(朝鮮日報 2018/09/25)

 韓国与党・共に民主党やその周辺がこのほど、動画共有サイト「ユーチューブ」などを通じて1人で撮影・編集・動画投稿することにより情報を提供する「インターネット1人放送局」を規制する放送法改正に着手したことから、政治的論議が高まっている。同党は「1人放送局ではフェイク・ニュース(偽のニュース)が幅を利かせているので、地上波放送局や総合編成チャンネルのように規制が必要だ」と主張している

 しかし野党では、「ユーチューブで人気を集めている政治・時事関連1人放送局のほとんどが、保守系や野党系のため、規制しようとしているのではないか」と言っている。また、「インターネット・ニューメディア規制は国家主義的な発想であり、世論の口を封じようとするものだ」と反発する声も上がっている。

 共に民主党の金聖洙(キム・ソンス)議員や正義党の秋恵仙(チュ・ヘソン)議員らが所属している国会言論公正性実現会は先月24日、1人放送局も放送法の枠に入れることができるようにする法律改正案の草案を公表した。1人放送局は現在、ユーチューブなど放送プラットフォームを提供する事業者が自主規制指針を作成・管理している。しかし、放送法に1人放送局の規制条項を盛り込むことになれば、地上波放送局などと同様、放送通信委員会が罰金や放送禁止などの強度な制裁を課すこともできる

 共に民主党の朴洸温(パク・クァンオン)最高委員は同日の党会議で、「ユーチューブやフェイスブックなどでフェイク・ニュースが流れていることについて、政府でも国会でも必ず根絶するという強力な意志を持つべきだ」と述べた。だが、国会やその周辺では「今回の放送法改正への取り組みは保守系の1人放送局を狙ったものではないか」と指摘されている。事実、ユーチューブでチャンネル登録者数が多い1人放送局はほとんどが保守系のもので、進歩系のものはインターネット放送「ナヌン・コムスダ(私は小ざかしいの意、通称ナッコムス)」メンバーだったキム・オジュン氏や一部の共に民主党議員など少数の1人放送局にとどまっている。

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 代表的な1人放送局の1つ、「鄭奎載(チョン・ギュジェ)TV」は、韓国経済新聞の主筆だった鄭奎載氏が放送しているもので、チャンネル登録者数が24万人を超える。毎日1時間の生放送は同時アクセス人数が数千人に達し、通算再生回数200万回に達する動画もある。未来経営研究所のファン・ジャンス所長の「ファン・ジャンスのニュース・ブリーリフィング」、「月刊朝鮮」の代表だった趙甲済(チョ・ガプチェ)氏の「趙甲済TV」、シン・ヘシク独立新聞代表の「神の一手」などもチャンネル登録者数が10万人以上に達する。

 これら1人放送局には「文在寅(ムン・ジェイン)大統領の所得主導成長は失敗した」「南北交渉は結局、金正恩(キム・ジョンウン)を利するばかりだ」など、現政権に批判的な内容が多い。鄭奎載TVでは先日、「本当の大統領府のあるじは誰なのか」「文大統領の健康をめぐって議論がある」という内容を放送した。与党はこうした発言が「フェイク・ニュース」に該当するため、規制の死角にあるインターネット放送の管理が必要だと主張している。

 しかし、野党は「保守系の口を封じようとしている」と反発している。国会科学技術情報放送通信委員会所属の野党・自由韓国党・朴成重(パク・ソンジュン)議員は「『ナッコムス』がフェイク・ニュースを流しても、李明博(イ・ミョンバク)・朴槿恵(パク・クネ)政権は規制しようとしたことがない。ユーチューブで自分たちを批判しているから法律で口を封じようとしているものだ」と語った。共に民主党は以前、ナッコムスなど与党に近いインターネット・ニューメディアが人気を集めた時、これに積極的に出演して擁護してきた。野党関係者は「与党の典型的なご都合主義だ」と言っている

 一部では、地上波放送同様に1人放送局を規制するのは非常識だとの声もある。鮮文大学のファン・グン教授は「インターネット通信システムに基づく1人放送局を放送サービスと見なすのは皮肉だ。表現の自由の侵害の問題もあるし、ユーチューブは韓国企業ではないことから、実際の規制が可能かどうかも未知数だ」と言った。国会科学技術情報放送通信委員会に所属する共に民主党のある議員も「インターネット1人放送局について『放送形態を備え、規制が必要だ』というなら、『一般市民が動画を作ってソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の自身のアカウントに掲載することは放送と何が違うのか』という批判を招く素地がある」と話している。


いわゆる左派や進歩と言われる政権や勢力が言論監視・弾圧をはばからないのは「自分たちが正義」という思い込みが強いからですかね。