(北海道新聞 2018/09/29)

 高校無償化を巡り、国が朝鮮学校を対象外としたことの是非を問う裁判で、大阪高裁が、原告の大阪朝鮮高級学校の請求を認めた一審判決を取り消し、逆転敗訴とする判決を言い渡した

 同様の訴訟5件のうち、一審で朝鮮学校側が勝訴したのは大阪のみだが、初の高裁判断でこれも退けられた。判決は、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の影響を重く見る国の主張を追認した。

 しかし、無償化によって教育の機会均等を図る制度の趣旨を踏まえれば、今回の判断には疑問が拭えない

 裁判の争点は、無償化の基準となる「適正な運営」の要件だ

 高裁は、幹部の人事交流など総連との密接な関係を踏まえ、教育基本法の禁じる「不当な支配」を受けている疑いがあるとした

 一審は、こうした総連との関係の存在を認めた上で、「在日組織が民族学校を援助するのは不自然とは言えない」としていた。

 むしろ一審が問題視したのは、無償化の適用の可否を国が恣意的に判断することである。「教育への過度の行政介入を容認することになりかねない」からだ。

 文部科学省は、朝鮮学校が無償化適用の審査を受ける根拠となる条文を省令から削除したが、乱暴と言わざるを得ない。

 削除を違法と認定し、適正な運営の判断は財務状況など客観的な材料で行うべきだ、とした一審の内容はうなずける

 そもそも高校無償化は民主党政権下の2010年に始まったが、朝鮮学校への適用については、当初から賛否が分かれた。

 12年末に政権が交代し、朝鮮学校を適用対象から外す方針が示され、当時の下村博文文科相は拉致問題の停滞を理由に挙げた。

 北朝鮮の拉致行為は重大な犯罪だが、その解決は政治の責任であり、教育に絡めるのは筋違いだ。

 高校無償化から8年、各地の朝鮮学校では負担の重さから生徒の流出が加速し、統廃合が進む。

 朝鮮学校の扱いを巡る政府の強硬姿勢が、在日韓国・朝鮮人などを「排除」する風潮を助長してきたことは否めまい

 朝鮮学校では韓国籍や日本国籍の生徒も学び、卒業生はともに日本社会を担う一員となっている

 子どもに民族教育を受ける権利を保障するのは国際的な流れだ。これを守るため、朝鮮学校も一層運営見直しを進めるべきだ

 生徒の救済を第一に、国と朝鮮学校の双方に努力を求めたい


(読売新聞 2018/09/30)

 適正に学校が運営されているのか、疑念が拭えない以上、公金の支給を認めないのは当然だ。

 朝鮮学校を高校授業料の無償化対象から除外した国の処分の是非が争われた訴訟で、大阪高裁が処分を適法と認めた。無償化対象にするよう命じた大阪地裁判決は取り消された。

 同様の訴訟は計5地裁・支部に起こされた。判決は5件目で、高裁では初めてだ。国の処分を違法としたのは、大阪地裁だけだった。無償化を認めない司法判断が定着しつつあると言えよう

 無償化制度は民主党政権だった2010年に導入された。公立校以外にも国が各校に就学支援金を支給している。外国人学校も、文部科学相の指定を受ければ対象としたが、自民党の政権復帰後の13年に朝鮮学校は除外となった。

 北朝鮮や在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)との密接な関係が疑われ、就学支援金が授業料に充てられない懸念があったためだ

 朝鮮総連は、北朝鮮の大使館としての役割があると指摘される。北朝鮮の意向に沿って非合法活動に関与しているとみて、公安調査庁が調査や監視の対象にしてきた事実は無視できまい

 教育基本法は、教育に対する不当な支配を禁じている。一連の訴訟では、朝鮮学校と朝鮮総連の関係をどのように捉えるか、が判断の分かれ目になった

 朝鮮総連傘下の出版社が発行した教科書を使用している。教科書には、北朝鮮の指導者を礼賛する内容が含まれる。大阪高裁はこうした事実を重視し、教育の自主性を歪(ゆが)める不当な支配を受けている疑いがある、と結論付けた。

 教育基本法の趣旨に照らせば、うなずける判断である。朝鮮学校側は「拉致問題など、教育と無関係の政治的、外交的理由で除外された」とも主張したが、大阪高裁は「不当な支配があるかどうかを検討した結果だ」と一蹴(いっしゅう)した。

 「学校は自主的に運営されている」という見解を示した大阪地裁は、運営実態に対する認識が甘かったのではないか

 朝鮮学校は学校教育法上、予備校などと同様の「各種学校」の扱いだ。日本の幼稚園、小中学校、高校に相当し、昨年5月時点で休校中の5校を含めて66校ある。

 一部の自治体は、住民との交流費などとして補助金を支給してきたが、朝鮮総連との関係を理由に見直しが相次いでいるという

 地域の理解を得るには、朝鮮学校が財務状況の透明化を進め、情報公開を徹底する必要がある

2018年09月27日
2018年04月14日