(ZAKZAK 2006/05/17)

 在日本大韓民国民団(民団)と在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)のトップ同士が17日午前、共同声明に調印し、和解した。50年余りの時を経た、歴史的な1日と伝わるものの、専門家たちは警戒心を緩めない。朝鮮総連による民団の乗っ取り、北への資金移動の加速…。米国の海外資産凍結で将軍さまは“金欠状態”になるなか、大きく舵を切った総連。小泉訪朝で拉致を認めて以来、失望感から組織離れが指摘された総連だったが、“死んだふり”だったのか。

 民団と総連は、1945年設立の在日本朝鮮人連盟(朝連)がルーツ。46年結成の民団の前身・在日本朝鮮居留民団が反共主義者らの集まりだったのに対し、総連は北の金日成(キム・イルソン)政権を支持するグループが55年に結成、反目してきた。

 59年に始まった総連主導の北への帰国運動では、民団が阻止行動を行うなど激しく衝突。イデオロギーの対立だけではなく、地方参政権の付与をめぐって意見が割れたほか、民団が脱北者支援センターを運営していることに総連が最近まで反発するなどしていた

 それが、突然の和解。横田めぐみさん=拉致当時(13)=の父親、横田滋さん(73)の訪韓にぶつけ、拉致問題を希釈する目的もあったとの見方もあるが、その裏側には何があったのか。

 「和解でもなんでもなく、総連による民団の乗っ取りが成功したということ。トップ会談は、そのセレモニーのようなものですよ」

 北朝鮮問題に詳しいジャーナリストの恵谷治氏は意外な見解を示す

 「拉致問題で金正日(ジョンイル)総書記が小泉純一郎首相に謝罪して以降、総連の会員離れが進み、民団に入るケースが増えた。民団へのくら替え組には、北朝鮮に嫌気がさした会員が多かったが、そのなかには、そのフリをした偽の会員も多数含まれていた」と衝撃的な内容を明かす。

 偽会員たちは民団内で思想の共有を進め、支部長などポジションを確保しながら勢力を拡大。「死んだふりをしながら、民団の総連化を進め、平壌の思惑通りに民団を動かせるまでにした。歴史的というのは表向きのことで、内情はまったく違う」と恵谷氏は切って捨てる。

 トップ会談をこの時期にしたのも、「あえて横田さんら拉致被害者の家族会(と支援組織『救う会』)の訪韓に当ててきた。和解すれば扱いはトップ級。横田さんらのニュースバリューを弱めるのがみえみえ」と話す。

 一方、コリア・レポート編集長の辺真一氏は、「民団との和解は、朝鮮総連にとって願ってもみないスキーム」と指摘し、北側の出方を一段と警戒する。

 「拉致問題で、日本が総連を追いつめたりすると、これからは民団が出てくる。その民団のバックには韓国政府いることになる。いままで北朝鮮がどんな脅しをかけようとも日本は動じなかったが、これからは何かとそうもいかない。日韓対北朝鮮という対立構造にクサビが打たれてしまった」

 北朝鮮への入国が制限されていた民団側の商工関係者に、入国が解除される可能性もある。辺氏はこうも指摘する。

 「人的移動により北朝鮮にお金が落ちるだけではなく、北朝鮮内でビジネスを興すなど、資本投下も加速する可能性もある。北を潤しかねない」


(朝鮮日報 2006/05/19

民団執行部に非難相次ぐ

 日本に居住している在日同胞の団体である在日本大韓民国民団(韓国民団)が、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の要求を受け、脱北者支援の活動を中断すると決定したことに対し強い反発が起きている

 民団関東地域協議会に所属する12都県の地方本部団長は、18日午後に山梨県甲府市で緊急会合を開き、民団中央本部が、事前の協議もなしに独断で朝鮮総連側の要求を受け入れたことに抗議し、今後も独自に脱北者支援活動を継続させていく意向を伝えた

 この日の会合に出席した民団中央本部の河丙牾(ハ・ビョンオク)団長は、これらの強い抗議の声に対し「今後も脱北者支援の活動を継続させる」と当初の決定を覆す発言を行うなど、最終的にはどのような方針に固まるかはいまだに未知数のようだ。また、河団長は「6・15民族統一大祝典」に際し、朝鮮総連とともに「日本地域委員会代表団」を構成しこれに参加するとしたことに対しても「民団が主体的な影響力を行使できないのであれば出席しない」と一歩退いた見解を見せた。

 大阪と名古屋などの地方本部でもこの日、緊急会合を開き「中央本部の決定に従えない」と決議したという。長野県地方本部の呉公太(オ・ゴンテ)団長は「中央本部の決定には関係なく、今後も脱北者の支援及び関連活動を行う」と宣言した。この日、東京の民団中央本部と各地方本部の事務所には 「朝鮮総連に屈服した現執行部は辞職しろ」などの抗議電話が、一日中鳴り止まなかったと関係者は伝えた。

 民団は2003年6月に脱北者支援センターを設立し、いわゆる「帰還事業(在日同胞の北送事業)」で日本から北朝鮮に渡り、1990年代後半以降に日本へ逃亡してきた脱北者を支援してきた。在日同胞の北送事業が活発化した当時、鉄道線路に横たわってこれを断固阻止しようとした民団として、脱北者支援は当然行うべきものという理由が大きく影響した。現在の支援対象は100人前後で、彼らに住居や就職などをあっせんしたり、日本に定着するための資金も一部援助してきた。

 民団中央本部の決定に対し『北朝鮮難民の救援基金』などの脱北者支援団体は、脱北者に対する支援が打ち切られたり、脱北者情報が朝鮮総連を通じて北朝鮮に流れたりすることを憂慮している。これらの団体は、脱北者に関する各種の情報を民団と共有してきた。このため、脱北者たちの間にも、今回の民団本部の決定に対して大きく動揺しているという。

