「日本海」韓国と協議迫る  国際機関 呼称巡り日本政府に
(読売新聞 2019/01/18)

 韓国が日本海の呼称に「東海」を併記するよう求めている問題を巡り、日本海の単独呼称が国際的に認知されている根拠のひとつである国際水路機関(IHO)の指針について、同機関が、改訂を望む韓国との協議を日本に要求していることがわかった。日本は併記につながりかねない改訂論議に消極的だったが、IHOは強い態度で迫っているといい、厳しい状況に追い込まれる恐れがある

 IHOは、世界の海洋名や境界などが記され、各国の海図作製の指針となる刊行物「大洋と海の境界」を出版している。外務省によると、1929年の初版から現行版(1953年作成)まで日本海の海域には「Japan Sea」と一貫して記載されている。

 一方、韓国は92年に国連の会議で日本海の名称を批判し、呼称問題を国際社会に初めて提起。以後、「日本海は日本の植民地支配の結果広がった呼び名」などと主張し、当初は「東海」への改称を、近年は併記を訴え続けている

 日本は「日本海の名称は19世紀から国際的に使われており、韓国の主張に根拠はない」などと反論。2004年には、国連が日本の問い合わせに「日本海が標準的な名称」と回答した。

 韓国は近年、指針が1953年から変わっていないことに着目し、改訂を求めるようになった

 IHOなどによると、2017年4月にIHO本部があるモナコでの総会で、指針の今後の取り扱いについて議論され、次回20年の総会でIHOが報告を行うことが決定。その一環として、IHO事務局は次回総会までに日韓両国と、韓国と同じく改訂を求める北朝鮮の計3国で非公式協議を行うよう求めた

 外交筋によると、日本は協議に消極的だったが、18年秋にIHO事務局が「協議に応じなければ、改訂だけでなく、廃止も検討する」と、強い調子で対応を求めたという。このため、日本政府は協議に応じる方向で調整しているとみられる。

 IHOのマティアス・ヨナス事務局長は、読売新聞の取材に秘書を通じて回答。関係国に非公式協議を行うよう働きかけていることを認めた。次回総会では自らがこの件の報告を行う意向も明らかにしたが、「敏感な問題であり、次回総会まで一切の声明を発表するつもりはない」としている。


日本海呼称 韓国 官民で「東海」攻勢  国際機関要職に次々就任
(読売新聞 2019/01/18)

【ソウル=水野祥】日本海の呼称問題を巡り、国際水路機関(LHO)が世界の海洋名を記した指針改訂の是非を韓国と協議するよう日本に求めていたことが明らかになった。韓国は東海の併記を目指し、国際社会で官民挙げて攻勢を仕掛けており、今回の動きもそうした流れの中にある。

 2017年4月にモナコで開かれたIHO総会。日本が外務省などから約10人を派遣したのに対し、韓国は外交省や海洋水産省の職員や有識者ら約30人を送り込んだ

 韓国は東海をPRする展示ブースを設け、モナコ元首ら海外要人を多数招き、併記の必要性を訴えた。結局、この総会で、60年以上不変だった指針「大洋と海の境界」改訂の是非について、関係国が非公式に協議し、次回総会(20年)で報告されることが決まった。

 韓国政府は1992年に国連地名標準化会議で日本海の呼称に異議を唱えて以来、国際社会で「植民地支配の結果広がった」などとする主張を繰り返してきた。

 民も連動する。民間団体の会員らは各国の地図や学校教科書、メディアの記事などをチェック。日本海単独表記があれば是正を求めるメールを送りつけている。09年の韓国の調査では、世朝の地図の約28%が東海を併記しているという

 日本も手をこまねいていたわけではない。外務省は米国や英国、フランスの図書館などで2000枚以上の古地図を調査し、日本が鎖国時代の19世紀初頭から海外で日本海と呼ばれていたことを突き止め、ホームページで公表している。

 だが、韓国の攻勢は激しさを増す。15年以降、各国の大陸棚延長申請を審査する「国連大陸棚限界委員会」の委員長や海底地形の名称を決める国際機関「海底地形名称小委員会」の委員長など、海洋権益や名称に関する国際機関の要職に韓国人が次々と就任している

 政府関係者は「昨今の動きを踏まえると、併記が認められかねない」と危機感を隠さない

◇日本毅然と訴えを

 IHOは船舶の安全な航海のため、海図などの改革を進めることを目的に設立された国際機関だ。だが、韓国が求める改訂はIHOが「敏感な問題」と認めるように、呼称問題と結びついた政治案件と化している。

 韓国海軍による自衛隊機へのレーダー照射や徴用工問題などで日韓関係は感化の一途をたどっている。ナショナリズムを刺激する呼称問題は両国の関係を一層険しいものにしかねないが、IHOの目的に照らしても韓国の主張が適当でないことを日本は協議の場で毅然と訴える必要がある。

 指針の改訂は海洋名に使われている国の名が変わるなどの合理的な理由に基づくべきだ。IHOにも実態に即した判断が求められる。

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