(朝鮮日報 2018/10/31)

 韓国大法院(最高裁に相当)全員合議体は30日、日本統治時代の強制徴用被害者に対して日本企業が損害賠償を行うべきとする最終判決を下した。2005年に徴用被害者4人が日本の新日鉄住金(当時の日本製鉄)に損害賠償を求めた裁判の上告審で、大法院は新日鉄住金に対し1億ウォン(約1000万円)の賠償金を支払うよう命じた一審の判決を確定した。最初の訴えから13年8カ月を経て出た最終判決だ。一審と二審は当初「賠償の時効が過ぎた」などの理由で原告敗訴の判決を下していた。ところが12年に大法院は「植民地支配と直結した違法行為による損害賠償請求権は、1965年の韓日請求権協定には含まれない」として一・二審を覆す判断を下し、それから今回の最終判断が出るまで6年の時間が過ぎた。その過程では「裁判を意図的に遅らせている」との疑惑も表面化した。

 裁判の争点は、1965年に韓国と日本が国交を回復するに当たり締結した請求権協定に、強制徴用被害者に対する賠償金が含まれていたかどうかだった。協定には「請求権は完全かつ最終的な解決」と明記されており、「賠償」という言葉はない。当時日本がこの「賠償」という言葉の使用を拒否したからだ。しかし2005年に当時の盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は日本から提供された資金のうち、無償3億ドル(現在のレートで約340億円)は徴用被害者への補償が考慮されたものと判断した。強制徴用に対する損害賠償問題は事実上終わったという見方だった。その判断を下した官民合同委員会の委員には当時大統領府民政主席だった文在寅(ムン・ジェイン)大統領も加わっていた。ところが今回大法院はそれとは異なった判決を下したのだ

 今回の判決をきっかけに、今後次々と損害賠償訴訟が続く可能性が出てきた。当時の日本による違法行為に対する損害賠償請求訴訟のドアが開かれたのだ。これまで首相室が把握している徴用被害者は15万人近くに上る。生存者や遺族が、日本企業が韓国国内に保有する資産の差し押さえに乗り出すことも考えられる。実際に差し押さえ可能な資産はほぼないようだが、国際的な訴訟の嵐が吹き荒れる可能性も排除できない。

 日本の外務省は「韓日両国の友好関係における法的基盤を根本から覆す判決」として駐日韓国大使を呼び抗議した。日本側は外交戦争も辞さない構えで、韓日関係は再び激しい嵐に見舞われることになった。今東アジアでは北朝鮮の核問題と米中による貿易戦争が同時に起こっている。歴史問題や領土問題の対立で互いに敵同士だった中国の習近平・国家主席と日本の安倍首相は先日笑顔を見せながら握手したが、これは歴史問題と外交あるいは国益を区別するものだった。韓国政府は司法の判断を尊重する一方で、韓日間の信頼を改めて確認する手立てを考えねばならない。両国の首脳が今後の関係について虚心坦懐(たんかい)に話をする場を設けることも一つの方法だろう


(中央日報 2018/10/31)

  日帝強占期における強制徴用被害者に日本企業が1億ウォン(約994万円)ずつ(遅延損害金は別途)賠償しなければならないという大法院(最高裁)の判決が出た。これで強制労働に青春を捧げ、戦争で犠牲になった被害者および遺族が慰謝料を受ける道が開かれた。この裁判は被害者4名に限定されたわけだが、大法院の決定であるだけに韓国裁判所に係留されている約10件の類似訴訟も似たような結論に至るものと予想される。司法的賠償手続きを踏まなかった他の被害者の訴訟が相次ぎ行われる可能性もある。だが、今回の裁判の被告である新日鉄住金(旧・新日本製鉄)は判決直後、これに承服しないという立場を明らかにした。安倍晋三首相も「国際法に照らしてあり得ない判断」としながらこの判決を受け入れないという態度を見せた。今後、韓日関係は最悪の局面を避けにくくなった。 

  大法院全員合議体の多数の意見は「損害賠償請求権は不法植民支配および侵略戦争の遂行と直結した日本企業の反人道的不法行為を前提にしたもので、強制動員に対する慰謝料請求権は韓日請求権協定の適用対象に含まれない」ということだ。裁判所は「請求権協定の交渉の過程で日本政府は植民支配の不法性を認めないまま、強制動員被害の法的賠償を基本的に否定した」と説明した。1965年にこの協定を締結する時、強制動員被害者に対する賠償問題は含まれなかったという判断だ。このような見解に異論の余地はある。最高裁判事2人が反対の意見を示した。だが、最高裁判事全員が参加した韓国裁判所の決定は権威と重さを持っている。 

