【こちら特報部】都知事の追悼文取りやめ きっかけは都議
(東京新聞 2018/09/01)

 関東大震災発生後、デマなどが原因で虐殺された朝鮮人犠牲者の追悼式が今日、東京都墨田区の公園で行われる。追悼式をめぐっては、歴代知事が追悼文を送付してきたが、小池百合子知事は昨年に続き、今年も取りやめる。きっかけは、都議会でのある都議の質問とされるが、その中身を読むと「虐殺はなかった」とする本からの引用など、問題だらけだ。都議の意向に従った形の小池知事だが、負の歴史に向き合おうとする大多数の都民の思いを踏みにじっていないか。(石井紀代美、大村歩)

◇常識外れの持論次々

 「今後は追悼の辞の発信を再考すべきと考える」。昨年三月の都議会一般質問。自民の古賀俊昭都議(七〇)=日野市選挙区=は小池知事にこう迫った。

 古賀都議はまず、都立横網町公園(墨田区)にある追悼碑に刻まれた文章を問題視。碑には「あやまった策動と流言蜚語のため六千余名にのぼる朝鮮人が尊い生命を奪われました」とあるが、古賀都議は「事実に反する一方的な政治主張」と捉え、日本人への「ヘイトスピーチであり、到底容認できない」と主張した。

 多くの朝鮮人が殺された背景には、独立を目指す朝鮮人活動家の存在があったとして「こうした世相と治安状況の中で日本人自警団が過敏になり、無関係の朝鮮人まで巻き添えになって殺害された」と述べ、デマによる大量虐殺という通説を否定した。

 犠牲者数六千人も、ノンフィクション作家による虐殺を否定する著作「関東大震災 『朝鮮人虐殺』の真実」を引いて「根拠が希薄」と訴え、「知事が歴史をゆがめる行為に加担することになりかねない」と追悼文送付の再考を求め、揚げ句に「追悼碑の撤去」までぶち上げた

 小池知事は前年の送付を「事務方が例に従って送付した」と述べ、「今後はよく目を通した上で適切に判断する」と答弁。送付は同年から取りやめ、今年も送付しない。

◇「『関東大震災で暴動』デマではない」

 古賀都議の一連の主張について、朝鮮人虐殺を検証した著作がある加藤直樹氏は真っ向から批判する

 古賀都議は、震災当時、飛び交った「朝鮮人が暴動を起こしている」「井戸に毒を入れている」などはデマではないとする。確かに、新聞には二千人の朝鮮人が隊列を組んで暴動を起こしたなどの記事が載ったが、後に政府は「デマ記事」と認定。二〇〇九年に内閣府中央防災会議の専門調査会が出した報告書には、デマが広まった経緯も詳細に記述された。

 そもそも古賀都議が引用した著作は、加藤氏らによるサイト「『朝鮮人虐殺はなかった』はなぜデタラメか」で徹底的に内容のおかしさが批判されている

 古賀都議のこうした振る舞いは、過去にもあった。〇三年、都立七生養護学校(現七生特別支援学校)で、知的障害のある子に人形を用いた性教育の授業をした教員を非難。裁判で、教育現場の自由を侵害する行為と認定され、敗訴した。今年三月にも、足立区立中学校で行われた避妊方法などを教える性教育を「行き過ぎ」とバッシングし、市民の反発を招いた。

 「こちら特報部」が古賀都議に、小池知事の送付取りやめをどう見るか、見解を尋ねると「私は歴史学者じゃない。こんな意見もあるから一度考えてみたらどうですかと言っただけで、都知事の判断だ」としつつ、「自分の発言がきっかけと判断されるのなら、それでも構わない」と述べた

 「追悼碑の撤去」を提言したことについては、「その考えは今も変わっていない」と話した。

◇虐殺否定する団体「都議は『真の侍』」

 古賀都議の動きに呼応するかのように、昨年九月一日、日朝協会東京都連合会が主催する「朝鮮人犠牲者追悼式典」のすぐそばで、朝鮮人虐殺を否定する団体による「慰霊祭」が行われた。主催したのは、「そよ風」という「日本を愛する女性の会」(同団体ホームページより)。

