(読売新聞 2019/03/21)

 和牛の受精卵と精液が中国に持ち出されそうになった事件で、大阪府警は20日、受精卵などの流出元となった畜産業の松平哲幸容疑者(70)(徳島県吉野川市)を家畜伝染病予防法違反、関税法違反両容疑で逮捕した。運搬役として逮捕されていた焼き肉店経営の前田裕介容疑者(51)らが過去に4回、中国に受精卵などを密輸していたことも判明。府警は、いずれも松平容疑者から提供されたとみて調べる。

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 捜査関係者によると、過去の分も含め、中国への持ち出しはいずれも、中国南方の沿岸部にある海南島の牧場関係者が依頼したとみられる。府警は流出ルートの全容解明を進めている。

 発表では、松平容疑者は前田容疑者らと共謀し、昨年6月29日、動物などの輸出時に必要な検疫を受けずに、金属容器に詰められて凍結された受精卵と精液(保管用ストロー計365本分)を大阪から中国・上海にフェリーで持ち出そうとした疑い。

 松平容疑者は牧場経営と、受精卵などの採取と販売が許可される「家畜人工授精所」を兼業。今回の受精卵と精液は、松平容疑者が知人を介して、前田容疑者に渡していたという。松平容疑者は「輸出されるとは知らなかった」と容疑を否認している。

 捜査関係者によると、前田容疑者は府警に対し「数年前から、何度も中国に受精卵などを運び込んだ」と供述しているという。府警は押収した資料などから、密輸は少なくとも4回にのぼると判断した。

 前田容疑者の携帯電話には、中国・海南島の牧場関係者側とやり取りした形跡が残っていた。これらの履歴や前田容疑者の供述などから、府警は、この牧場関係者が以前から前田容疑者に持ち出しを依頼し、松平容疑者には受精卵と精液を発注していたとみている

 前田容疑者は、松平容疑者から受精卵などを受け取り、ともに家畜伝染病予防法違反容疑で逮捕された知人の小倉利紀容疑者(64)に運搬するよう指示したとも説明しているという。府警は、前田、松平両容疑者が牧場関係者側から報酬や代金を受け取ったとみて捜査している。

 海南島の牧場の担当者は今月、読売新聞の取材に対し「内部調査を進めている。今のところ、事件への関与を示すものは出てきていない」と述べた。