(朝日新聞 2018/08/26)

 中国広東省深圳で起きた溶接機械工場の労働争議をめぐり、従業員側の支援に駆けつけた学生ら50人余りが24日、地元警察に拘束された。従業員の支援団体が明らかにした。数千人の学生らが労働者への連帯を表明するという異例の動きに、当局は神経をとがらせ封じ込めに踏み切った。(深圳=益満雄一郎、北京=延与光貞)

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 労働争議が起きている工場は、溶接作業に使う機械などを製造する中国資本のメーカー。7月以降、工場の前で従業員側が抗議活動を続け、会社側との対立が深まっていた

 従業員側の支援グループによると、争議のきっかけは長時間労働や従業員への罰金制度など、不当な待遇に対する改善要求だった。従業員たちは労働組合の設立も求めたが認められず、7月下旬には抗議に加わっていた従業員が何者かから暴行を受けたうえ、約30人が警察に騒動挑発の疑いで拘束されたという。

 争議への支援をネットで呼びかけた女性で、現場に集まった支援グループのリーダー役だった沈夢雨さん(26)も8月11日、何者かに連行されて連絡がとれなくなった。そして24日朝、警察は沈さんらの呼びかけに応じて工場近くに集まっていた北京大や中国人民大、南京大の学生ら約50人を一斉に拘束したという。

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◇北京大生ら声明

 中国で労働争議は珍しくない。だが、今回は広東省の名門・中山大の大学院を卒業後、労働者の権利保護の先頭に立とうと工場労働者になった異色の経歴を持つ沈さんらの抗議が注目を集め、各地の学生が反応した。これまで北京大など全国16大学の学生らが実名でネット上に支援声明を発表。数千人が署名した。

 署名呼びかけの中心になったのは、北京大で学内のセクハラ事件の情報公開を求め一時軟禁されるなどした経験を持ち、今年卒業したばかりの女性だった。声明は「労働者階級万歳!」といった毛沢東時代を連想させるスローガンも使いながら、労働者の権利を守る活動は自分たちの未来にもつながっていると訴えた。

 呼びかけた学生の一人は取材に「毛沢東を崇拝しているわけではないが、労働者や民衆と連帯するには分かりやすいスローガンがよいと思った」と話す。

 学生の関心を集めるきっかけをつくった沈さんも連行される前、朝日新聞の取材に応じ、「支援を表明した学生には、大学で学んだ知識を自分のためではなく、社会に役立てたいという思いがある」と話した

◇異例の広がり、当局神経質に

 労働者を支援する声が学生にも広がるというこれまでになかった抗議運動の展開に、当局も手を焼いていたとみられる。

 中国当局には1989年、民主化を求める学生らの動きが広がり、最終的に軍が鎮圧した天安門事件の記憶が残っており、学生らの動きには極めて神経質だ。安易に弾圧すれば学生らをかえって刺激しかねないことも考え、9月の新学期が近づいて学生らが大学に戻り始める時期を狙って一気に運動を鎮めようとした可能性がある

 国営新華社通信は24日、「西側のNGOが支援する国外組織」から資金援助を受けた者たちが違法行為を重ね、騒動をあおったとの記事を配信。労働者や学生による正当な権利要求ではなく、「敵対勢力による陰謀」という形で事件の幕引きを図ろうとしている