。

 この問題について韓国軍の担当者は「海外に派遣される部隊が現地に到着すると同時に任務を遂行し、装備を効果的に運用するため派兵の準備期間に斬首部隊の装備を借り受け、訓練を行った」「長期の借り受けという形で、今後は海外に派遣される別の部隊も活用するだろう」と説明した。

 斬首部隊は2017年に北朝鮮軍司令部と大量破壊兵器(WMD)の除去を目的に創設された。北朝鮮の核兵器やミサイル攻撃に対抗する3軸体系のうち、大量反撃報復(KMPR)を行う中心戦力だ。ところが9・19南北軍事合意によって韓国政府は従来の3軸体系を「WMD対応体系」へと見直し、KMPRの名称も「圧倒的対応」へと変更した。当時、韓国軍は「名称が変わっただけで、防衛体制に変化はない」と説明していた。しかし特殊任務で使用される装備を海外に派遣される部隊が持ち出したことで「斬首部隊を事実上解体している」との見方も出ている

 2017年に斬首部隊が創設されると、韓国軍当局は予算を投入して必要な兵器や装備を補強してきた。しかし昨年の板門店宣言や9・19軍事合意によって状況が変わった。韓国軍関係者は「予算は前年度に国会を通過したのでそのまま執行されたが、購入した装備のうち多くは現場の兵士らに与えられなかったようだ」と明らかにした。このような状況で必要な装備を海外に派遣されるハンビッ部隊が持ち去ったのだ。斬首部隊からは「装備を求める声が強いのに、関係ない部隊が持ち去ってしまった」などの反応が出ているという。

 韓国国防安保フォーラムのシン・ジョンウ事務局長は「安全保障の現場で、しかも重要な任務を遂行している特殊部隊の隊員が使う装備が持ち去られ、工兵中心の平和維持活動(PKO)に派遣される部隊に与えられたとは全く理解できない」「工兵部隊の警戒に当たる兵士らが消音器を持つ必要があるのかも疑問だ。特殊戦司令部にさえ与えられなかった装備をPKO派遣部隊に与えるのは、優先順位を全く考慮していない」などと指摘している。

 韓国軍は板門店宣言直後の昨年5月、斬首部隊を平壌など北朝鮮内部に潜り込ませる特殊作戦用ヘリコプターの導入も事実上撤回したようだ。合同参謀本部は当時、米軍の特殊部隊が使用するMH47を購入しようとしたが、後から方針を見直した。上記の韓国軍関係者は「このような状況で特殊任務に必要な個人用の装備まで持ち出した。これは斬首部隊を事実上解体するものだ」とコメントした。

 韓国軍は先日、ハンビッ部隊の訓練を行う際、複数の特殊装備で武装した兵士の様子を公開した。しかしこれらの装備が斬首部隊から持ちだしたものとは明らかにしなかった。上記の韓国軍関係者は「特殊任務に基本として必要な消音器や照準鏡などを持ち去れば、斬首部隊とはいっても他の通常部隊と何も変わらなくなる」「形だけの斬首部隊だ」と指摘した。別の韓国軍関係者は「海外に派遣される部隊も装備の高度化は必要だが、それには斬首部隊の装備を持っていくのではなく、新しいものを使うべきだ」との考えを示した。

 これに対して陸軍は「一部の装備を借り受けただけで、戦力全体に大きな影響はない」「現在、海外派遣部隊の一部戦闘兵にテスト用で装備や物資を与えており、今後はこれらを所持する兵士を増やす計画だ」とコメントした。


ノ・ムヒョン大統領時代に陸軍より海軍の装備を重視する姿勢がたびたびマスコミで取り上げられていましたが、ムン大統領政権はよりその傾向が強そうですね。(陸軍=対北、海軍=対日?)


 韓国陸軍、1000人規模の人間兵器「斬首部隊」創設
(中央日報 2017/12/02)

密かに浸透して敵の要人を暗殺したり捕虜になった味方を救出する米国のレンジャーやデルタフォース(対テロ)、テブグル(海軍)、グリーンベレー(陸軍)のような特殊部隊が韓国陸軍に誕生した。

陸軍は1日、特殊戦司令部に特殊任務旅団(特任旅団)を創設した。有事の際、北朝鮮の指揮部と核・ミサイルなど大量破壊兵器(WMD)施設を破壊するための部隊だ。当初は2019年を目標に秘密裏に創設を準備していたが、昨年9月に北朝鮮が5回目の核実験を強行した後、軍当局は北朝鮮が韓国を攻撃する場合は大規模な報復作戦に踏み切るという概念の「大量反撃報復(KMPR)」計画を公開した。KMPRの一環として浮上したのがいわゆる「斬首部隊」、すなわちこの日創設された特殊戦司令部の特任旅団だった。

軍の関係者は「予定より2年操り上げて部隊を編成したが、該当部隊の任務と役割を具体的に言及することはできない」としながらも「北の挑発を抑止し、有事の際は反撃するうえで、はるかに広範囲かつ重要な役割をする」と述べた。また「対北先制打撃概念のキルチェーン(Kill Chain)、韓国型ミサイル防衛(KAMD)体系とともに自主国防のための主要核心戦力として定着することになるだろう」と強調した。

昨年末に特任旅団創設計画が公開されると、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長が警護員を大幅に増やしたという諜報があった。特任旅団に脅威を感じているということだ

特任旅団が秘密作戦を遂行するだけに、軍当局はこの日、創設式の場所、部隊編成、位置などを公開しなかった。しかし旅団級という点を考慮すると、1000人前後の副士官(下士官)以上の職業軍人で構成されたという観測がある。また、特任旅団隊員の場合、「人間兵器」に近い兵士を選抜したという声もある。特任旅団は機動力と先端装備を備える計画だ。

軍当局はC-130輸送機と大型ヘリコプターCH-47を改造し、特任旅団専用として使用することにした。軍関係者は「特任旅団は浸透速度が生命」とし「米軍の場合、専用航空機とヘリコプター、車両、ボートなどを具備しているが、韓国はまず既存の装備を改造して使用することになる」と述べた。

少数の人員がチームを組んで作戦を遂行するだけに、チーム共用武器の擲弾発射器や重機関銃、軽機関銃、小型無人機などを備え、監視および攻撃力も高める計画だ。国防部は40ミリ6連発リボルバー特殊作戦用擲弾発射器を購入するための予算を申請した。隊員は特殊製作された暗視鏡と照準鏡、水中および地上でも使用可能な小銃も持つ。遠距離から本部と交信が可能で作戦状況を伝達できる送受信装備も備える。軍関係者は「2011年1月に海賊に拉致された三湖(サムホ)ジュエリー号救出作戦(アデン湾黎明作戦)に投入された海軍特殊部隊(UDT/SEAL)も遠距離から本部との送受信が可能な装備を使用した」と説明した。

空軍はこの日、北朝鮮の核心軍事施設を精密監視するための航空情報団も創設した。