(東京新聞 2018/09/01)

 一九二三年の関東大震災から九十五年となる一日、犠牲者の慰霊法要が東京都墨田区の都慰霊堂で営まれた。小池百合子知事の追悼の辞が代読されたが大震災での朝鮮人虐殺に触れず、民間の式典にも小池氏は追悼文を送らなかった。昨年に続く判断で、市民らは「惨劇を繰り返さないと誓うのが知事の役目なのでは」と批判した。

 法要では小池氏の追悼の辞を長谷川明副知事が代読した。「災害の脅威を風化させず、東京の防災に万全を期してまいります」などと述べたが、朝鮮人虐殺には直接言及しなかった。慰霊堂横であった民間の朝鮮人犠牲者追悼式典には主催団体が追悼文の送付を訴えて署名約九千五百筆も集めたが、小池氏は断った

 送付は歴代知事が続けてきたが、小池氏は記者会見で「法要で全ての方々へ哀悼の意を表している」と説明していた。地元の山本亨墨田区長も二年続けて追悼文を送付しなかった

 民間式典の主催者の一つ、日朝協会都連の赤石英夫さん(77)は「知事の判断は虐殺の史実を否定しようとする動きに結果的にくみし、首都東京でヘイトスピーチや民族差別を助長してしまう」と残念がった。法要に参列した東京都羽村市の青山ムツ子さん(78)は「震災から九十五年、その時にどんなことが起こったのか今では知らない人が多い。負の歴史にもきちんと向き合う必要がある。知事は率先して、歴史を伝える役割があるのに」と話した。

 民間式典には村山富市、鳩山由紀夫の両元首相や朴元淳(パクウォンスン)ソウル市長らがメッセージを寄せた。村山氏は「虐殺事件の背景には朝鮮人に対する差別意識や植民地支配していた日本人のおごりがあったと思う」と深く反省する必要性を訴えた。

 慰霊堂そばでは別の団体が独自の慰霊祭を開き、「数千人虐殺も捏造(ねつぞう)だ! 日本人の名誉を守ろう」と主張する看板を掲げた。

 政府中央防災会議の報告書(二〇〇八年)は朝鮮人らの犠牲者数について、約十万五千人に上る震災死者数の「1~数%」と記述。「朝鮮人が武装蜂起し、放火するといった流言を背景に、住民の自警団や軍隊、警察の一部による殺傷事件が生じた」と指摘している。(辻渕智之、榊原智康)

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