(朝日新聞 2018/10/25)

 北朝鮮が、飲料や健康食品、電子機器など約900の輸出用品を掲載したカタログ「朝鮮商品」を出した。これまで出したカタログと比べてデザインが洗練され、米国製品の模倣とみられるものもあった。金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長による経済改革の成果といえそうだが、外貨獲得につなげたい思惑も透けてみえる。
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 4月に朝鮮国際貿易促進委員会が発行。この委員会は、事務所を置く中国やロシアなど31カ国を中心に売り込みを行っている模様だ。5月の平壌春季国際商品展覧会や8月の羅先(ラソン)国際商品展示会で配られたとみられる。

 韓国のIBK企業銀行の曺奉鉉(チョボンヒョン)研究委員によれば、ほとんどの商品をカラーで紹介したカタログは初めてで、「デザインも洗練されており、質の向上を感じる」という

 正恩氏は経済改革として、企業ごとの独立採算制や、一定金額を国に納めれば残りは自由に使える「インセンティブ制」を導入した。企業はノルマ達成よりも市場で売れる製品の生産に力を入れるようになったという

 カタログの最初のページに掲載されたのが、北朝鮮の商品として最も有名な「開城高麗人参」。歴史や効能を詳しく説明し、粉末や丸薬、お茶など多様な商品を紹介している。

 朝鮮中央通信が昨年10月29日、正恩氏夫妻が視察したと報じた平壌化粧品工場の口紅やクリームなどの製品もあった。正恩氏は当時、「質が良いだけではなく、容器の形はもちろん、包装箱も実にきれいだ」と激賞していた。

 カタログには、日本でも効果をめぐって広告が誇張だとの問題も指摘されている「水素水」も含まれているが、「21世紀 奇跡の健康水」と宣伝。「抗がんや血液浄化に効果がある」とした。

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「装着すれば脳血栓を防ぐ」とうたったブレスレットもあった。
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「ココア炭酸水」は、黒い液体に赤いラベル、キャップのデザインまでがコカ・コーラにそっくり。訪朝経験がある韓国の専門家によれば「味は全く別物」という。
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 韓国貿易投資振興公社(KOTRA)によれば、2017年の北朝鮮の輸出額は約17億7千万ドル(約1964億円)で、前年より37・2%も落ち込んだ。17年8月の国連安全保障理事会決議で石炭や海産物などが全面禁輸になったことが響いた。曺氏は「カタログに掲載された商品を何とか積極的に売り出したいのだろう」と語った。(ソウル=牧野愛博)