(朝鮮新報 朝鮮語 2019/05/31)朝鮮総連機関紙

日本放送協会(NHK)は5月25日、ETVで『北朝鮮“帰国事業”60年後の証言』という題名でとんでもない虚偽捏造特集を放映して、朝鮮の最高尊厳をはなはだ冒涜し、朝鮮と総連を誹謗中傷した。これと関連して総連中央代表が5月28日、NHK本社(東京都渋谷区)を訪れ、製作局、国際部責任者に会って厳重に抗議した

席上で代表は、今回の特集番組に『脱北者』と日本人配偶者、そして朝鮮に敵対感を持っている反動人物を登場させ、朝鮮を犯罪国家のように作りあげ、総連が在日同胞を欺いて帰国させたという虚偽と捏造宣伝を敢行したことは、とうてい容認できない行為だと強く抗議した

特に今回の報道番組は、日本国民の中に朝鮮と総連に対する悪感情と不信を意図的に助長する謀略扇動として、日本政府当局の反共和国圧力政策に接していると糾弾し、直ちに謝罪して訂正するように要求した。

また代表は、過ぎた時期の事例が見せるように朝鮮と総連に対する悪質的な不公正報道が在日朝鮮人に対する敵対感を煽るとことになると指摘し、これ以上このような謀略報道番組を製作、放映してはならないと警告した。(機械翻訳 若干修正)


ETV特集「北朝鮮 “帰国事業” 60年後の証言」

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いま、日韓で「帰国事業」の真相に迫る聞き取り調査が始まっている。これまで「つらい状況にあった」と一様に語られてきた北朝鮮での生活だが、時の政策や国際情勢によってう余曲折を経てきたことがわかってきた。日朝はもとより、冷戦下の米ソ、韓国など、東アジアの激動に帰国者は翻弄され続けてきたのだ。番組では決死の思いで北朝鮮を脱出した在日コリアンと日本人妻を取材。知られざる苦難の60年を新たな証言で描く。


NHKの番組の内容ではないですが、帰国事業(1959年12月14日~)に関する朝鮮総連の対応の証言↓

 関貴星というコリア系日本人がいる。一九一四年朝鮮に生まれ、後に関家の養子となり、日本国籍を有していた関貴星は一九六〇年八月、「朝鮮解放十五周年慶祝訪朝・日朝協会使節団」の一員として北朝鮮を訪問する。「祖国の真実の姿を知りたい」というのが訪朝の目的であったが、北の共和国に関が見たのは、自分の理想とは遠くかけ離れた状況で、いくら頼んでも帰国者との面会は許されない。わずかに会えた帰国者はおどおどしたり、通り一遍の型どおりの受け答えをくり返すだけで、血の通った対話はできない。どこへ行くにも対外文化連絡協会の工作員が身辺から離れることはない。宿舎の平壌ホテル四階の窓辺からはツルハシをふるって土砂の掘方をしている数人の女性が見える。女たちの服装はチマとチョゴリであるが、裸足である。人民に犠牲を強いている風景には旅行中にも遭遇する。元山から咸興へ戻る途中では、建築用の松丸太を積んだ荷車の後から、腰の曲がった老婆が必死になって食い下がり、素手で丸太の皮を剥いでいる場面を目撃する。咸興製鉄所見学の折りには、頭に荷物をのせ、背中に赤ん坊を背負った貧しそうな女が、炎天の街路を、アカシアの折れ枝をぞろぞろ引きずって歩いている姿を見る。汽缶庫のボタ山あさりや川岸のちっぽけな流枝を拾う姿など、しばしば燃料不足を思わせる情景にぶつかる。

 「これはおかしい。この社会には矛盾がある。しかもとてつもなく大きな矛盾が」と感じた関責星は日本に帰ると、帰国者についての虚偽の宣伝をやめよ、祖国の真実を伝えよと朝鮮総連の幹部たちに要求する。「もしこの事実に眼をおおい、従来どおりの北朝鮮礼賛、帰国促進をつづけていけば、おそるべき人道上の誤りを冒す恐れがある」と訴えるが、幹部たちは耳を貸そうとはしない。しかし帰国運動は継続し、帰国者たちは祖国に幻想を抱いている。そこで関貴星が自分の周囲から運動をはじめることにする

この人びとに、上陸してすぐ役立つ、いな、一日も欠かせない生活用品を持ってゆけ、と教えたい。セビロや自家用車より自転車や防寒服を、木綿を、毛糸を、靴を、ミシンを、医薬品を、ドライミルクや釘一本、鉛筆一本でも余計もってゆくように教えたい。そして、地上の楽園へ帰るなどという甘い考えを棄て、自分らの力で泥まみれになって祖国を建設するのだ、という覚悟をもたなければ帰国する意味がないぞ、と教えてやりたい。

 私は矢も盾もたまらず単独で、まず自分の周囲から実行しだした。

 岡山市の解放会館で一週間のちの船で帰国する人びとの帰国学習会で、私は真実にそった帰国心得を話したとき、同席していた他の幹部が、「帰国する人びとにそんなこと喋っちゃこまるじゃないか」
というのだ。私が反問すると、かれは「一般帰国者は無知なんだ。それでいいんだ。なまじ本当のことを知らせると、帰国者がなくなってしまうからな」と平然たるものであった。

 彼ら一握りの幹部は、中央、地方を通じてただ同胞を新潟港から帰還船に乗せるだけが政治目的であって、あとは同胞がどうなろうがそんなことは知ったことではないのだ〉(『楽園の夢破れて』亜紀書房、一九九七年、八三貢、傍点は原文ママ)※傍点の代わりに文字色を変えてます

 右に引用した『楽園の夢破れて』の初版は一九六二年
【鄭大均著 『在日・強制連行の神話』162-164 文春新書】