(朝日新聞 2018/11/21)

 韓国政府は21日、日韓慰安婦合意に基づき、日本政府が10億円を拠出して韓国政府が設立した「和解・癒やし財団」の解散を進めると発表した。日本政府の同意はなく、外務省は駐日韓国大使を呼び、抗議した。韓国は拠出金の取り扱いについて日本と協議するとしているが、合意できるめどは立っていない

日韓関係は韓国大法院(最高裁)が10月末、新日鉄住金に元徴用工への賠償を命じて以来、冷え込んでいる。韓国外交省は21日、「合意の破棄や再交渉を求めない立場には変わりない」と表明したが、合意の柱だった財団の解散表明で合意履行は困難となり、日韓の間でさらなる緊張は避けられない状況だ。

 財団解散は21日、主管する女性家族省が元慰安婦や支援団体などの意見を聴いたうえ、「財団事業の終了を決定した」と発表した。同省関係者によると、法的な手続きには4カ月から1年ほどかかるという

 日本が政府予算から出した10億円をめぐっては、韓国内の反発から韓国政府が今年7月、同額にあたる予算計上を決定。同省によると、元慰安婦らに現金支給したあとに残った約57億ウォン(約5億円)は今後、韓国政府が支出する予算と合わせ、元慰安婦や関係団体などの意見を反映したうえで、「合理的な処理方法」を準備する。日本政府と協議するともしている

 ただ、韓国大統領府に近い関係者によると、韓国はすでに、国連が行っている女性に対する暴力の治癒プログラムにこの資金を拠出する案を示したが、日本側から返事はないという

 日韓は国交正常化50年にあたる2015年末、安倍晋三首相と当時の朴槿恵(パククネ)大統領の政治決断を受け、当時の岸田文雄外相と尹炳世(ユンビョンセ)外相が会談。慰安婦問題を「最終的かつ不可逆的解決」することで合意した。共同記者発表した合意の柱の一つが財団だった。

 合意には財団設立のほか、在韓日本大使館近くの慰安婦問題を象徴する少女像について、韓国が適切に解決するよう努力することをうたい、この問題で両国が国際社会で互いの非難や批判を避けることが含まれている。財団解散発表で合意全体がどう扱われていくのかも焦点となる。

 安倍晋三首相は21日、「3年前の日韓合意は最終的かつ不可逆的な解決だ。日本は国際社会の一員としてこの約束を誠実に履行してきた。国際約束が守られないのであれば、国と国との関係が成り立たなくなってしまう。韓国には国際社会の一員として責任ある対応を望みたい」と述べた。首相官邸で記者団に語った。(武田肇=ソウル、又吉俊充)


韓国はどうしても「日本から賠償を受けていない」としたいようですが、財団に日本政府が拠出し、財団を通じて、合意時点での生存者47名のうち34名が1億ウォン(約1千万円)、死亡者199名のうち58名の遺族が2千万ウォンをそれぞれ受け取った事実は、あとから政府予算を用意したところで(韓国脳以外では)変わらないのにね。

条約で終わったものを共同宣言という文書で謝罪すれば、次の大統領でまた繰り返される可能性がある。どこかの時点で、過去には今後一切触れないという決断を日本の首相がすべきだ〉と20年前の日韓共同宣言の翌日に発言した安倍首相には、当時の信念のまま頑張ってほしいですね。


(平成30年11月21日(水曜日)13時00分 於:本省大臣接見室前)

冒頭発言
【河野外務大臣】本日韓国政府が「和解・癒やし財団」の解散に関する方針を発表したものと承知をしておりますが,今般の発表は日韓合意に照らして問題であり,日本として到底受け入れられません。日韓合意は外相間で協議を行い,直後に首脳間でも確認し,韓国政府としての確約を取り付けたものであり,たとえ政権が変わったとしても責任を持って実施されるべきものでございます。この合意は国際社会からも高く評価されたものであり,合意の着実な実施は,我が国はもとより,国際社会に対する責務でもございます。日本はこの日韓合意のもとで約束した措置をすべて実施してきており,国際社会が韓国側による合意の実施を注視している状況でございます日本としては,引き続き韓国側に日韓合意の着実な実施を求めてまいります。以上の日本の立場につきましては,先ほど秋葉次官から李洙勲(イ・スフン)在京韓国大使に対し,しっかりと申し入れを行ったところでございます。なお,この財団はこれまで合意時点での生存者47名のうち,34名に対し,また死亡者199名のうち,58名の遺族に対し,資金を支給しており,多くの元慰安婦の方々の評価を得ていることについては,付け加えさせて頂きます。私からは以上です。

質疑応答
【記者】日本政府が財団を設立するために拠出した10億円についてですが,これについて韓国側とどのように取り扱うか協議をするお考えはございますか

【河野外務大臣】今後,この日韓合意の履行のために適切に使われ,また日本政府の意向に反した使われ方がしないように強く求めてまいります

【記者】確認ですけれども,韓国側は今回財団の解散についてはふれましたが日韓合意そのものの破棄については言及していません。現時点ではその日韓合意そのものは当然生きているというご認識でしょうか。

【河野外務大臣】李洙勲(イ・スフン)大使からも合意を破棄することはない,再交渉を求めることはないという韓国側の立場について明確なご発言がありました。その上で,日本側の申し入れを本国に伝えるということでございましたので,この国際約束である日韓合意というのは両国がこれからもきちんと守っていく,そういうものだと思いますし,国際社会はこの日韓合意を非常に高く評価している,そういう状況に何ら変わりはないと認識しております

【記者】今回の解散を受けて大臣自ら康京和(カン・ギョンファ)外相ですとかどなたかに電話会談等される予定はございますか。

【河野外務大臣】すでに日本側の立場は在京大使を通じて申し入れをしておりますので,これは韓国政府が当然適切に対応されるものと思っております。

【記者】申し入れとおっしゃいましたけど,これ抗議とは若干・・。

【河野外務大臣】もちろん,抗議という意味もございます。

【記者】先日の徴用工判決に続き,未来志向の関係を志向すると言っている中でこういった対応が出ることについて今後の日韓関係についてどうお考えですか。

【河野外務大臣】国際法を尊重する国と国との約束事をきちんと守るというのが,これはもう国際社会で生きていく上での最も基礎的な事柄でありますので,国際社会の中で韓国がしっかりと立ち位置を得るためにも,韓国側がこうした国際約束をきちんと守るということが非常に大切なことだというふうに思っております。そのことは韓国政府もしっかりと認識をされているものと考えております。

【記者】今後の日韓合意についてですね,韓国外交部は日本政府とも協議したいということをおっしゃってますけども,この点については日本側としては協議には応じる姿勢はありますか。

【河野外務大臣】まだ韓国政府から何もございませんので,韓国側がしっかり対応してくれるものと思っておりますが,必要なら話し合いをしていきたいと思います。ただし,このお金についてはですね,日韓合意に基づいて日本政府が拠出したものでございますから,日韓合意の履行のために使われるべきものであり,日本政府の意向に反するような使われ方はしないというのが,大前提でございます。ありがとうございます。