(朝日新聞 2019/05/28)

 日韓関係は1965年の国交正常化以降、最悪と言われる。元徴用工らへの賠償問題は日韓請求権協定で完全に解決したはずだったが、韓国大法院(最高裁)は昨年10月、日本企業に賠償を命じた。出口は見えないが、河野太郎外相[2017年8月3日~]は関係改善への期待は捨てていない。その鍵となる一つが、韓国の康京和(カンギョンファ)外相[2017年6月18日~]との関係だ

 5月23日、パリ。日韓外相会談に先立ち、河野氏と康氏はメディアの前で握手を交わした。約5秒間。二人は目を合わせない。康氏は河野氏にほほ笑みかけたが、河野氏は康氏の方を向かずに席に着いた

 会談で仕掛けたのは河野氏だった。メディアに公開された会談の冒頭、康氏をしかりつけるような口調で語った。「事の重大性を理解していない」。批判の矛先は韓国外交省の報道官。この日の記者会見で「日本企業が大法院の判決を履行する場合、何の問題もない」と述べていた。「日韓請求権協定で解決済み」という立場をとる日本政府にとって到底、受け入れられない発言だった。

 終了後には記者団の取材に応じたときも河野氏の不満は収まらなかった。会談で康氏に「文在寅(ムンジェイン)大統領が責任を持って対応策を考えていただかなければ解決に結びつかない」と伝えたことを明らかにした。康氏では話にならない、と言わんばかりだ

 康氏に厳しい姿勢で接する河野氏。しかし、実際には二人の関係は悪くないという。外務省幹部によると、二人は事務方を通さず、携帯電話で話をすることもある

■意気投合した「転校生」二人

 パリから帰国した後の5月26日、愛知県豊川市。河野氏は講演で康氏とのエピソードを披露した。

 話は2017年8月にさかのぼる。フィリピン・マニラで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の外相会合カクテルを手に歓談する会場に、外相に就任したばかりの河野氏も出席した。中国の王毅(ワンイー)外相、ロシアのラブロフ外相……。並みいる外相を前に、河野氏は壁際でうろうろしていたという

 「もう一人、うろうろしている人がいた」。同じく外相になったばかりの康氏だった。その様子をこう振り返った。「新学期が始まったところに、転校生二人が入ってきた」

 康氏は国連事務総長政策特別補佐官などを経て、17年6月に外相に起用された。河野氏と同様に英語が堪能。二人はその場で意気投合し、互いに助け合うことを確認した。河野氏との会談数は、他国の外相の中で最も多いという。

■学生時代からの縁も

 河野氏は韓国への愛着もある

 5月13日、外務省で河野氏は新たに着任した南官杓(ナムグァンピョ)韓国大使の表敬を受けた。日韓関係筋によると、河野氏は南氏に片手の手のひらを広げて示し、こう切り出したという。

 「日本で韓国に理解のある政治家はこのくらい。私はそのうちの一人だ。一緒に問題を乗り越えましょう」

 学生時代の「縁」を語ったこともある。韓国大法院が三菱重工業に賠償を命じた2018年11月29日、河野氏は、事務方が用意した応答要領を持たずに記者団の前に現れ、問わず語りに昔話を始めた。

 「私がワシントンのジョージタウン大学に留学をしているときに、ちょうど後の金大中(キムデジュン)大統領がワシントン近郊にお住まいでいらっしゃいまして、金大中家でお食事を頂いたことがございます」

 その一方で、こうも語った。「(判決は)今日までの日韓両国の最も根本的な法的な基盤を完全に覆してしまうようなことで、日韓両国の関係を維持していくのが難しくなるような事態だ」

 河野氏はこれに先立つ11月6日の記者会見で、判決を「暴挙」と厳しく批判し、韓国側の激しい反発を招いていた。それを踏まえ、自らの韓国との「縁」と「思い」を語り、問題の深刻さを伝えようとしたのか。外務省幹部も「感極まっているように見えた」と振り返った

■「正直なんとかしたい」

 とはいえ、日韓関係は行き詰まり、展望が見えない。河野氏も韓国への批判と思いをない交ぜに語り、糸口を探ろうとしているようにも見える。外務省幹部はその背景に、慰安婦問題に関する日韓合意に至る過程が記憶にあるのではないかと解説する。

 合意は2015年12月、岸田文雄前外相と尹炳世(ユンビョンセ)前外相が発表した。日韓の間に長年横たわってきた問題に区切りを付けたと国際社会から評価された。外務省幹部は「河野氏には、日韓関係を最後にまとめるのは外相同士だとの思いが強い」と話す。康氏との関係だけは決定的に悪くしてはいけないと考えているという

 北朝鮮は5月9日、短距離弾道ミサイルの発射を強行し、日米韓の連携の重要性は増している。河野氏は5月25日、静岡県島田市での講演でも北朝鮮対応を念頭に「日本と韓国と米国でスクラムをがちっと組んで、北朝鮮に『おい早くやめろ』って言わなきゃいけない」と訴えた。その上で韓国との関係について、こう語った。

 「スクラムを組む相手といろいろ問題がありますっていうんじゃあうまくいきませんから、何とかしたいと正直、思っています」(鬼原民幸)


この記事は、「河野外相は対韓強硬派のようですが、実は韓国との友好をすごく望んでいる」ということをアピールするような記事なので、朝日新聞が“認めた”外相が「(労働者裁判判決で)大統領に韓国政府を代表して、責任を持って対応いただきたい」と発言して以降、韓国側から「無礼」と言われていることに対し、擁護すると同時に、日本内の対韓強硬派による支持基盤ができないようにするのが目的なんじゃないかと勘繰ってしまいますね。