 このHPによると、そよ風は「もう男性達だけには任せておけない!日本を護(まも) る為(ため)に私たち女性は立ち上がります」としている。その一環が、「『日本人による朝鮮人六千人虐殺』という洗脳から目覚めた方」が参加する「真実の慰霊祭」開催だという。

 HP内のブログには、古賀氏と面会する女性たちの写真とともに「古賀俊昭議員、『真の侍』です」とする記事(一昨年六月)があるほか、昨年七月の都議選では古賀候補の街頭演説をPRする記事を連発。都議会での質問も載せ、近い関係をうかがわせる。

 そよ風は、今年もこの慰霊祭を開催するようだが、その力の入り方は、ここ数日のブログを見ても明らかだ。八月二十九日付記事のタイトルは「召集令状!日本男児たる者、9月1日、両国に出頭せよ」。女性団体なのになぜ男児なのかと読み進めると、「昨年、大勢の反日の奴(やつ)らにより激しい妨害をうけた」。「奴ら」は昨年に倍する動員をかけているため「一旦緩急アレバ義勇公二奉ジて、警護に参集を」とある。

 「こちら特報部」はHP上の電話番号から取材を試みたが、回答はなかった。

◇事実歪曲の恐れ「都の姿勢は問題」

 こうした古賀都議やそよ風側の主張に沿うかのような小池知事は、年二回、都慰霊堂で開かれる大法要に追悼文を送ることで「すべての犠牲者に哀悼の意を示している」と説明する。だが、「追悼式典」を主催する日朝協会東京都連の赤石英夫事務局長は「天災で亡くなった人と、虐殺という人為的な殺人とを『犠牲者』としてひとくくりにするのはおかしい。ごまかしだ。追悼文を出さないという姿勢は許せない」と語る。

 その上で、「そよ風側は慰霊祭と言っているが、大音量で君が代を流すなど、私たちの追悼式典を妨害するような動きであることは明らか。いざこざが起きないようにしてもらいたいが、都側の姿勢にも問題がある」と不安を隠さない。

◇負の歴史 目を向けて

 同様の追悼式典や学習会は東京、神奈川、千葉、埼玉、群馬などでも九月一~九日に行われる。虐殺された朝鮮人六人らが葬られている千葉県八千代市の観音寺では例年慰霊祭が行われてきたが、一昨年から学習会も開いている

 学習会で講演している東京成徳大の小薗崇明助教(歴史学)は「朝鮮人虐殺は都内だけで起こったのではなく、火災の激しい都心から逃げてきて、落ち着いた辺りの千葉、埼玉、神奈川各県でも起きていた。あまり知られていないそうした事実を、当時の状況をできるだけリアルに解説し、『自分でもやりかねない』という可能性を考えてもらうようにしたい」と話す

 関東大震災から九十五年がたつ中で、歴史的事実さえもしつこく「フェイクニュース」呼ばわりされれば、「歴史が歪曲(わいきょく)される恐れがある」と警鐘を鳴らすのは、明治大の山田朗教授(日本近現代史)。「薩長藩閥による明治政権は、福沢諭吉が唱えた『脱亜入欧』思想のもと、欧米列強に対抗しようと近代化を進めた一方で、日本をアジアの盟主として中国や朝鮮を下に見る価値観を人々に浸透させた。その結果としての朝鮮人虐殺であり、パニックの中での流言飛語だけで発生したわけではない」とした上で、こう語る。

 「明治百五十年にあたる今年、安倍晋三首相のように無批判に明治時代を賛美するのは非常に問題がある。明治期に朝鮮半島は植民地化され、植民地化されたがゆえに多くの朝鮮人が関東大震災当時、東京にいて、虐殺された。九月一日は明治期の負の歴史を思い返すべき日ではないか」

〈デスクメモ〉
 追悼文の送付取りやめは、碑文に刻まれた犠牲者数の問題のように報じられているが、核心は「虐殺はなかった」としたい一部の者に都政を操られていいのか、という大問題だ。加担した小池知事の罪は重い。都民の大半は、過去の過ちを反省し、未来につなげることを願っている。(典)2018・9・1

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朝鮮人の主張に疑問を呈したり否定する人は「常識外れのおかしな主張をする人達」とレッテル貼りすることが目的の記事ですね。

ところで、墨田区長も昨年は追悼文送付を取りやめましたが、今年はどうしたんですかね。

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