【正論】新政権がアジア外交で心すべき事

(産経新聞 2006/09/15)


筑波大学大学院教授・古田博司


■中朝「反日共闘」の実相見誤るな


≪日米中“三角形”論の幻想≫


 来し方を振り返れば、冷戦時代とは日本にとっては暗愚な時代であった。社会主義による近代化が失敗するとは、誰も考えていなかった。中国が経済で失政し、大量の餓死者をだそうと、10年間も大殺戮(さつりく)の嵐が全土で吹き荒れようと、中国の建設は不断の革新の途上にあると見なされ、みなが騙(だま)されていた。



 今日では、社会主義による近代化はありえないことであり、左翼とは革新ではなく反動と同意義である。それでも、まだ事実に目をふさぐ者がいて、いつか別の社会主義がくるだろうとおのが夢想に浸りつづけている。



 そういう人々は、冷戦が終わり米ソの二元均衡が崩れ、空間枠も時間軸も全部ばらけてしまい、れた地域の本性が暴露されても、相変わらず世界が同じように発展していると思いたいらしい。



 しかし中国には、全国的な商業網もなければ、どこでも手形が使える金融システムも存在しない。荷を送っても、ちゃんと届くかどうかわからないし、取引は現金決済に決まっているのである。内実は遅れた資本主義そのものであり、中国は今、近代の入り口にようやく立っている。経済発展しているのは、外資が滞りなく入ってきているからであり、途絶えればたちまちフリーズする体のものである。



 そのようなところと、3者平等なる日米中三角形論を展開するなどということは幻想の極みといわねばならない。ハンバーガーワールドと犬肉ワールドでは、政経上の重みが違うのは今更いうまでもない。あるいはマスコミでは、中朝ではなく、中韓をセットにして日本が関係改善を図らなければならないとする。




≪自分が優位の思い上がり≫



 しかし韓国は日本植民地時代も含めれば、90年以上も資本主義をしているから、中国とは近代化のレベルが自ずと異なる。韓国は少なくとも入り口ではない。近代の真っただ中にいるのである。中国とセットにすべきは韓国ではなく、同じく独裁体制を続けている北朝鮮の方であろう。



 だが、中朝独裁政権と自由なる日本が関係改善を図らなければならないとすれば、一体どのようにすればよいのだろうか。マスコミでは小泉政権が靖国神社参拝をめぐって外交関係をこじらせてしまい、首脳会談を途絶えさせてしまったと宣伝している。そして北朝鮮に圧力を行使するために、中国との関係改善を求めたりするのである。



 しかし、この論は立論自体がおかしい。核・ミサイル問題で、中国と北朝鮮は初めから日米に対し密かな「共闘」をしているのであり、北朝鮮が中国の「忠告」で6カ国協議に戻るようなことはないし、中国は国際社会の一員のようなふりをしつつ、北朝鮮をかばうという姿勢を崩さないであろう。



 また、靖国神社参拝が外交を閉塞(へいそく)させたわけではない。伝統的な中華思想により、中朝は日本より自分たちが優れていると思いこんでいるから、自己の序列の世界に日本を押し込めたいだけである。



 ゆえに中国共産党の宣伝機関である新華社は、当初より参拝を「拝鬼」と称して侮蔑(ぶべつ)し、北の朝鮮労働党機関紙『労働新聞』は、「靖国神社に位牌(いはい)のある、東条英機をはじめとする首級戦犯たちを、自分のおじいさんのように奉っている日本極右分子たち」(8月21日付)などという訳の分からない前近代的言辞を吐きつづけている。





≪なめられず怒鳴りもせず≫



 これらの前近代ネットワークに比べれば韓国はましであるが、現在の政権が独裁的左翼集団であり、販売数で新聞社を抑圧する新聞法で言論を威嚇したり、企業の出資総額を制限する制度で、自由主義経済を圧迫したりしている。



 この国で問題なのは、民衆が圧倒的に弱いことである。内需も弱く、中小企業も育たず、民衆が日本のように地方色豊かな保守的伝統文化を担っていない。ために、国民国家形成の力も弱く、民族主義に絶えず押し流され、「反米親北」路線がこれからも継続される可能性が極めて高いといわなければならない



 次期政権は以上のような近代化のレベルを異にする「異時代国家群」と付き合わなければならない。



 小泉政権の罪といえば、これらの諸国の前近代性を白日の下にさらしてしまったということであり、次期首相は「怒鳴りつけなければ相手をなめる」という自己絶対正義の阿Qの民を怒鳴りつけることなく、なめられもせず、かれらに自由民主主義のルールを教えていかねばならない。



 次期首相はまずアジアの教育者でなければならないということである。







阿Q正伝:ウィキペディア













>次期首相はまずアジアの教育者でなければならないということである
「教育者」とはおこがましい気もしますが、アジア各国には日本が持っている良い部分を教えることはやぶさかではありませんね。

ただ「特定アジア」には教えるだけ時間の無駄だと思います。
















なぜ中韓になめられるのか

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屋山 太郎



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