 民団中央本部の河丙牾団長は、17日朝鮮総連中央本部を訪れ、徐萬述(ホ・マンスル)議長(北朝鮮最高人民委員会代議員)と和解の握手をして「5・17共同声明」を発表し、同時に脱北者支援センターを解体することで合意した

 日本のマスコミは、民団中央本部の今回の決定は本国政府の意思に沿った動きとみている。また、今年2月に新しく構成された民団指導部に「韓国民主統一連合」(1978年最高裁判所により反国家団体と規定された組織)出身者が一部含まれていることも民団変身の理由と考えている

 これに対し韓国外交部は「民団と朝鮮総連首脳部の会合について、事前に指示をしたりこれに関与したりしたことはない」と語った。東京=鄭権鉉(チョン・グォンヒョン)特派員


(朝鮮日報 2006/06/27

 石川県に住むある在日韓国人は、仕事の関係で知り合い親しくしてきた地方議会議員から、数日前突然、食事の約束をキャンセルするといわれた。理由を尋ねると、議員は「在日本朝鮮人総連合会(総連)と和解した在日韓国人とは会わないことにした」と答えた。

 横浜市は今月初め、在日本大韓民国民団(民団)関連施設に対し、固定資産税などの減免措置の取り消しを通告した。追加で課せられる税額は年間270万円に上る見込みだ。日本の当局は対北朝鮮制裁措置の一環として総連施設に対し税金の減免を取り消すなどの経済制裁措置を行っていた。しかし、民団に対しこうした制裁措置が取られるのは初めてだ。民団会館などの民団施設は町内会の会館と同様、公益性を認められ、税金の減免対象となっていた。

 民団関係者らは「先月17日、民団中央本部が総連と“歴史的な和解”を宣言して以来、懸念されてきたことが現実となった」と語る

 今年で民団創立60周年を迎える在日韓国人社会は激しい混乱の中、日本社会から孤立する危機にひんしている。民団中央本部のハ・ビョンオク団長が先月17日、総連本部を訪れ、徐万述(ソ・マンスル)総連議長(北朝鮮最高人民会議代議員)らと握手を交わした後、いわゆる民団・総連共同声明を発表してから起きたことだ。

 拉致問題が起きて以来、総連は日本社会において拉致・スパイ・麻薬といったあらゆる不法活動と関連がある、日本社会の敵と見なされてきた。こうした総連と民団が和解声明を発表すると、すぐに日本社会の一部は「総連に続き民団も日本社会の敵になろうというのか」と、露骨に拒否反応を示した。

 日本の公安当局が総連の経済活動を遮断するという理由で、民団所属の在日韓国人が経営するパチンコ店にまで取り締まりを強化、在日韓国人経営者らの危機感も募っている。パチンコ産業は、民団傘下の最大団体・在日韓国商工会議所所属の1万社のうち約70%が直・間接的に係わっている

 こうした状況で、民団の地方組織の半数以上が総連との和解撤回と糾弾を求める声明を発表した。23日には在日韓国商工会議所も執行部の責任を問うよう要求した。一部民団組職は総連との和解宣言を左翼クーデターと規定、「現執行部との一戦も辞さない」と宣言した

 民団の地方組職や傘下団体の在日韓国人たちは執行部の退陣を求め、署名活動を展開している。河団長が不信任となり退陣すれば、民団60年の歴史で初めてのことだ。“改革民団”を掲げて今年2月に就任した河団長は、総連が東京に設立した朝鮮大学校を卒業後、総連組職の活動に関与していたが、民団に転向した人物だ。また、「現在の民団執行部に旧・韓国民主回復統一促進国民会議(現・在日本韓国民主統一連合=韓国の民主化と祖国統一を目的に設立された左翼系在日韓国人団体)出身の人物が多数いるのが混乱の原因だ」と民団の要職経験者らは指摘している。東京=鄭権鉉(チョン・グォンヒョン)特派員


(朝鮮日報 2006/09/22

 「在日本大韓民国民団(民団)が在日韓国民主統一連合(韓統連・1989年最高裁判所で“反国家団体”判決)に頭を下げて朝総連と“和解”したいわゆる“5・17共同声明”は民団を根本から否定するもので、在日韓国人が日本社会で身を削りながら積み上げてきた信頼を一瞬にして崩す暴動だった」

 21日、民団臨時中央大会で鄭進(チョン・ジン)氏が任期3年の新団長に選出された。鄭団長は「少数の韓統連と共謀した河丙鈺(ハ・ビョンオク)前団長による朝総連との“和解”で招いた民団の混乱を早期に回復させる」と述べた。

 鄭団長は当選直後の記者会見で「朝総連との和解は根本的な誤り。朝総連が北朝鮮に対して人権問題を提起するなど声を高めるなら手を握ることもできるが、原則のない“ウリ民族同士”は問題だ」と述べた。

 「しかし交流の必要はあるのではないか」という日本人記者の質問に対し、鄭団長は「すでに地方では非政治的な交流が行われているが、5・17共同宣言がむしろそれを妨げた。今回の選挙期間中、朝総連系の同胞から“民団が気を引き締めてくれなければ我々もやっていけない”という激励まで受けた」と答えた。

 さらに鄭団長は「民団内の“脱北者支援センター”を再開し、日本人拉致問題の解決にも乗り出す」と付け加えた

 鄭団長は長野県出身の在日2世で、民団長野県地方本部団長、中央本部副団長などを歴任した民団の生き証人だ。