  韓国政府に申告された強制動員被害事例は22万件を超える。韓国政府が根拠資料を通じて認めた被害者は約7万人だ。中国と北朝鮮にも被害者がいる。日本側では前例を残さないためにも韓国裁判所の判決を受け入れないだろう。日本側はこの事件を第3国が介入する仲裁委員会(韓日協定に明示された紛争調整機関)を通じて解決しようと要求し、あるいは国際司法裁判所(ICJ)に提起する可能性がある。そのような場合、最低限、数年間持続する紛争になる。 

  韓日両国は対立がどこまで拡大するかわからない状況を迎えた。慰安婦被害合意をめぐる論議ですでに不都合な関係に置かれている。日本政府は強制動員が不法植民支配から始まったものであり、かつて真の謝罪の姿勢を取らずこの問題を悪化させたという点を再確認しなければならない。今回の判決に対する報復で他の協定の破棄のような感情的な対応を取ってはならない。韓国政府も韓日協定締結当時、個別被害者に対する賠償問題をまともに認識できないまま曖昧な協定を結んだという点を反省する必要がある。両国いずれも未来を考えるべきだ。経済・国際政治・安保面で互いに緊密に関係している隣国だ。両国政府は冷徹な現実認識を基に強制動員被害者に対する賠償問題の実質的解決方法を探るべきだ。外交的破局の道に入ることはあってはならない


(東亜日報 2018/10/31)

大法院(最高裁)全員合議体は30日、日本による韓半島統治時代に新日鉄住金(旧新日本製鉄)に動員された元徴用工が起こした損害賠償請求訴訟の上告審で、元徴用工の個人請求権を認め、1人あたり1億ウォン支払うよう命じた。大法院は、「1965年の韓日請求権協定で個人の賠償請求権まで消滅したと見ることはできない」と明らかにした。大法院は、新日鉄住金の請求権消滅時効の主張は「信義誠実」の原則に反するという理由で受け入れなかった。

今回の判決は、2012年に大法院1部の上告審の結論に従ったものだ。当時、大法院1部も韓日請求権協定の交渉過程で、日本政府が植民支配の不法性を認めず、強制動員被害の法的賠償を否定したので、日本の不法行為による損害賠償請求権は韓日請求権協定の適用対象に含まれないと見た。今回の判決で元徴用工が実際に補償を受けることができるかは明らかでない。日本の最高裁判所はこれに先立ち、元徴用工が起こした訴訟で個人の請求権を認めず、日本で強制執行することはできない。ただ、韓国の大法院が日本の韓半島不法支配と反人道的行為に対する司法的な断罪を再確認したという点で意味がある

今回の判決で、05年2月に初めての提起された13年にわたる強制徴用被害者訴訟は終わった。これまで訴訟を起こした元徴用工4人のうち3人が死亡し、98歳のイ・チュンシクさんだけが生存している。遅い判決に遺憾が残る。特に、梁承泰(ヤン・スンテ)元大法院長は、上告審を5年間も遅らせた。その間、大統領府との協議もあった。その協議が裁判取引に該当するのか、外交的事案に対する政府意見の照会なのかは今回の判決とは独立して事実関係が究明されなければならない。

30日に判決が下されると、日本政府は直ちに遺憾を表明し、李洙勲(イ・スフン)駐日大使を外務省と呼んで抗議した。河野太郎外相は談話で、「韓国が直ちに国際法違反の状態を是正することを含め、適切な措置を講ずることを強く求める」と明らかにした。日本は国際司法裁判所(ICJ)提訴など強硬対応も警告した。しかし、このような対応は過去の過ちに対する反省と謝罪はなく右傾化に進む「危険な普通の国」に対する周辺国の憂慮だけを生むことを自覚しなければならない

今回の判決で韓日関係は悪化する可能性が高い。韓日慰安婦合意をめぐって対立が続き、最近、済州(チェジュ)観艦式の旭日旗論議まで起こり、韓日には風が静まる日がない。来年には3・1運動と臨時政府樹立100周年を迎え、葛藤要因がさらに大きくなる可能性もある。これまで韓日関係では外交よりも政治が、長期的国益よりも短期的な国民感情に振り回されてきたのも事実だ。しかし、両国いずれも関係悪化がもたらす損害を承知している。葛藤を管理して日本と過去の和解を引き出す韓国政府の外交力が重要な時だ


日本政府としては、昨日の「外相談話発表」、「駐日大使招致」(イ・ミョンバク大統領の独島上陸以来らしい)、今日の「外相電話会談」でとりあえず日本の姿勢を示し、当面、韓国政府の対応方針が決定されるのを待つようですね。