中国提案で中止 台湾でのスポーツ大会
(東京新聞 2018/09/01)

 台湾の対日外交の窓口機関、台北駐日経済文化代表処代表で、行政院長(首相に相当)を務めたこともある謝長延氏が、東アジア・ユース大会の開催をめぐる問題について本紙に投稿を寄せた。

謝長延 台北駐日経済文化代表処代表 投稿

 夏の全国高校野球選手権大会の決勝戦は、秋田の金足(かなあし)農(金農)と大阪桐蔭の選手たちのひた向きな姿に日本全国がさわやかな感動に包まれた。(日本統治時代の)台湾も戦前の一九三一年、嘉義(かぎ)農林が甲子園で準優勝した歴史がある。略称の「嘉農」(KANO)と「金農」(KANANO)が似ていることもあり、台湾の人々も準優勝した金農に嘉農の姿を重ね合わせ親しみを込めて応援した。

 スポーツの祭典は人々に大きな感動をもたらすと同時に、競技を志す若者にとっては出場して勝利をつかむことが夢となり、目標になる。ところが、その夢が壊されるような事態が起き、私は残念でならない。

 台湾中部の台中市では来年八月、二〇二〇年の東京五輪に先駆け、東アジアオリンピック委員会(EAOC)が主催する「東アジア・ユース大会」が開かれる予定だった。競技場の建設を含め開催準備は着々と進んでいたが、七月下旬、EAOCが臨時理事会を招集し、中国からの提案で東アジア・ユース大会の中止が一方的に決められたのだ

 台湾のオリンピック委員会は、国際オリンピック委員会(IOC)が承認する機関であり、IOC憲章にのっとって運営されている。台湾は、アスリートやスポーツ団体が国際大会などに参加することを保障し、他の会員国と同じくIOCの規定を順守してきた。

 台中市と台湾のオリンピック委員会は七月三十日、開催中止を決めたEAOCに対し異議を申し立てた。しかし、EAOC側は「決定済み」として八月十三日に改めて拒否。台湾は、国際的な調停や仲裁などあらゆる手段で、今後も開催権を取り戻す決意である

 EAOCが突然、東アジア・ユース大会の中止を決定したことは、EAOCメンバーとしての台湾の権利を侵害するだけでなく、参加予定国の出場機会も奪うことになる。中国の政治的干渉で、日本を含む東アジア各国の青少年の出場機会が失われないようにするためにも、大会開催について日本をはじめ国際社会から支持と声援を得られることを強く望んでいる

〈メモ〉東アジア・ユース大会

 1993年に始まった東アジア大会がユース大会に名称を変え、14~18歳の青少年を対象に4年に1度開くスポーツの総合競技大会。日本、中国、韓国、台湾、モンゴルなど9カ国・地域が加盟する東アジアオリンピック委員会(EAOC)が2019年8月に台湾中部・台中市で第1回大会を開催することを決めていた。

 台湾は国際オリンピック委員会(IOC)関連の大会に「中華台北」の名称で出場することになっているが、20年の東京五輪に「台湾」の名称で参加するよう求める動きがあることに中国側が反発。EAOCは7月24日、北京で臨時理事会を開き、中国による「大会中止」の提案を賛成多数で承認した。台湾は反対、日本は棄権

 中台関係が良好だった14年に開催地に決まった台中市は、既に約6億7000万台湾元(約24億円)を投じ、10カ所以上の競技施設などを建設している。

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2018年07月26日

台北経済文化代表処(ウィキペディア)

台北経済文化代表処(タイペイけいざいぶんかだいひょうしょ、臺北經濟文化代表處、Taipei Economic and Cultural Representative Office, TECRO)は、台湾当局の在外代表部である。

概説

形式上は「関係協会」などを名乗る非政府組織の外国駐在事務所であるが、台湾当局の対外関係を所掌する「政府機関」である「中華民国外交部」が所管しており、通常の二国間関係でいえば「代表処」は大使館、「弁事処」は総領事館、「分処」は領事館と符合する

ただし、相手国から国家承認を得られていないため、外交関係に関するウィーン条約や領事関係に関するウィーン条約に基づく外交特権や領事特権は認められていないとみられ、国際法上非公式な代表部でしかない。

アメリカ合衆国では台湾関係法により例外的に一定の権利が認められている。また、日本では日中国交正常化前の中華人民共和国の中日備忘録貿易弁事処東京連絡処と同様に日本では固定資産税等の税金を全額免除したり、職員に対する一定の便宜を図っている