(朝日新聞 2019/01/20)

 トランプ米大統領への「親書攻勢」によって、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は具体的な非核化に踏み出さずに、2回目の首脳会談開催の合意を勝ち取った。ただ、トップ同士の取引で事態の打開を図ろうとする背景には、国際社会の経済制裁の影響で厳しさを増す経済状況があるようだ。

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 「正恩氏の政治資金が、今年の上半期にも枯渇し始めるかもしれない」。韓国の北朝鮮経済の専門家の間では最近、こんな可能性がささやかれている

 政治資金とは、党や軍などの幹部に贈り物などを渡し、忠誠を誓わせる統治のためのお金だ。専門家の分析では、計30億~50億ドル(約3300億~5500億円)あるといわれるが、制裁の影響で減り続けているとみられる

 輸出などで外貨を稼ぐ力も弱まっている。韓国貿易投資振興公社(KOTRA)によると、2017年の北朝鮮の輸出額は約17億7千万ドル(約1960億円)で、前年比37・2%減少。18年はさらに落ち込む見通しだ。

 厳しい経済状況を打開したいとの正恩氏の思いは、1日に行った新年のあいさつで垣間見えた。強調したのは朝鮮戦争の休戦協定を平和協定に転換することと経済制裁の緩和だった。

 北朝鮮は、米国との非核化交渉が行き詰まっても、終戦宣言や平和協定の議論を続けていれば、米国が攻撃を仕掛けてくる事態は避けられると読んでいるようだ。軍事的な脅威が減れば経済の改善に集中できる。正恩氏は1日、2020年までを目標にした国家経済発展5カ年戦略の推進も訴えた。

 制裁が緩和されれば、開城工業団地や金剛山観光といった外貨収入が見込める事業の再開にも道筋がつく。正恩氏は1日、両事業の無条件再開を提案。これを受け、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領も10日の記者会見で、米国など国際社会との調整に意欲を示した。韓国政府は米朝首脳の再会談が実現した場合、3月末から4月にかけて南北首脳会談を行う方向で調整を進める。韓国と北朝鮮が両事業を制裁の例外とするよう米国に求める可能性もある。

 北朝鮮が米国から平和協定や制裁緩和を譲歩として引き出すには、非核化を進めて米国を納得させる必要がある。北朝鮮は昨年9月の南北首脳会談で、東倉里(トンチャンリ)のミサイル発射場の完全撤去や、米国の相応の措置が受けられることを条件にしつつ寧辺(ヨンビョン)核施設の解体を提案した。今後の米朝協議で、これらを譲歩の材料に使う可能性がある。

 韓国外国語大の崔鎮旭・客員教授(元統一研究院長)は再会談開催の合意について、「正恩氏が米国の譲歩を勝ち取った格好だ。中国と対話が続き、南北経済協力も期待できるなか、指導者として(国内に)十分なアピールができたとの判断で応じたのだろう」と分析する。

 ただ、核兵器や施設などの詳細な非核化リストといった米国の要求については「北朝鮮が、さらなる非核化に踏み込む可能性はほとんどない。すでに生産した核兵器や核物質を使い、米国に圧力をかけ続けるだろう。一方で韓国政府は南北関係を重視するあまり、結果的に北朝鮮とともに米国に圧力をかける状況に陥っている」と懸念を示した。(ソウル=牧野愛博)


(聯合ニュース 2019/01/21)

 北朝鮮がメディアを通じ、中断している開城工業団地の操業と金剛山観光事業の再開問題に関する韓国政府の対応を連日求めている

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党委員長)は1日に発表した「新年の辞」で、前提条件や対価なしに南北経済協力事業の開城団地や金剛山観光事業を再開する用意があると表明した。ただ、国際社会の対北朝鮮制裁が維持されているため、韓国は再開に向けた環境整備が必要との立場を示している。

 北朝鮮の対韓国窓口機関、祖国平和統一委員会のウェブサイト「わが民族同士」は21日、「南朝鮮(韓国)当局は新年の辞で示された北南関係に関連する具体的な提案には肯定的だが、履行については『頭の痛い宿題』とし、米国と協議してみなければならないというあいまいな立場をみせている」として、「南朝鮮はその奥深い意を察し、応じなければならない」と促す文章を掲載した。

 また、別の記事では「開城工業地区と金剛山観光は北南の和解や協力の象徴であり、その再開に関する態度は北南宣言の履行の意志をみせる試金石」として、「外国勢力に振り回されては北南関係は一歩も前進できない」と主張した。

 海外広報用週刊紙「統一新報」なども20日、開城団地や金剛山観光の再開について韓国当局が優柔不断な態度を示しているとして、積極的に対応するよう求めた