(日本経済新聞 2019/0621)

中国念頭、米と足並み 

防衛省は装備品や調査研究の入札に参加する企業に対し、資本関係や情報保全体制、担当者の経歴と国籍などを報告するよう義務付ける。中国などへの機密情報の流出を防ぐ狙いだこうした厳格な基準は初めてだ。米国は中国との貿易戦争に関連し、各国の政府調達で安全保障上のリスクに対処するよう求めている。日本は米国と装備品の共同開発もしており、足並みをそろえる。

サイバー攻撃が広がり、安保に関する情報が漏洩する危険性が高まっている。防衛省と取引する防衛産業(総合2面きょうのことば)の企業に第三者が潜入し、情報を詐取する可能性もでてきた

最近では防衛省の将来戦闘機の開発計画に中国政府の影響が強いとみられる企業が関わったことが発覚した。防衛省は同社と調査研究の契約を結んでいたが停止した。将来戦闘機は他国との共同開発も視野に入れている。一緒に開発したり輸出したりする相手国と機密情報を共有する場合を想定すると情報管理の厳格化が急務になっている。

2018年度の防衛省の物品・役務調達データのうち公表されている約270件を調べると外資系企業との契約が約2%あった。サイバー攻撃対策の調査・立案支援や、弾道ミサイル迎撃体制の調査、サイバー演習資料の翻訳など、防衛機密を扱う業務を多くの民間企業が受注している。

契約を精査すると情報保全が不十分な企業や、情報の管理体制を報告していない調達先があった。欧米系の大手コンサルティング会社は「グループ会社が複雑に入り組み、中国につながる資本が入っている関連会社もある」と分析した

中国の国家情報法は中国籍の企業や個人に情報活動への協力を求めている。協力を拒んだ場合の罰則とみられる規定もある。防衛省の取引先から機密が流れる懸念がある

防衛省は装備品の開発や調査研究で同盟国の米国と機密情報を共有する。トランプ米大統領は中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)を「安全保障上のリスク」と断定し、米政府機関に同社製品の使用を禁じた。日本も厳格な基準を採用しなければ、情報共有や共同開発などで米国の協力が得られなくなる可能性も出てくる。

新たな基準には企業の経営状況、人材、情報保全体制など複数の審査項目を設ける。企業に資本関係、取引先の一覧、製造や調査研究に関わる従業員の経歴書を提出させる。経歴書には国籍や学歴、職歴だけでなく留学経験の記載も求める

報告内容に不備や懸念があれば入札に参加できない入札で契約先に選ばれた後も、情報漏洩リスクがあれば防衛省が強制監査権を発動できる

これまで防衛省は入札で選んだ企業には情報保全の特約を示し、情報管理を呼びかけていた。入札前から企業の体制を徹底的に調べる欧米などと比べて審査が甘いとの指摘があった。米国や欧州連合(EU)では「セキュリティー・クリアランス」という考え方で政府の重要情報を閲覧できる担当者を限定している。米国は自動運転や燃料電池などハイテク技術に関し、国防権限法で他国への流出を防いでいる。

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(日本経済新聞 2019/0621)

航空機、艦艇、車両のほか、関連する通信・情報システムなど防衛装備品の開発・生産を担う。日本の防衛産業は2兆円規模とされる。三菱重工業や川崎重工業、IHIなどの造船重機会社や三菱電機、NECなどが代表的だ。
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防衛省と直接契約を結ぶ企業以外の下請け企業まで含めると裾野は広い。戦闘機と戦車はそれぞれ約1000社、護衛艦は約7000社といわれている。国内には防衛を専門とする企業はほとんどない。大手企業の売上高に占める防衛部門への依存度は数%から10%程度だ。

装備品分野は技術が高度になり、コストを抑えるための国際共同開発が主流になっている。同時に機密情報の保全の重要性が高まり、防衛省は対策を急いでいる。近く米国防総省の基準に合わせた包括的なサイバー防衛策を防衛関連企業に義務付ける方針だ。